2009年7月25日土曜日

ビジネスと開発

7月21日 (火) 【ケニア】

今日はミーティングが3つ。

1. Technoserve Kenya

Technoserveはビジネス支援による開発というアプローチの嚆矢といえる団体。ケニアオフィス代表のFred Oganaさんと会った。

Endeavorと似た活動を行っているという印象を持っていたが、個々の起業家を選んで集中的にコンサルティングを行うEndeavorの手法と異なり、Technoserveは国毎に開発戦略的に重要なセクターを決め、その産業の中小企業向けのワークショップを開催したり、産業団体や政府に産業育成の政策アドバイスをしたりといった活動が主。資金を直接提供することはせず、テクニカルアシスタンスのみ。

従来支援対象として重視してきた小規模企業(年商3-4億円以下)は、生存率が低く支援のコストパフォーマンスが低いため、今後はそれより少し大きめの中規模企業に焦点を移していくとのこと。

また、農業人口が8割近くを占めるケニアではこれまで農村での経済振興を主な目的として、農業、観光業、代替エネルギーなどに注力してきたが、近年の都市への急速な人口流入とスラムの肥大に鑑みて、今後は都市部での活動にも力を入れていくと語っていた。

2. AllanさんとCollinsさん

Fairview GroupのDaniel Szlapakさんのすすめで、ホテル従業員のAllanさんとCollinsさんに会い、一般のケニア市民としての立場からの話を聞いた。
  • 行政サービス、警察、交通などの社会システムが健全に機能していなくても、富裕層はコネやカネを駆使して必要なものやサービスを手に入れるし、貧困層は社会システムに依存しないで生活していく手段(ヤミ経済、非合法活動など)を見つけ出す。自分たちのような中間層は、否応なく税金を払わされ、かといってその対価となるサービスは得られない。汚職・腐敗と非効率だらけで機能していない社会システムを変えていくには、一番しわ寄せを受けている中間階級が、「これではだめだ」と声を挙げて行動していくしかいない

  • K-Rep BankやEquity Bankのようなマイクロファイナンスに重点を置く新しいタイプの銀行のおかげで、地方の低所得層も金融サービスが受けられるようになり、生活改善に目に見えた成果を発揮している。しかし、グループ単位の貸付を主とするマイクロファイナンスでは、個人の多様なプランやニーズに対応するのが困難であり、またコミュニティ内で信用の蓄積が少ない若年層はその恩恵を受け辛くなっている

こうした普通の人の普通の話を通訳抜きで聞けるのは、都市部だけでなく地方に行っても英語を堪能に話す人が多いケニアのいいところ。レストランやバスで隣に座った人や、タクシーの運転手さんからも色んな情報を得ることができる。

3. Judith Muturiさん

Judith Muturiさんと夕食。彼女は、大学生の時アメリカに渡り、卒業し投資銀行に勤めた後、WhartonでMBAを取得し、昨年末ケニアに帰国。今はプライベートイクイティ・ファームの中でも新興経済への投資に特化しているAureos Capitalのケニアオフィスで、アフリカのヘルスケア・セクターの企業に投資するHeath in Africa Fund の運用チームに参画している。

このHealth in Africa Fundは、資本を世銀グループのIFCアフリカ開発銀行などから調達している。Acumen Fundの出資者は(少なくともこれまでは)経済的リターンを求めない慈善資金だったのに対し、こちらのファンドの運用には、開発への効果と経済的リターンの両方がシビアに求められる。

「インパクト・インベストメント」という、寄付でもなく、利潤追求を至上目的とする投資でもない、社会的価値創出のための投資へのムーブメントの最先端を切り開く仕事で、何ともエキサイティング。

いたく関心をそそられ、アフリカでのPEやVCの現況について色々と話を聞いた。特にベンチャーキャピタルや中小企業(SME)投資に特化したファームに興味が湧いてきた。

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2009年7月24日金曜日

本当にできる…かも??

7月20日 (月) 【ケニア】

ミーティングが、朝から夜まで4つも入って、忙しい一日だった。その分収穫も大きく、なにやらぼんやりとだが、手がかりやヒントが見えてき始めた気がする。

1. Amaan Khalfanさん

まず、朝一番のミーティングは、Amaseena Consultingという自前のコンサル会社を経営するAmaan Khalfanさんと。

インド系ケニア人の彼は、チェンジマネジメント系のコンサルとしてアメリカで数年経験を積んだ後、帰国。赤字が続いていたHoney Care AfricaというソーシャルビジネスにCEOとして参画し、黒字化に成功する。その後Amaseenaを創業し、実行まで深く関るコンサルティングを行っている。クライアントは、ソーシャルビジネスを中心に、NPOや一般の営利企業まで幅広い。

話し始めるとすぐに意気投合。私の思い描いている社会投資ファンドについてもすっかり乗り気で、ケニアではじめるべきだと強く勧めてくれた。具体的にどうすればできそうか話し合っている内に、こっちもなんだか本当に実現できそうな気がしてきた。

思いがけず早くも、心強い味方に出会えたのかもしれない。彼の持つネットワークと目利きの能力は、投資先として有望なソーシャルビジネスを探す際に、とても貴重。また、現地のビジネス環境を理解したうえで経営アドバイスを行い、投資先の企業のポテンシャルを引き出すためにも、彼の経験とスキルは有用だ。

2. Enterprise Professional Service Program

左がHildaさん、右がMatthewさん

次に訪れたEnterprise Professional Service Program (EPS)では、Project AssistantのHilda IreriさんとMatthew Abongoが、丁寧にプログラムの説明をしてくれた。

彼らの"Banking on Oil”というプログラムは秀逸。

路上自動車整備工の「オフィス」

  • 街を走る車のほとんどが中古車というナイロビでは、貧困層が大きな資本がなくてもできるビジネスの一つとして、路上で営業するヤミ自動車整備工がある
  • しっかりした設備がない彼らは、これまでオイル交換の際に回収した古いオイルを川や路上に捨てていて、環境汚染の元になっていた
  • EPSが路上自動車整備工から古いオイルを回収し、その対価として現金(ドラム缶一缶で2000ケニアシリング=約2500円)を支払うか、またはローン(ドラム缶一缶で6000ケニアシリングの借り出し権、利率は月1.5%)を提供
  • EPSは回収した古いオイルをフィルターにかけ、燃料として工場などを操業する企業に売る(ドラム缶一缶で3500~4000ケニアシリング)
  • 品質保全と処理費低減のため、自動車整備工はあらかじめオイルの回収方法や保管方法についてEPSからトレーニングを受ける

Mukuru地域(ナイロビで二番目に人口の多いスラム)にある回収した廃油の倉庫を見せてもらった

話を聞いた限り、うまくやれば十分採算がとれる事業にできる可能性はありそうだし、スケーラビリティもありそう。聞けば、供給・需要ともにまだまだポテンシャルはあるが、資本調達が事業拡大のボトルネックになっているとのこと。1000万円~5000万円規模の事業拡大資金需要は、寄付・助成金、マイクロファイナンス、銀行、ベンチャーキャピタルなどの既存のプレーヤーがなかなかカバーできていないところで、調達が難しいそうだ。

3. KenCall

Fairview GroupのDaniel Szlapakさんの紹介で、コールセンター業務などのアウトソーシングで注目を集めるKenCallのCOOのEric Nesbittさんと会えることになっていたが、急用とのことでドタキャン。代わりに広報担当の人と会った。

  • 2009年予想収益10億円
  • 安価で、英語が話せて、能力の高いケニアの人材を活用して、例えばインドよりも20-30%安い料金でコールセンター業務のアウトソーシングサービスを提供できる
  • クライアントは国内企業と海外企業が半々
  • コールセンターだけでなく、バックオフィス業務全般を受注できる体制を整えている
  • 今年中にもルワンダへの進出を予定
  • 2011年を目処にロンドンまたはナイロビでのIPOを準備中

ただ、資金需要などについて、少し突っ込んだ質問をすると「自分ではわからない」という返答で、あまり成果は大きくなかった。

4. People To People Tourism

People To People Tourism代表のPeter Wahomeさんと夕食。彼は根っからのcommunity organizerで、草の根アプローチにこだわって色々なプログラムを立ち上げてきた。社会投資ファンドの話をすると、農村の貧困層のために始めたヒマワリ栽培プログラムについて説明してくれた。ヒマワリ油を製造する企業に売って、農民の副収入源にする。

従来のように寄付や援助に頼るのではなく、低利息ローンで資本調達を行うという考え方についても、プラグラム参加者の自立意識を促し、貧困から脱却するための次のステップになるとして、とても肯定的な反応。

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2009年7月21日火曜日

マサイマラ国立公園

7月18-19日 (土・日) 【ケニア】

サファリは昨年タンザニアで堪能したので、「今回は行かないでいいや」って思っていたけど、「100万頭のヌーが大移動する圧巻のスペクタルを見るには、今が最高の時期!絶対一生の思い出になる!!」っていう言葉にまんまとのせられて、週末を使ってマサイマラ国立公園へ。

きりんさんがすきです

でもぞうさんのほうがもーっとすきです

しかし、現地についてから、1泊2日では最大のハイライトであるヌーのマラ川渡河は見られないことが判明し、がっかり。おいおい、そりゃないよー。

ライオンのあくび

頭の中でイメージを膨らませていたプラネット・アースで見たようなヌーの大群には、結局お目にかかれず。なんだか、ツアー会社に騙された気分。

早朝、牛の放牧に「出勤」するマサイの青年

マサイの少年が学校の宿題の問題用紙を見せてくれた



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2009年7月20日月曜日

アキュメンファンド

7月17日 (金) 午後 【ケニア】

アフリカを援助や慈善の対象としてではなく、ともにビジネスをするパートナーとして捉えなおす動きについては、このブログでもこれまで何度か紹介してきた(例えば、『山師がアフリカを救う?』、『Africa Open for Business』)。この潮流がどれだけ本物なのかを、自分の目で見て肌で感じて見極めたいというのが、今回アフリカを訪れることにしたそもそもの動機だ。(因みに、アメリカで購入してこちらにも持ってきて読んでいる『Africa Rising』という本の訳書が、『アフリカ 動きだす9億人市場』という邦題で英治出版から近日発売されるので、興味のある方は是非読んでみてください。)

しかし、単にアフリカの国を周って各国のビジネス事情を概観するだけでは、どうも問題意識が散漫になってしまいそうなので、自分は具体的にどうやって関れるのだろうかと考えてみた。その結果、現在の仮説としては、Robert FoglerさんのThousand Hills Venture Fundみたいに、アフリカの新興経済への投資の機会を日本の投資家に提供するファンド、それも社会的波及効果の高いベンチャーに絞って投資するファンドができないかと考えていて、その下調べという位置づけで、色々な人の話を聞いていくことにした。

今のところ全くの空想に過ぎないのだけれども、資本調達についてはMicroPlaceのモデル、そして投資のアプローチはAcumen Fundのやり方が、既存の例の中では頭に思い描いているイメージに最も近い。うまく育てれば、これを中核にして、以前から考えている本格的な社会資本市場のプロトタイプをつくることも可能ではないか。

そのAcumenの東アフリカ事務所がナイロビにあるので、Portfolio AssociateのAmon Andersonさんに会い、投資プロセスやビジネスモデルについて詳しく話を聞いた。(英語ですが、その時のメモはこちら。)

個人的には、特に興味深かったのが以下の4点。
  1. 資本調達: これまでは、財団や富裕層の個人による寄付(一口US$10万から)を財源としてきたが、経済的リターンを伴う営利資本の導入を開始している。今後は、小口の投資・寄付も狙うことを検討中。 
  2. バリューアップ: Acumenは、途上国のソーシャルビジネスの投資案件を選別する際に、ベンチャーキャピタルの手法を本格的に持ち込んで、ビジネスポテンシャルを厳格に審査する選球眼において、既存のプレーヤーと一線を画し、ここまで評価されてきた。それに比べて、ベンチャーキャピタルのビジネスモデルにおいてもう一つの重要な付加価値の源泉となる、投資先企業の価値最大化のための経営支援においては、実力(人材、ノウハウ)が十分に育っておらず、喫緊の課題として認識されている。
  3. 投資家へのフィードバック: Google.orgやSalesforce.comとの協力により、効果測定の指標開発とそれを管理するアプリケーションを開発してきたが、そうした情報を投資家に効果的にフィードバックし、さらなる寄付や投資につなげる仕組みについてはまだ手付かずになっている。
  4. フランチャイズ: 今後の国際展開の一つの方策として、フランチャイズモデルを検討中。
Amonさんも私の取り組みに強い関心を示してくれ、様々な強みを持ち、お互いに刺激を与え合い、また補完できるプレーヤーが現れることにより、この「社会投資」というインダストリーを育てていかなくてはならないという認識において、意見が一致した。

2009年7月18日土曜日

光ファイバーと東アフリカ経済圏

7月17日 (金) 午前 【ケニア】

ビジネススクールのネットワークというものはありがたいもので、今回のアフリカ旅行でも、行く先々でケロッグの友人から紹介してもらった知り合いや、現地で活躍している卒業生に会って、各国の社会事情や経済環境、ビジネス機会について話を聞くことができることになっている。

今日会ったDaniel Szlapakさんは、2000年度の卒業生で、祖父の代からナイロビでホテル業を営むFairview GroupのDirector。

外国人投資家が今注目すべきケニアにおけるビジネスチャンスとして、以下の5つを挙げてくれた。
  1. ナイロビで中間価格帯を狙ったホテル: 東アフリカ地域の中心都市であるナイロビは常にホテル需要が高いが、今のところ高価格帯(4-5つ星)と低価格帯(1-2つ星)のオプションしかなく、中価格帯の顧客ニーズを満たすホテルがほとんど無い
  2. ISPの国際展開: これまで国内では光ファイバーの敷設が進んでいたが、肝心の海外のインターネットに接続する回線が衛星に頼ってきた。このため、ケニアだけでなくケニアを経由してインターネットにつながる東アフリカ各国でも、インターネットサービスは低速で高額のまま。この状況が、つい先日開通した光ファイバーの海底ケーブルにより一変する。特に、ISPは規模の経済を追求しやすいビジネスなのに、これまで国境をまたぐプレーヤーがいなかったが、今後は域内の淘汰・統合が進む
  3. コールセンター: 流暢に英語を話す人口が多いケニアでは、光ファイバーによる通信コストの低下に伴い、インドのようなコールセンター業務を海外から受注するビジネスが競争力を増すと見られている
  4. 太陽光発電: 電気の通っていない地方はもちろん、都市部でも電力供給は不安定で、経済発展の障害となっている。日照の豊富なケニアなのに、太陽光発電に本格的に取り組んでいる会社がまだ出てきていない
  5. 野菜および果実の栽培: コーヒー、茶、花卉の輸出が盛んだが、どれも近年国際競争が激化し、コモディティ化と価格低下に悩んでいる。一方野菜や果実は多く輸入に依存しており、国内価格は高い。これらを国内で生産すれば、国内および域内マーケットのニーズを充たすことができる上、コーヒーなどの既存のルートを使って輸出も可能。ビジネスとしての農業が現在抱える一番の問題は、零細農家が質・量ともに安定した供給をできないこと

ケニア、タンザニア、ウガンダ、ルワンダ、ブルンジの五ヶ国で構成する東アフリカ共同体が2015年を目標に共通通貨を導入するため準備を進めているなど、東アフリカ地域の経済統合の機運は高まっている。しかし、ほとんどの業界で実際には国際展開が進んでいない理由として、ビジネスマンの視点から、①各国でバラバラの規制、②労働文化の違い、③人材不足を挙げていた。特に人材不足の問題は深刻なようで、企業のためのトレーニング業務のアウトソースというのも需要が高そう。

2009年7月17日金曜日

ケニアに到着

7月16日 (木) 【ケニア】

早朝ナイロビ到着。飛行機の中では、隣のでっかいおばちゃんの肘攻撃とイビキであまり眠れなかったので、ホテルに着いて一休み。

今日は特に予定が入っていない。午後遅くになって、おもむろに出かけることにし、市内を歩く。ほぼ赤道直下なのに、標高1600メートルと高地にあるため、思っていたより暑くない。ジャケットやセーターを着ている人も多く、同じアフリカの大都市でもダルエスサラームとは趣が随分違う。 南国のやや気だるい雰囲気が漂うダルエスサラームに比べ、人も車も多く活気を感じる。

日本で会った友人のIさんが、JICAも訪れてみてはとアドバイスしてくれたのを思い出し、散歩がてらJICAのナイロビオフィスに行ってみる。アポなしにもかかわらず、Hさんという所員の方が、丁寧に対応してくれ、ケニアでのJICAの活動の説明を受ける。

ここのところ構想を練っている、アフリカのソーシャルビジネスを応援する社会投資ファンドのアイデアを話したところ、「発電や電力の卸売り・小売などは社会的ニーズも高く、面白い投資対象があるかもしれない」とのヒントをいただいた。そういえばブラジルで見たIDEAASのモデルは、色んな国でも応用できそうだ。

また、海外青年協力隊の方が、帰国後就職先を探すのが難しいと聞いていたので、思いつきで、「現地に残ってソーシャルビジネスを起こしたいという協力隊員に初期資本を貸しだす仕組みをつくれば、ニーズはありそうか」と尋ねてみた。しかし、概して協力隊員やJICAはまだ政府間ベースでの無償援助という枠組みに縛られていて、ソーシャルビジネスを支援したり起業したりということに関心が高い人は極めてまれとのこと。