先週、ノースウエスタン大学のProgram of African Studiesの60周年記念カンファレンスが催され、私も参加してきました。
このカンファレンスのEnterpreneurship and African Capital Marketsというセッションに、パネリストとして招待されたRobert Foglerさんとは、前日の夕食を一緒にする機会があり、とても興味深い話を聞くことができました。彼は、Thousand Hills Venture Fundというアフリカへの投資に特化したベンチャーキャピタルの創業者で、ファンド運営を統括する傍ら、デンバー大学の国際学部で教鞭も取っています。
以下は、私が「なるほど」と思ったポイント。
- 5年前にファンドを創設して以来、今まではルワンダに投資対象国を絞っているが、現在他のアフリカの国への拡大も検討中。注目しているのは、ザンビア、ガーナ。投資先の国を選定するにあたって重視する条件は、1) 治安がよく、2) 政府がビジネス環境の整備に熱心で、3) 小国であること。ナイジェリアのような大国では巨大資本をもっていかないとなかなか相手にしてもらえないが、比較的小さな国だとビジネス・ネットワークを築きやすいのだそうです。
- 創業時は、まずルワンダに行って、下調べを行った。その後アメリカに戻って投資家を募り、再度ルワンダに渡って投資先企業を選定した。現地の事情に通じた信頼できるパートナーを得ることが、何より大事な成功の鍵とのこと。
- 彼のファンドに出資しているアメリカの投資家は、基本的に経済的なリターンを求めているが、アフリカに投資するということに社会的な意義を感じている人も多い。ただ、彼自身は、定義が曖昧な"double bottom lines"を隠れ蓑に使うことはしたくないという主義で、投資家に納得してもらえる経済的リターンを出すことがあくまで本筋だと考えているそうです。
- 創業当初は社会投資(Social investment)というものに共感していたが、最近はどうも疑問を感じている。非効率的な企業が、曖昧模糊とした社会的リターンを護符にして、資本を安価に調達して生き残り、健全な企業を圧迫する可能性がある。
- アフリカでのビジネスチャンスに興味があるならば、アフリカにある多国籍企業のオフィスでまずは働いて、現地のビジネス環境を学ぶとともに、ネットワークを築くことを薦める。
- 中国、インド等でのサプライチェーン構築や市場開拓は、アフリカの中小企業にとって大きな関心事項となっている。
また、同セッションには、2006年のBBC World Documentary of the Yearを受賞したAfrica Open for Businessの監督のCarol Pineau氏もパネリストとして参加。ケロッグでも同日にランチセッションを開き、新作のAfrica Investment Horizonsや未完成のKenya Storiesのクリップを見せてくれました。アフリカというと災害、紛争、AIDSなどの病気、貧困という角度でしか報道されない現状に風穴をあけたいと考えたのが、このような一連の作品を手がけるようになったきっかけだそうです。
とても素晴らしい取り組みだとは思うのですが、一方で、時々垣間見える単純な「援助悪者論」的な彼女の発言には、ちょっと辟易させられました。
Enterpreneurship and African Capital Marketsのセッションは、他のセッションと異なりビジネススクールからの参加者が大半を占め、ビジネス機会を中心に議論が展開したため、アフリカ学専攻と思われる学生から「ビジネスだけでは解決できない問題も多いアフリカの状況についてどう考えるか」という質問が投げかけられました。その時も、彼女はあたかも「ビジネスこそがアフリカの問題を救うのであって、援助やノンプロフィットの活動は、問題を悪化させ、先進国の偏見を助長するだけだ」といったやや感情的な回答をしていました。
「援助の非効率性や腐敗の実例をいくつも見てきたので、自分はanti-aid(反援助)の立場だ」とのことでした。もちろんそうした非効率性や腐敗は無くしていかなくてはいけませんが、だからといって援助や非営利組織の意義を全否定して、ビジネスを全ての問題への万能薬のように扱うのは、あまりにナイーブな考え方だと私は思います。それこそ、エンロンの不正会計・不正取引やサブプライムローンの暴走に端を発する金融破綻を見て、「企業は悪者、資本主義は世界を破壊する」と言いたてて、愛だか利他主義だかが地球を救うと信じようとしている人たちと、次元は同じじゃないでしょうか。
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