バックパックを背負って安宿に泊まり、時にはヒッチハイク、時には長距離バスで移動しながら、訪れる先で70以上の企業や政府および非営利組織を訪れてインタビューをし、投資家や実業家、官僚、学者、社会起業家など100人以上の方々にお会いして話を伺うという貴重な経験ができ、実に多くの学びがありました。
で、先月中旬からはウガンダのベンチャーキャピタルで仕事を始め、(それなりに)安定したネット環境に復帰したはずなのに、すっかりこちらのブログが放置状態になっていました。仕事があるという言い訳もありますが、本当は何よりの元凶はTwitter。短い文章で気軽に書けて、すぐ反応があるのが楽しくて、ついついブログの方は後回しに。
ちゃんと整理して書き記しておきたいことは山ほど溜まっているのですが、まずは構えてしまわず、兎にも角にもまた書き始めることが必要だな、と思い、今回はTwitterで見かけたニュースをネタに軽く一本。
ソマリアで「海賊に投資し身代金報酬の分配を受ける」投資市場がオープンという、一瞬目を疑ってしまうようなニュース。どこまで信じていいのかちょっと分からないものの、英語の元ネタはロイターで、全くのデマではなさそう。
この記事に寄せられたコメントには面白がっているだけのものもありますが、大体は「野蛮」だとか「時代錯誤」といった批判的な声。ただ、ちょっと待って欲しい。
もちろん海賊行為は違法行為です。それを正当化するつもりは毛頭ありませんが、これが本当だとすると、とても興味深い話です。
英語の元記事の方には、海賊が手榴弾を購入する資金を投資して、身代金の分配として75000ドルを受け取った寡婦の話が出てきます。手榴弾がいくらだったのか分かりませんが、彼女のようなこの地域の住民にとって、このお金はまさに虎の子だったはず。貧しい(と思われる)彼女がそれを投資するには、何よりこの投資市場に対する信頼があったということを示しています。つまり、投資した海賊がうまく身代金をせしめたら、インチキなしに約束どおり分配をしてくれるという信頼です。
この信頼関係が海賊(またはその投資市場)と地域住民の間に存在するということは、実はすごいことだと思います。預金サービスを始めたマイクロファイナンス機関が、多くの地域で苦労するのがこの信頼の問題です。貧困層の住民に、お金を預けたらちゃんと後で返ってくるということを、理解してもらうのには地道な営業活動と実績の蓄積が必要なのです。
ソマリアの海賊について、日本の大手メディアではあまりその背景について説明されていないため、何だか単にアフリカ人が前時代的な野蛮行為を働いているくらいの認識をされている方が多い気がします。詳しい話はこちらのTime誌の記事などを見ていただくとして、簡単に言うと、
内戦による国家体制崩壊
↓
領地・領海の統治・警察能力喪失
↓
ソマリア領海での(日本や韓国を含む)外国漁船による不法操業の跋扈
↓
漁場が荒らされ、元々伝統的漁業で生計を立てていた地域住民の失業、貧困化
という背景があり、海賊行為は(少なくとも当初は)、不法な外国漁船に対する自衛手段であり、生計を失った地域住民の窮余の策であったという見方もできるのです。
そのため、海外のメディアでは時にソマリアの海賊をロビンフッドのような義賊に見立て擁護するような声もあります。
こうした論調に安易に与するつもりはありません。ただ、一部の先進国では武器産業が発達し、傭兵が企業活動として行われる一方で、少しでも生活を良くしたいという願いから、海賊に投資して利益を得るソマリア人を、単純に「野蛮」だと切り捨てたところで何も解決しないのではないでしょうか。
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