2009年4月7日火曜日

ビジネスウィーク誌が選ぶ『アメリカの最も有望な社会起業家』

米ビジネスウィーク誌が選ぶ『アメリカの最も有望な社会起業家 (America's Most Promising Social Entrepreneurs)』25組が発表されました。

友人のSara OlsenさんとBrett Galimidiさん(Social Venture Technology Group)が選ばれたと聞き、チェックしてみたところ、Microfinance International Corp.のCEOにして日本人初のアショカグローバルフェローの枋迫篤昌氏も入選していました。

今回発表された25組から、4月26日までの一般投票でトップ5組が選ばれるそうなので、是非応援しましょう!

2009年4月3日金曜日

ミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事のオーラ

昨年の米大統領選では、私もご多分にもれずオバマ氏を応援していましたが、同時に予備選の段階で個人的な理由により密かに注目していたのが、ミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事です。

英エコノミスト誌をして"a scarily perfect presidential candidate (恐ろしいほど完璧な大統領候補)"とさえ言わしめた彼は、
  • キリスト教徒から異端とみなされるモルモン教徒である
  • 党内では穏健派とみなされている(予備選では不利)
  • 全国的知名度が他候補(マケイン、ジュリアーニ)に比べて劣る
という3つの大きなハンディキャップを抱えていたにも拘らず、昨年の共和党指名候補争いで大健闘しました。結局マケインに敗れたものの、すでに次の大統領選の有力候補としても注目されています。

ベイン・アンド・カンパニーの元CEOにして、ベイン・キャピタルの共同創業者でもある彼の経済・財政政策の手腕は高く評価されており、今の経済危機がもう少し早めに火がついていたら、あるいはダークホースのハッカビーが予備選序盤であれだけ躍進していなかったら、オバマはともかく、マケインには勝てた可能性が十分にあったのではないかと思います。

そんな彼から、つい数週間前に、「ビジネススクールの学生と、現在の経済危機について話をしたい。大人数相手の一方的な講演ではなく、少数の学生と膝をつめて率直な意見交換をしたいのだが」というリクエストがケロッグに来ました。希望者の中から書類選考で選ばれた25名の学生のグループの中に、運良く私も入ることができ、一昨日彼とのラウンドテーブル・ディスカッションに参加しました。

一応オフレコのミーティングということになっているので、話した内容はあまり詳しく書けませんが、経済危機への対策に関する話を中心にしつつも、時に冗談や裏話などを交えながら、終始楽しく和やかな雰囲気の中、議論がはずみました。

彼に会って考えたのは、「人間の器」というもの。ちょっと失礼な話ですが、随行していた(普段はそれなりに立派に見える)我が校の教授も、彼の隣に座ったとたんに、相対的に貧相で卑小に見えてしまいました。

あの違いは何なんでしょう。実績に裏付けられた自信とか、知性とか、ましてや単純にルックスの良さとか、そういったことだけでは到底説明できそうにない。

「オーラからして違う」というのはこういうことかと、実感。良い刺激を一杯受けました。

メディアでは、しばしば彼は「やり手だが、面白みのない堅物の優等生」というイメージで描かれることが多いように見受けられますが、実際に会ってみて、とても知的で説得力があるだけでなく、強いカリスマ性と誠実さ・人間的魅力も兼ね備えている人物だという印象を新たにしました。

いつか彼のような、柔らかく、澄んでいながらも力強いオーラを発する人間になりたいものです。

2009年3月28日土曜日

ブラジルより - その4

Lua Novaの創始者、Raquel Barrosさん

イースターエッグ作りに勤しむ製菓事業チーム

人形製作事業チームの作業風景

  • 3月25日(水): 午前中Ashokaを訪問し、ブラジルでFull Economic Citizenshipイニシアチブを統括するAlan Delcourtさんと、今後の提携の可能性について話し合う。 午後は、Raymundo Magliano Filhoさん(元BOVESPA会長、現BM&F BOVESPA Institute会長)と会い、私達のプロジェクトの概要と現在での仮説を説明する。
  • 3月26日(木): ①World Business AcademyのSimone Ramounoulouさんとインタビュー。②NESsTのJeniffer Iversonさんと再会し、情報交換&提携体制を協議。③Luiz Maiaさん(元ABN AMROブラジルの会長で、現プライベートイクイティファームのCEO)と、Luiz Roberto Caladoさん(ブラジルの投資銀行の業界団体であるAssociação Nacional dos Bancos de Investimentoのマネージャー)と会い、SSE 2.0のコンセプトについてプレゼンを行い、意見交換。
  • 3月27日(金): サンパウロから車で1時間半ほど西に位置するSorocabaという町へ。行き場を失ったシングルマザーにシェルター(宿泊所)を提供し、自立のためのグループ起業支援を行っているLua Novaという団体を訪問。創始者のRaquel da Silva Barrosさんとのインタビューの後、シェルターや様々な起業グループの現場を見学。
  • 3月28日(土): 充実しまくりの春休みも終わり。 今日夕方の飛行機でサンパウロを発ち、明日朝にはシカゴに戻る。来週月曜からMBA留学最後の学期の授業が始まる。

シカゴに戻ってから、SSE2.0の制度の草案を設計・提案します。その1で書いたとおり、現在BM&F BOVESPA本体の状況が流動的なため、ちょっと見通しが立て辛いのですが、Celsoさんとの話では、今夏またブラジルを訪れSSE2.0の実行準備を手伝って欲しいと打診されています。

2009年3月25日水曜日

ブラジルより - その3

ブラジル滞在もあっという間に2週目に突入。残り日数が少なくなってきました。
  • 3月22日(日): 翌日のディスカッションに備えて、資料作成に深夜過ぎまで精を出す。
  • 3月23日(月): 朝から、Celsoさんと、BM&F BOVESPA Institute(BM&F BOVESPAのCSR活動を担当する組織)のスタッフ、それにドイツから訪れているMichel Alouiさん(新興市場で成功をおさめた元ベンチャー経営者で、現在は自ら創設したBrandStiftungという財団のCEO)とミーティング。これまで得られた知見を共有し、そこから考えられる仮説について話し合う。午後は、①Nelson Spinelliさん(元BOVESPAの副会長。現在はBM&F BOVESPA Instituteの副会長であり、独立系大手証券会社のCEO)と、②Fernando Rossettiさん(Group of Inistituites, Foundations and Enterprisesの事務総長)とインタビュー。
  • 3月24日(火): 朝サンパウロを発ち、車で3時間ほど北東に位置するCunhaという町に向かう。環境保全、有機農法の指導、それに有機作物の販売支援を行っているSerra Acimaを訪れ、CEOのMarcelo Michelsohnさんと、財源確保の問題や今後の戦略について話し合う。実際の指導現場にも足を運び、農民の方々から、なぜ有機農法に関心を持ったのか、有機農法に転換するにあたってどのような懸念や困難があるのかなど、聞き取りをする。

Cunhaの農家にて

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一月上旬にCelsoさんと、SSE2.0(寄付プラットフォームであるBVS&Aを第一世代として、より本格的に市場メカニズムを活用した第二世代のSocial Stock Exchange)の構想について初めて話し合った時は、周囲で色んな人が、「あれも考慮しなくてはならない」、「これも検討しなくてはならない」、とレベル感の異なるバラバラなことを言っていて、何が核心の問題で、具体的にどこからどうやって手をつけてよいのか分からず、五里霧中の状態にいるように見えました。

そこで私たちは、①ユヌス氏がああ言っているとか、GEXSIはこう言っているとかは、一旦置いておいて、ブラジルの現状に合致したメカニズムは何かをゼロベースで考える(例えば、株式市場が本当に最適解なのかという根本的なところから検証の範囲に含める)ことと、②提供する側の理屈ではなく、ユーザー側(この場合は、ソーシャルビジネスと出資者)の視点で設計を行うことを提案し、そのために、以下のようなプロセスでプロジェクトを進めることにしました。

  1. 基本方針の明示化と確認: 今までに無い金融の仕組みをつくろうというのですから、制度設計において考慮しなくてはならないこと(変数)は山ほどあります。ですからまずは、動かない軸足をどこに置くかを決める必要があります。私たちは最初の数回のディスカッションやQ&Aを通して、彼らが何を目的としてこのSSE2.0をつくろうとしているのか、基本理念や方針、最低限これは満たさなくてならないという条件、など暗黙の了解となっていたものをあぶり出して言語化し、話し合いの上で再確認・共有するという作業を行いました。
  2. 設計変数の洗い出しと優先順位付け: 次に行ったのは、制度設計の肝となる変数は何かを考えて、タスクの全体像を把握し、それに優先順位をつけることでした。リターンやリスクと言った金融商品設計の根幹の話から、管理・監督体制といった話まで、一緒くたにして扱っていては、いつまでたっても話が進んで行きません。ですから、一番最初にどこまで考えるのか、その次にはどのイシューに答えを出して、後回しにして良いのは何かを明確にしました。その上で、重要な設計変数について、それぞれふり幅はどのくらいで、その間にどのようなオプションがあり得るのかを整理しました。
  3. ソーシャルビジネス側と出資者側の双方のニーズの把握と制約条件の理解: ブラジルのソーシャルビジネスと潜在的出資者を対象に、実際に彼らがそれぞれどの設計変数を重要だと考え、どのオプションを選好するのかを理解するため、簡易コンジョイント分析を含めたオンラインアンケートを実施しました。さらに、今回こうしてブラジルに来て、多様なステークホルダーとのインタビューを通して、オンライン調査から得られた情報への肉付けと、ブラジルのビジネス環境、金融事情、非営利組織およびソーシャルビジネスを取り巻く文化と制度といった背景の理解に努めているというわけです。
  4. 制度案の提示: 今週土曜日にシカゴに戻ってからは、今回のフィールドトリップで得られた知見を整理するとともに、オンラインアンケートの分析結果と照らし合わせ、それを基に、ソーシャルビジネスと出資者双方のニーズをより良く満たすことができる制度の草案を設計・提案します。つまり、1で確認した事項を軸足に、3で得た情報を使って、2で洗い出した変数について最適化するという思考の流れになります。
  5. 実行プランの作成: コアとなる金融商品や取引プラットフォームを成り立たせるためには、どのような手順をとらなくてはならないか、また必要とされる付帯サービス(例:会計トレーニング、ビジネスコンサルティング、監査)を提供するためには誰が何をするべきかを提案します。

私も相棒のTも、これだけ画期的で注目度も高いプロジェクトに関わり、ほとんどフリーハンドで思い通りにやらせてもらっているので、とても大きなやり甲斐を感じています。

2009年3月22日日曜日

ブラジルより - その2

現在のBVS&Aに参加している二つのソーシャルビジネスを訪問して来ました。目的は、彼らの事業のビジネスモデルを理解し、今後のビジネス展開の計画や、それにともなう資金需要を話し合うこと。また、現在ブラジルの社会起業家が資金調達においてどのような困難やニーズを抱えているのか、率直な意見を聞かせてもらいました。

マテ(南米特産のお茶)を飲みながら、新規事業の要の都市部住居向け電力管理装置について説明してくれるFábioさん
  • 3月19日(木): ブラジル中でクリーンエネルギーのトータルシステム(発電・蓄電・管理の装置)をレンタルする事業を行っているIDEAASを訪問。創始者のFábio Rosaさんは、Ashoka Fellowの最古参の一人で、『未来を変える80人 僕らが出会った社会起業家』などでも紹介されているのでご存知の方も多いかもしれない。最近できたばかりのトレーニングセンターで彼と会い、今計画中の営利ビジネスのアイデアなどについて話しあう。夜Florianopoilisに飛ぶ。
  • 3月20日(金): 農村の活性化のため、有機農業と農村観光(アグロツーリズム)を合体させた事業を行っているACOLHIDAを訪問。参加している農家もまわり、組織の運営や資金繰りについて話を聞かせてもらった。ACOLIDA側に英語が話せる人がいなかったけど、幸い随行してくれたリーダーのThaise Guzzattiさん(因みに彼女もAshoka Fellow)と私の相棒のTがフランス語を話せたため、「ポルトガル語→Thaiseさんがフランス語で通訳→Tが英語で通訳→私が英語で質問→Tがフランス語に通訳→Thaiseさんがポルトガル語で質問」というバベル状態だったが、なんとか役に立つ話を聞きだすことができた。
  • 3月21日(土): 早朝サンパウロに帰着。一週間のまとめと来週の計画のため、週末はじっくり考えることに時間を費やすこととする。

ACOLIDAメンバーの農家で振舞っていただいたtoucinho do céuは究極のメニュー入り確実の絶品!

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それにしても、今回のプロジェクトは、「タイが社会株式市場の創設を準備中」という記事を、私がネット上でみかけたことがそもそもの発端でした。

私は一昨年来、友人達と社会貢献価値市場のビジネスプランを書き、様々な関係者と会ったり関連文献の研究を続けてきていて、(ちょっと大口を叩かせてもらえるならば)「この分野については自分よりよく理解している人間は世界中でもそうそういないだろう」くらいの自負を持っていたので、是非ともこのタイでの動きに何らかの形で関わりたいと考えました。そこで、記事に名前が出ていたアジア開発銀行、GEXSI、それにタイのThammasat UniversityとThe Population and Community Development Associationに、これまで私がこの分野に関連してやってきたことを説明したメールと履歴書をダメモトで送ってみました。

すると、GEXSIのCEO(当時)のMaritta Koch-Weserさんから返事が来て、「タイの案件はまだまだ関係者間の話し合いが始まったばかりで、ビジネスコンサルタントの手助けを必要とする段階ではないけど、ムハマド・ユヌス氏が提唱しているような本格的なソーシャルビジネス向け株式市場をつくる動きがブラジルで進行中なので、そちらを手伝ってくれないか」という願ってもない提案をいただき、Celso Greccoさんに紹介されました。

私としては、今まで考えて温めてきたアイデアを実践に役立てることができるまたと無いチャンス。喜び勇んで、いつもこの手のプロジェクトで組んでいる友人のTに声をかけたところ、もちろん参加するとの即答。

早速、予算獲得のため色々と動き回った結果、BM&F BOVESPA からブラジル国内での視察旅行の全経費を、そしてうちの学校のLevy Social Entrepreneurship Labからシカゴ-サンパウロ間往復の渡航費およびサンパウロでの滞在経費を、それぞれ支給してもらうことができることになりました。

2009年3月19日木曜日

ブラジルより - その1

前回のエントリーで書いたとおり、今ブラジルに来ています。

  • 3月16日(月): 期限ぎりぎりでValue Based Leadershipの授業のtake-home examを提出し、夕方あわただしくシカゴを発つ。
  • 3月17日(火): 朝サンパウロ到着。午後BM&F BOVESPAでミーティング。ブラジル側チームと、この2週間の予定確認および期待する成果についての意識のすりあわせをする。
  • 3月18日(水): 午前中休息。午後は①Instituto de Estudos do Trabalho e Sociedadeというシンクタンクのスタッフでマイクロファイナンスを専門とする方、②社会起業家を育成するNESsTのスタッフ、③Fundação Getulio Vargasのビジネススクールの教授、の3人とインタビュー。夜、Porto Alegreに飛び、深夜過ぎにホテルにチェックイン。

という具合に、忙しく走り回っています。

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さて、一体何しにブラジルに来ているのか、ちょっとこのプロジェクトの背景について改めて説明しときましょう。

一言でいえば、コンサルティングプロジェクトで、クライアントはBM&F BOVESPA(サンパウロ証券取引所)。昨年5月、株式市場のBOVESPAと先物市場のBM&Fが合併。世界屈指(ラテンアメリカでは最大)の規模を誇る証券取引所です。

2003年、BOVESPAは、ありきたりの寄付活動に飽き足らず、もっとイノベーティブでユニークな形で社会貢献をできないかと考えていました。そこに、CSRやソーシャルマーケティングのコンサルに特化するAtitude Marketing SocialのCelso Grecoさんが、「社会株式市場(Social Stock Exchange)」をつくることを提案し、BVS&A(Environemntal and Social Investment Exchange)が創設されました。

ところが実際には、BVS&Aは株式を扱うわけではなく、その本質は、Globalgivingなどと同じ寄付プラットフォームです。一般投資家が理解しやすい株式市場の用語を使い、さらに本物の証券取引所が手がけているということで、Newsweekを始め一部では「世界初の社会株式市場」とも呼ばれていますが、Celsoさんは、BVS&Aのコンセプトをさらに発展させて、本当の意味での社会株式市場をつくりたいと考えていました。

そんな中、2006年のノーベル平和賞受賞スピーチなどで、ムハマド・ユヌス氏がソーシャルビジネスのための社会株式市場設立を提唱し、それを推進するため、シュワブ財団やベインなどの支援によって、ダボスの世界経済フォーラムでGEXSI(Global Exchange for Social Investment)が設立されます。こうしたグローバルな追い風もあって、BOVESPAはCelsoさんのアイデアに賛同し、ゴーサインが出ました。

しかし、極めて抽象的なコンセプトとしては多くの人が魅力を感じているけども、どうすれば実際に機能する社会株式市場がつくれるのか、具体的なデザインを考え始めると疑問が山積み。だれもやったことがないし、だれに聞いても答えが出てこず、これはユヌス氏とて同様。

抽象論を離れ、具体化に向けた取り組みとして最も先頭を走っているのが、英国のMark Campanale氏やPradeep Jethi氏が設立準備を進めているSocial Stock Exchange Ltd.だと思います。社会株式市場の実現可能性を探るため、ロックフェラー財団から50万ドルもの支援を受けて、本格的な市場調査を行いました。

一方、BOVESPAは、昨年のBM&Fとの合併以降、まだリーダーシップの移行などが続いていて、なかなか調査だけのために大きな投資に踏み切れる状況ではありません。そんな折も折、私たちがGEXSIを通してCelsoさんに紹介され、お互いの関心・ニーズが見事に合致して、今回のコンサルティングプロジェクトが始まることになったというわけです。

2009年3月14日土曜日

ブラジル映画

今週で冬学期の授業も終わり。まだレポートがいくつか残ってますが、何はともあれ来週からは春休みです!

昨年の春はGlobal Health InitiativeのHIV検査装置市場調査プロジェクトでタンザニアに行きましたが、今年も春休み返上して、Independent Study(自主研究)のプロジェクトでブラジルに行ってきます。BM&F BOVESPA(サンパウロ証券取引所)が、ソーシャルビジネス向け株式市場の創設を企図しており、私たちのプロジェクトはゼロベースでその制度設計を行うというもの。

現実のニーズに合致した金融商品や制度を設計するには、その国の社会・経済の事情を理解していないといけませんが、ブラジルにはこの年末年始にかけて2週間ほどリオに滞在しただけ。ということで、少しでもブラジルに関する理解を深めたいと思い、レポートやネット上で得られる情報を読むだけでなく、最近は暇を見つけてはブラジル映画を見まくっていました。

以下、私が見た全12タイトルの独断ランキング。

  1. City of Men (TV版): 2002年から2005年にかけてブラジルで放映され、国民的人気を博したTVシリーズ。1話30分、全19話。次に紹介するCity of Godを大ヒットさせたKátia LundとFernando Meirellesの監督コンビによる作品で、舞台も同じリオデジャネイロのスラム街。City of Godよりも軽快でコミカルなタッチで、アセロラとラランジーニョという二人の少年の成長過程を追いながら、ブラジルの抱える様々な社会問題についても考えさせてくれる。ブラジルを訪れる全ての人におススメしたい。
  2. City of God: 2004年のアカデミー賞で4部門にノミネートされ、最近のブラジル映画では国際的に最も有名な映画なので、今さら説明もいらないだろう。90年代前半の最も荒れていた頃のリオのスラム街を舞台にしており、暴力や犯罪を正面から扱いながらも、スラム街に住む人々の生活を複層的に描いている。映像も、なかなか見せ方を工夫していて、飽きさせない。
  3. Four Days in September: 1969年に軍事政権下で起きたアメリカ大使誘拐事件を題材にした映画。97年のアカデミー賞外国語映画部門ノミネート作品。
  4. Favela Rising: 音楽を通じてスラム街の青少年たちを育むAfroReggaeというグループを題材にした、ドキュメンタリー映画。主人公のAnderson Sáの人生は、できすぎじゃないかと思うくらい、とにかく劇的で、時にボブ・マーリーを髣髴させるほど。彼と共に行動し、支えあう周囲の仲間たちの信頼と友情も素晴らしい。
  5. Bus 174: 地味ながら丁寧につくりこまれたドキュメンタリー映画で、見たあと考えさせられずにはいられない。2000年にリオのダウンタウンで起きたバスハイジャック事件を題材にしながら、その背景にある社会問題にスポットライトを当てていく。
  6. City of Men (映画版): 映画版はTV版から2年後のアセロラとラランジーニョを描く。これはこれで十分楽しめるんだけど、映画化にあたってCity of Godをちょっと意識しすぎたのか、ブラジル社会の様々な側面を、時に面白おかしく、時に深刻に見せてくれたTV版の絶妙のバランスは崩れてしまっている気がする。
  7. The House of Sand: ブラジル北東地域の海岸部の砂漠が舞台。1910年から1969年にわたり、母・娘・孫娘三代の物語が、叙事詩的に淡々と進んでいく。個人的には、こういう映画嫌いじゃない。
  8. Chronically Unfeasible: ウィットのきいた社会的な警句を織り交ぜながら、ブラジルの色んな地域の色んな人たちの話が交錯する。どこかウッディ・アレンの作風に通じるものがあるかも。
  9. The Middle of The World: 貧しい北東部から、仕事を求めてリオデジャネイロを目指し、自転車で旅をする7人家族に関するロードムービー。ちょっと偏屈でプライドが高いお父さん。やさしいお母さん。お父さんとなんだかソリが合わない長男。見た後、少しほろ苦く、少しほのぼの。
  10. Almost Brothers: 黒人のギャングと、白人の政治運動家。幼なじみの二人の人生は、離れては交差し、交差してはまた離れていく。人種、階級、政治、家族、友情、色んな要素が錯綜しながら物語が展開するが、なんだか結末があっけなさすぎ。
  11. Antonia: サンパウロのスラム街に住む四人の幼なじみの女の子たちが、歌手をめざし、挫折し、またもう一度力を合わせて夢に向かって走り出す…的なお話。あまりひねりも無く、やや平面的な印象。
  12. Ile Aiye (The House of Life): アフリカにルーツを持ち、ブラジルの特に北東部で盛んな、Candombléという宗教/文化に関するドキュメンタリー映画。儀式の様子はハイチで見たブードゥーの儀式に似ている。昨年の大晦日、リオのコパカバーナ海岸で、海の神に向かって花束を捧げている人たちを多く見かけたが、あれも多分Candombléに関係あるのかな。

恥ずかしながら、私はこれまでブラジル映画を一度も見たことが無かったのですが、全体的にクオリティが高く、感嘆させられました。

2009年2月27日金曜日

オバマ政権が大統領直属のOffice of Social Innovationを設置

The Chronicle of Philanthropyの"Crafting a plan for Social Innovation"という記事(無料での記事閲覧はこちら)で、オバマ政権になってホワイトハウス内にOffice of Social Innovationが新たに設置される動きになっていることを知りました。

オバマ氏は選挙活動中から、Social Investment Fund Networkの創設やCorporation for National and Community Service内にSocial Entrepreneurship Agencyを設置することを提案するなど、市民セクターの重要性について何度も言及していましたが、どうやらノンプロフィットや社会起業家を支援するための大統領直轄部署が誕生することになりそうです。

その機能や実態についてはまだ公式な発表がありませんが、政権移行の準備チームでthe Innovation and Civil Society subgroupに加わったメンバーたちの話によると、

  • 実績を挙げている非営利組織・社会起業家への政府資金投資
  • 非営利組織・社会起業家と政府の連携体制の強化
  • ボランティア活動の促進のためのITやメディアの活用
  • ソーシャルビジネスや社会起業への支援
  • ソーシャルイノベーションの活性化のための政策立案

などを含め、従来のノンプロフィットやフィランソロピーの枠を超えたソーシャルイノベーションを促進するためのインフラ・環境整備に向け、抜本的な方策が検討されているようです。

Innovation and Civil Society subgroupのCo-Chairを務めたMichele Jolin氏が、Stanford Social Innovation Reviewの記事や、Echoing GreenのPresidentであるCheryl Dorsey氏とのインタビューでも語っているように、技術革新とソーシャルイノベーションが車の両輪ともいうべき役割を果たして、社会・経済の発展と問題解決の原動力となって行かなくてはならないという考え方が、オバマ政権の基本思想の一つとなっています。

もちろん、政府による市民セクターへの関与を手放しに歓迎することはできませんが、ソーシャルイノベーションが果たす役割に関する一般の認識を向上させるには、大きな効果が期待できると思います。

英国もGordon Brown政権になってから、ソーシャルビジネスの支援環境の整備のために盛んに手を打っており、Social Stock ExchangeやSocial Investment Bankを創設するための準備が本格化しています。オバマ政権に代わって、米国でもますますソーシャルイノベーションのスピードが加速していきそうです。

2009年2月14日土曜日

Africa Open for Business

先週、ノースウエスタン大学のProgram of African Studiesの60周年記念カンファレンスが催され、私も参加してきました。

このカンファレンスのEnterpreneurship and African Capital Marketsというセッションに、パネリストとして招待されたRobert Foglerさんとは、前日の夕食を一緒にする機会があり、とても興味深い話を聞くことができました。彼は、Thousand Hills Venture Fundというアフリカへの投資に特化したベンチャーキャピタルの創業者で、ファンド運営を統括する傍ら、デンバー大学の国際学部で教鞭も取っています。

以下は、私が「なるほど」と思ったポイント。

  • 5年前にファンドを創設して以来、今まではルワンダに投資対象国を絞っているが、現在他のアフリカの国への拡大も検討中。注目しているのは、ザンビア、ガーナ。投資先の国を選定するにあたって重視する条件は、1) 治安がよく、2) 政府がビジネス環境の整備に熱心で、3) 小国であること。ナイジェリアのような大国では巨大資本をもっていかないとなかなか相手にしてもらえないが、比較的小さな国だとビジネス・ネットワークを築きやすいのだそうです。
  • 創業時は、まずルワンダに行って、下調べを行った。その後アメリカに戻って投資家を募り、再度ルワンダに渡って投資先企業を選定した。現地の事情に通じた信頼できるパートナーを得ることが、何より大事な成功の鍵とのこと。
  • 彼のファンドに出資しているアメリカの投資家は、基本的に経済的なリターンを求めているが、アフリカに投資するということに社会的な意義を感じている人も多い。ただ、彼自身は、定義が曖昧な"double bottom lines"を隠れ蓑に使うことはしたくないという主義で、投資家に納得してもらえる経済的リターンを出すことがあくまで本筋だと考えているそうです。
  • 創業当初は社会投資(Social investment)というものに共感していたが、最近はどうも疑問を感じている。非効率的な企業が、曖昧模糊とした社会的リターンを護符にして、資本を安価に調達して生き残り、健全な企業を圧迫する可能性がある。
  • アフリカでのビジネスチャンスに興味があるならば、アフリカにある多国籍企業のオフィスでまずは働いて、現地のビジネス環境を学ぶとともに、ネットワークを築くことを薦める。
  • 中国、インド等でのサプライチェーン構築や市場開拓は、アフリカの中小企業にとって大きな関心事項となっている。

また、同セッションには、2006年のBBC World Documentary of the Yearを受賞したAfrica Open for Businessの監督のCarol Pineau氏もパネリストとして参加。ケロッグでも同日にランチセッションを開き、新作のAfrica Investment Horizonsや未完成のKenya Storiesのクリップを見せてくれました。アフリカというと災害、紛争、AIDSなどの病気、貧困という角度でしか報道されない現状に風穴をあけたいと考えたのが、このような一連の作品を手がけるようになったきっかけだそうです。

とても素晴らしい取り組みだとは思うのですが、一方で、時々垣間見える単純な「援助悪者論」的な彼女の発言には、ちょっと辟易させられました。

Enterpreneurship and African Capital Marketsのセッションは、他のセッションと異なりビジネススクールからの参加者が大半を占め、ビジネス機会を中心に議論が展開したため、アフリカ学専攻と思われる学生から「ビジネスだけでは解決できない問題も多いアフリカの状況についてどう考えるか」という質問が投げかけられました。その時も、彼女はあたかも「ビジネスこそがアフリカの問題を救うのであって、援助やノンプロフィットの活動は、問題を悪化させ、先進国の偏見を助長するだけだ」といったやや感情的な回答をしていました。

「援助の非効率性や腐敗の実例をいくつも見てきたので、自分はanti-aid(反援助)の立場だ」とのことでした。もちろんそうした非効率性や腐敗は無くしていかなくてはいけませんが、だからといって援助や非営利組織の意義を全否定して、ビジネスを全ての問題への万能薬のように扱うのは、あまりにナイーブな考え方だと私は思います。それこそ、エンロンの不正会計・不正取引やサブプライムローンの暴走に端を発する金融破綻を見て、「企業は悪者、資本主義は世界を破壊する」と言いたてて、愛だか利他主義だかが地球を救うと信じようとしている人たちと、次元は同じじゃないでしょうか。

2009年2月3日火曜日

Global Federation of Social Investment Exchanges

本日2月3日から6日まで、イタリアでGlobal Federation of Social Investment Exchangesの発足会議が開かれています。

この会議を主導しているのが、ロックフェラー財団のAntony Bugg-Levineさんと、南アフリカのSASIXのCarol Tappendenさん。ご両人とも個人的に面識があるのですが、このイシューにおける素晴らしいthought leadersです。

でも、こういった会議を今開く実質的な意義については、正直どうも疑問を感じます。本当の意味でSocial Investment Exchangeと呼べるworkableなモデルが(多分唯一の例外であるTriodos Ethexをのぞいて)まだ存在していないのに、まずGlobal Federationをつくってスタンダードやら協力体制やら政策やらを話し合うことにどれほどの価値があるのでしょうか。

最適解が何なのか誰も見当もついていない現段階では、各国各様に現地の事情に適合したモデルを、試行錯誤して作り上げていくことの方が、よっぽど喫緊の課題だと思うのですが。相互の情報交換は重要でしょうが、無駄なbureaucracyをつくる結果に終わらないでほしいものです。

ただ、この会議のウェブサイトのResourcesのページは、最近の社会資本市場に関する資料がよくまとまっていて、ご関心のある方にはオススメです。