2009年5月18日月曜日

そもそも社会起業って何? - その1

先日私の友人で、KAIENのCEOのSさんのところに一通のメールが来ました。その中に、KAIENの事業に関する色々なありがたいご意見とともに、「KAIENのやろうとしていることは、社会貢献企業であり、社会起業ではないのではないか」という問いかけがあったそうです。

最初に断っておきますが、Sさん自身は、特に社会起業家と呼ばれたいとは思っていません。Sさんにとって何より大事なのは、「自閉症を抱える一人息子が将来成人する頃に、彼のような人たちに公正な参加の機会が開かれている社会をつくりたい」というミッションです。そんな遠大なミッションを夢で終わらせず、具体的にどうすれば実現できるのか、と考え抜いた末に、その手段として起業という道を選んだに過ぎず、それが「社会」起業と呼ばれるかどうかなんてことにはあまり興味がありません。

Sさんを始めKAIENに関わる私たちは、「自閉症を持つ人は、社会的なスキルなどの弱点はあるけれど、それを補って余りある人並み優れた才能を持つ人たちがたくさんいる。彼らの弱点をサポートし、強みを活かすコツさえ企業側がつかめば、保護すべき弱者ではなく貴重な人材として、ビジネスに貢献してもらうことができる」ということを、がちがちの資本主義の論理で動くビジネスの本流にいる人たちに理解してもらうため、私たちが身をもって証明してみせることこそが、ミッションを達成するための一番の近道だと考えています。ですから、もしも「社会起業家」というまだふわふわしたレッテルで呼ばれることが、かえってビジネスの本流にいる人たちに真剣に受け取ってもらえない理由になり、KAIENのミッション達成の障害になるとしたら、Sさんは社会起業家なんて呼ばれたくないとさえ思っているはずです。

以前マザーハウスの山口絵里子さんとちょっとメールのやり取りをする機会があった時も、「私自身は自分を社会起業家だと全く思って」いないと書かれていました。彼女の場合、Sさんとはちょっと違った理由からですが、どちらにしろ、お二人ともミッションを達成することに無我夢中で、周りの人が自分のことを何と呼ぶかにはあまり頓着しないのでしょう。

ただ、それにしても、「社会起業」って、「社会起業家」って、何なんでしょうか?なんでSさんにメールをくれた方は「KAIENは社会起業ではない」と言われたのでしょうか?

と、そんなきっかけがあって、少しこのあたりについて私の考えていることを整理して書いてみようと思い立ちました。

では、ここで、ちょっと変な問題を。

次の4つの文章の中から正しいものを一つ選んでください
A. 社会起業をする人が社会起業家である
B. 社会起業家がやることが社会起業である
C. AとBの両方正しい
D. AとBの両方間違っている

どう思いますか?

7 件のコメント:

  1. あまがえる2009年5月18日 16:16

    選べませんでした。

    Aだけ正しいのでは?

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  2. 自分もAだと思います。

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  3. KAIENの理念をはじめて知りましたが、とても共感できるところが多いです。
    ガチガチの資本主義の一元的な価値基準の中に風穴を開けることはなかなか大変な作業かもしれませんが、長期的なビジョンで発達特性者の未来を切り開こうとしてる姿勢をお見受けしました。
    考えさせられます。

    質問の答ですが、「E,正しいものはない」を追加してはダメでしょうかw。
    A-Dは何かの尺度があってこその正解であって、真理を見いだすことはできないように思いました。
    記事にある方達のように、概念の束縛などを受けない行動の中にこそ本質的な革新性が見いだせるのかな、と、生意気なようですがそう思いました。

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  4. この項目と適合するかは分かりませんが、
    個人的には、
    「利益よりも優先する何かがある」のを前提として、
    「自らを社会起業家と呼ぶ」
    or「人がそれを社会起業と呼ぶ」
    かつ「社会企業、という言葉が生まれた以降もしくはその周辺の時代に設立された事業」の場合、社会起業、ということになると思います。

    例えば、接骨とか整体は「行き場のない柔道やってた奴らの就職先を作る為に出来た」という話を接骨の人から聴きました。これだって所謂社会起業とも言えるのではないでしょうか。

    セラピストも占い師も八百屋さんも社会起業家と言いえると思います。

    それでも呼ばないのは、上記の条件に適合していないからだと思います。

    ちなみに、アメリカだかどこかの社会起業家研究家(名前忘れてしまいましたが、東工大の国際的社会起業家養成フォーラムhttp://www.soc.titech.ac.jp/~soc-entre/のイベントで招かれてた女性の方です)が言っていたのは、「社会起業家の定義を論ずるより、彼らの共通して持つ特性に注目する方が価値がある」と
    言ってました。

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  5. 先日某誌で「社会企業特集」が組まれていましたが、そこに掲載された企業のうち、年商が1億を超えている会社は僅か2社。利益が出ている「社会企業」は・・・・さて、どれだけあるんでしょうね。
    売上・利益を実現するビジネスモデルがないような、つまりGoing concernではないような事業体が「社会企業」だと持て囃されている日本の状況はどうなんだろうと思います。 
    もちろん売上や利益が全てではないですが、曲がりなりにも「企業」を名乗るなら必要条件ではありますよね。。。 
    定義がどうであれ、このままだと「社会企業」は日本ではただの一過性のブームで終わるだろうな、と個人的に思います。

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  6. > あまがえるさん、sick_drunkerさん、scopioさん、金のスナさん

    一緒に考えていただいて有難うございます!その2で私なりの答えを説明させていただいていますので、ご笑覧ください。


    > tonyさん

    「社会起業家の定義を論ずるより、彼らの共通して持つ特性に注目する方が価値がある」という点はその通りですね。でも、最初から定義をすることを放棄してしまっては、その言葉=概念自体がどんどん空虚なものになってしまいます。境界線をはっきりくっきり引くことに躍起になるのではなく、「共通する特性」を明らかにすることから意味のある定義が生まれてくるのだと私は考えています。


    > s.shunさん

    社会起業と社会企業は別物と私は認識していますので、これについてはブログ本文の方で書いていきます。社会企業の方については、s.shunさんのおっしゃることに全く同感します。

    でも、私は「ただの一過性のブームで終わるだろうな」ではなく、「ただの一過性のブームで終わらせてはならない」と考えていますから、そのために何をしなくてはならないのかを見据えて行動していきたいと思います。今はまだふわふわした綿毛に見えるこの現象の中には、社会問題解決へのアプローチとして真に価値がある核心が埋まっていると信じているので。

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