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2010年4月23日金曜日

社会起業家を本当の意味で応援するためには、甘やかさず、きっちり評価すること


昨年、『勝間和代のクロストーク』で「日本の社会起業家を応援しよう」と勝間さんが提案されていて、それに寄せた私のコメントがベストアンサーに選ばれましたので、以下に抜粋・再掲しておきます。

  社会起業家を本当の意味で応援するためには、甘やかさず、きっちり評価することこそが一番大事だと思います。 

  非営利組織と営利企業の両方で働いた経験から、私自身は、社会起業の最大の意義は、社会問題の解決において結果を出すことにフォーカスし、そのために経済的・社会的に持続可能な仕組みをつくりあげることだと考えています。つまり、社会起業家が従来の非営利組織と異なる点は、その結果志向と持続可能性であるし、そうあらねばならないということです。 

  従来の非営利組織は、極端なことを言えば、「いいことをしている」という雰囲気をつくり、ドナーやボランティアを自己満足させることさえできればつぶれることがありませんでした。そこには、より多くの人に、より満足してもらえるサービスを提供して、迅速かつ効果的に社会問題を解決するために、絶えずイノベーションを起こして行くインセンティブが働きにくい構造になっています。 

  一方、営利企業は、社会的責任だとか従業員の満足だとか言ったところで、結局は経済的利益を生まなければ倒産するしかありません。 

  同様に、社会起業家も、動機や理念の崇高さだとかマーケティングの巧さではなく、社会問題の改善・解決という結果で厳しく評価される必要があります。結果を出している社会起業家は、より多くのリソースを使えるようになってさらに成長でき、そうでない者は退出せざるを得ない、そういう信賞必罰の仕組みをつくり出すことこそが、長い目で見れば社会起業家を育成するための最も有効な方法だと思います。

  それを、官庁主導で必要以上に優遇しては、健全な自助努力や工夫を阻害してしまいます。また、結果も伴わないうちに、マスコミ主導で社会起業家というものを無思慮にはやし立てるのも危険だと考えています。(僭越ながら、このあたりについては私のブログhttp://su.pr/1F0mhHでも書いていますので、よろしければご笑覧ください。)

  優れた社会起業家を応援することは大事ですが、弱い(=経済的自立性が低く、結果も出せない)社会起業家も一緒くたにして応援してしまっては、有象無象が群がる新しい既得権益をつくりだしてしまうだけです。

  そういう意味で、私自身は、 (社会起業家に限らず)普通の起業家がもっと起業しやすい政策環境、 社会起業家を結果で公正に評価する仕組み、 投資家が社会起業家とリスクを共有できる資本市場の仕組みをつくることこそが必要だと考えています。
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2009年9月7日月曜日

Kaien、始動

ケロッグ経営大学院にMBA留学する直前に、息子さんが自閉症と診断された鈴木慶太さん。

彼の「自閉症を取り巻く社会の現状をどうにかして変えたい」という、真剣な思いと行動力に引き寄せられ、ビジネススクールの仲間や、多くの外部の専門家、それに応援してくださる方々が少しづつ周囲に集まって来て、Kaienは始まりました。


Kaienlogo
Kaienのロゴもリニューアル

この夏、主要メンバーがケロッグを卒業して、Kaienの勢いは加速中です。
  • 先月東京で開かれた、MBAnoWA主催の日本人MBA留学生を対象としたビジネスプラン・コンペティションで優勝
  • 大手IT企業で自閉症の方を雇用する新規プロジェクトにKaienがコンサルティング業務などで支援することが内定
  • 法人化準備も進んでおり、今月末には株式会社Kaienを設立の予定

さらに、今月末には、アカデミーヒルズでCEOの鈴木慶太さん(Kaien共同創業者として言わば身内ですが、このブログは私の個人的なメディアですので、これからも「さん」づけで呼ばせてもらいます)が、1時間半ほどの講演をさせていただくことになりました。

ケロッグ経営大学院 モーニング・セッション
変貌するMBA 社会起業のうねり
~全米ビジネスプラン・コンペティション優勝者による体験談~

  • 日 時: 2009年9月25日 (金) 朝 8:00~9:30
  • 場 所: アカデミーヒルズ49 (六本木ヒルズ森タワー49階)
  • 会 費: 4,000円(サンドイッチ・コーヒー代が含まれます)
  • 申込み: 件名に『ケロッグ・モーニング・セッション8』と記載の上、ケロッグ経営大学院日本同窓会・事務局まで、メール【kellogg@arc-c.jp】にてお申し込みください。(アカデミーヒルズのホームページ経由の申し込みはすでに満席になっております)
  • お問い合わせは『アカデミーヒルズ・六本木スクール事務局』までお願いします。(電話:03-6406-6200、受付時間:10:00-19:00 土・日・祝・年末年始を除く)

鈴木慶太さんからのメッセージ

このセッションでは、息子が自閉症に診断されてからビジネススクールの仲間たちとビジネスプランを書き上げ、起業にいたるまでに体験したエッセンスを、「MBAと社会起業」というコンテクストの中でお伝えしようと思います。
このセッションをお聞きいただけば、Kaienのプロジェクトが何を目指して始まり、アメリカのMBA生や社会起業支援家に評価・批評・支援されるなかで、どのような変遷を遂げて創業に結びつこうとしているのかが、良くお分かりいただけるものと感じています。セッションの最後には鈴木とQ&Aの時間も数十分ほどとっていますので、Kaienに対する質問などをお気軽にしていただける機会にできればと思います。
会場が六本木ヒルズということで場所柄、高い会費になり恐縮です。今のところ席に若干の余裕がありますが、是非お早めに申し込みください。

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2009年9月2日水曜日

勝間和代のクロストーク

フローレンスの駒崎さんのブログや、SocialCompanyのIchiさんのTwitterで、勝間和代さんが毎日.jpで「日本の社会起業家を応援しよう」 という問題提起&コメント募集をしていることを知り、遅ればせながら私もコメントを寄せてみました。

勝間和代のクロストーク 日本の社会起業家を応援しよう
↑ 「51 Commented by 徐 勝徹 さん」ってやつです。
(Ichiさんのすぐ後。)


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2009年5月23日土曜日

そもそも社会起業って何? - その2

さてさて、前回「そもそも社会起業って何? - その1」で、私から読者の方に変な問題を出しておきながら、お待たせしてしまいました。

次の4つの文章の中から正しいものを一つ選んでください
A. 社会起業をする人が社会起業家である
B. 社会起業家がやることが社会起業である
C. AとBの両方正しい
D. AとBの両方間違っている
まぁ、私が戯れに即興で考えた問題に過ぎませんので、本当のところ唯一無二の正解なんてものはありません。

ただ、普通にいたって素直に考えれば、Cと答えそうなものです。

「だけど、わざわざこんな質問をしてくるってことは、AかBのどちらかが間違ってるって言いたいのか?」と勘ぐれば、あまがえるさんや、sick_drunkerさん、scopioさんのようにAと答える方が多いかと思います。なんといっても「社会起業家」という言葉を見れば、「社会起業」にそれをする人という意味の「家」がくっついた形になってますから。

このブログのコメント欄ではありませんでしたが、他のところで、単に起業しただけじゃなくて結果を出さなくては社会起業家と呼ぶには足りないからという理由で、Dと答えられた方もいます。

金のスナさんの「概念の束縛などを受けない行動の中にこそ本質的な革新性が見いだせる」のだから「解なし」では、という答えも面白いと思います。

どれも一理あるので全て正解 ...ってことで終わらせてはあまりにもつまらないんで、 私は敢えてここではBが正解だと主張してみたいと思います。

確かに「社会起業をする人が社会起業家である」というのは、日本語の字面をみているとこちらの方が正しく見えます。

しかし、社会起業 = social entrepreneurship、社会起業家 = social entrepreneur として考えてみるとどうでしょうか?「social entrepreneur がやることがsocial entrepreneurshipである」という言い方の方が妥当だと思います。

こんな屁理屈を言うと、「今ここでは日本語で対話をしているのに、何で英語を持ち出してこなきゃいけないんだ?英語カブレになってるんじゃないの?」という声が聞こえてきそうですが、ちょっと待ってください。

まず、社会起業家っていうコンセプトは、今まさにグローバルな規模で起きている市民社会と企業と政府との間の関わり方の大変革の文脈に置かないとその本質を理解できません。(これについては後ほど詳述します。)

また、私たちが住む世界では、貧困、環境、格差、病気、人権といったいわゆる「社会問題」というものも、国境の向こうや地球の裏側で起きているアクションの連環と密接に結びついています。社会起業家の活動は国際的なものでも、全国規模でも、コミュニティレベルのものでもよいのですが、そこにはグローバルな視野がなくては、原因の根本的な理解も、解決策の最適化もできなくなっているのです。

だから、社会起業家って何だろうと考えるときには、世界中のsocial enterpreneurたちの一人であることを認識する必要があると思います。「野球はbaseballとは違う」みたいなことを言っていられる類の話ではないのです。

「social entrepreneur がやることがsocial entrepreneurshipである」と考えるべきだと私が主張する理由がもう一つあるのですが、そろそろ長くなってきたので次回書くことにします。

2009年5月18日月曜日

そもそも社会起業って何? - その1

先日私の友人で、KAIENのCEOのSさんのところに一通のメールが来ました。その中に、KAIENの事業に関する色々なありがたいご意見とともに、「KAIENのやろうとしていることは、社会貢献企業であり、社会起業ではないのではないか」という問いかけがあったそうです。

最初に断っておきますが、Sさん自身は、特に社会起業家と呼ばれたいとは思っていません。Sさんにとって何より大事なのは、「自閉症を抱える一人息子が将来成人する頃に、彼のような人たちに公正な参加の機会が開かれている社会をつくりたい」というミッションです。そんな遠大なミッションを夢で終わらせず、具体的にどうすれば実現できるのか、と考え抜いた末に、その手段として起業という道を選んだに過ぎず、それが「社会」起業と呼ばれるかどうかなんてことにはあまり興味がありません。

Sさんを始めKAIENに関わる私たちは、「自閉症を持つ人は、社会的なスキルなどの弱点はあるけれど、それを補って余りある人並み優れた才能を持つ人たちがたくさんいる。彼らの弱点をサポートし、強みを活かすコツさえ企業側がつかめば、保護すべき弱者ではなく貴重な人材として、ビジネスに貢献してもらうことができる」ということを、がちがちの資本主義の論理で動くビジネスの本流にいる人たちに理解してもらうため、私たちが身をもって証明してみせることこそが、ミッションを達成するための一番の近道だと考えています。ですから、もしも「社会起業家」というまだふわふわしたレッテルで呼ばれることが、かえってビジネスの本流にいる人たちに真剣に受け取ってもらえない理由になり、KAIENのミッション達成の障害になるとしたら、Sさんは社会起業家なんて呼ばれたくないとさえ思っているはずです。

以前マザーハウスの山口絵里子さんとちょっとメールのやり取りをする機会があった時も、「私自身は自分を社会起業家だと全く思って」いないと書かれていました。彼女の場合、Sさんとはちょっと違った理由からですが、どちらにしろ、お二人ともミッションを達成することに無我夢中で、周りの人が自分のことを何と呼ぶかにはあまり頓着しないのでしょう。

ただ、それにしても、「社会起業」って、「社会起業家」って、何なんでしょうか?なんでSさんにメールをくれた方は「KAIENは社会起業ではない」と言われたのでしょうか?

と、そんなきっかけがあって、少しこのあたりについて私の考えていることを整理して書いてみようと思い立ちました。

では、ここで、ちょっと変な問題を。

次の4つの文章の中から正しいものを一つ選んでください
A. 社会起業をする人が社会起業家である
B. 社会起業家がやることが社会起業である
C. AとBの両方正しい
D. AとBの両方間違っている

どう思いますか?

2009年4月24日金曜日

行政やメディアとソーシャルビジネスの距離感

オバマ政権になってホワイトハウスにOffice of Social Innovationが新設される動きになっているという話題を、以前にこのブログでも取り上げましたが、先週これについて正式な発表があり、Google.orgのSonal Shah氏がこの新しい部署を率いることになりました。(The Chronicle of Philanthropyの記事によると、国内政策全般の調整を行うDomestic Policy Councilの下に設置されるそうなので、前回書いた「大統領直属」って言い方はちょっと間違いでしたね。)

では日本は、というと経産省がソーシャルビジネスの振興に取り組み始めています。先月ソーシャルビジネス全国フォーラムを開催し、「日本ソーシャルビジネス宣言」なるものを採択しましたが、これからどうなりますことやら。経済産業省が実施しているソーシャルビジネス/コミュニティビジネスの推進施策ってのを見てても、決して意図が間違ってるとは思わないけれど、どうもいかにもいつものお役所仕事の延長線上で、無難で実効性のないことにお金を使ってるなという印象を受けます。少なくとも、どうしたら本当に日本でソーシャルビジネスが活性化されるのか、真剣に深く考えた結論として出てきた施策とはちょっと思えないんですよね。

まぁ、でもあまり経産省のやってることに文句をつけても仕方ないのかな、という気も。 ソーシャルビジネスをリードする側が着々と実績を積んで実力をつけ、ソーシャルビジネスの発展には何が必要か、行政が担う役割は何か、ということをしっかり提言するようになるまでは、下手に官僚に主導権をとられてもうまくいかないと思うので。

日本では、特に社会福祉や公共善といった話になると、「お上」に何かやってもらおうという意識がどうしても強いように思いますが、ことソーシャルビジネスや社会起業に関しては、行政の力をうまく利用できる実力をつけるまで、つかずはなれずの微妙な距離感(arm's length relationship)を保つ必要があると思います。

因みにこれは、メディアとの関係についても言えることじゃないでしょうか。もちろん、社会起業家やソーシャルビジネスは、メディアをうまく活用する必要があることは言うまでもありません。ただ、日本の「社会起業」とか「ソーシャルビジネス」というものを語っている側の間でもそれが何のことを指しているのか不明瞭で、まだ内実が伴わないうちに下手に注目だけ集めると、有象無象が群がり収集のつかないことになってしまう危険があります。

アメリカの例を見ていても、メディアが注目し始めた頃には、しっかりとした実績をもった成功例が数多くあり、明確なビジョンを持ってメッセージを主体的に発信できる態勢がある程度整っていましたが、日本ではまだ成長段階がそこまで至っていませんので、あまり世間の注目を集めることに躍起にならない方がいいでしょう。

ましてやアメリカに比べて、財団などのサポート基盤や、民主導のソーシャルイノベーションや起業家精神に関する一般の理解といった環境が整っていない中で、日本のソーシャルビジネスには、より戦略的に業界全体を育てていくという思考が求められると思います。

2009年4月23日木曜日

無念!

みなさんに応援いただいていたDell Social Innovation Competitionでしたが、残念ながらKAIENの決勝進出はならず。ご投票いただいた方々には申し訳ない結果となってしまいました。

でもまぁ、フィードバックはもちろん参考にするにしても、結果については、勝負は水物だから仕方ないとスッパリ気持ちを切り替えて、実際の立ち上げに向けてCEOのSさんを中心に頑張っていきます。

これからも是非とも応援よろしくおねがいいたします!

2009年4月19日日曜日

KAIENがTulane Business Plan Competitionで優勝しました!


昨年このブログでも、高機能自閉症の人たちの強みを活かしてB2Bでソフトウェアテストのサービスを提供する社会起業について何度か書きましたが、その後CEOのSさんの八面六臂の大活躍で、来年の本格的な立ち上げに向けて、どんどん準備が進展しています。詳しくは、こちらのKAIENホームページをご覧ください。

そんな中、昨夜Tulane Business Plan Competitionの社会起業部門の決勝で、KAIENがClean India (バージニア大)とPolicyPitch.com (チューレーン大)をおさえ、優勝賞金2万ドルを獲得したという朗報が舞い込みました。
私自身は、決勝プレゼンがウォーレン・バフェット氏とのミーティングと同じ日だったので、残念ながら大会会場でSさんと喜びを分かち合うことはできませんでした。

自信を持って臨んだGlobal Social Venture Competitionでは、準決勝敗退という結果に終わりやや落胆していただけに、今回の勝利は私たちのチームにとって大きな弾みになりそうです。この勢いで、もう一つ参戦しているDell Social Innovation Competitionでも決勝に駒を進めたいもの。

このブログの読者の方の中には、同コンペティションの一次で投票してくださった方も多いかと思いますが、100チーム中3チームに絞られる準決勝でも、審査員団の評価の際に一般投票による得票数が考慮されますので、是非こちらの投票の手順をご参照の上ご協力のほどお願いいたします。(一次での投票結果は白紙に戻され、準決勝のため改めて投票していただく必要があります。。)準決勝投票の〆切は4月21日(日本時間では22日午前7時)と目前に迫っていますが、得票数で苦戦していますので、ご友人、お知り合いにもお声をかけていただけるとありがたいです。

2009年4月7日火曜日

ビジネスウィーク誌が選ぶ『アメリカの最も有望な社会起業家』

米ビジネスウィーク誌が選ぶ『アメリカの最も有望な社会起業家 (America's Most Promising Social Entrepreneurs)』25組が発表されました。

友人のSara OlsenさんとBrett Galimidiさん(Social Venture Technology Group)が選ばれたと聞き、チェックしてみたところ、Microfinance International Corp.のCEOにして日本人初のアショカグローバルフェローの枋迫篤昌氏も入選していました。

今回発表された25組から、4月26日までの一般投票でトップ5組が選ばれるそうなので、是非応援しましょう!

2008年12月6日土曜日

スタディトリップの成果

今朝のEntrepreneurial Financeで、秋学期の授業は終了。今学期私が取った授業は運良くin-class examがなく、レポート提出やtakehome examも今日で全て終わり。一足早く明日から冬休みに入ります!

当初は中東旅行なども企画していたのですが、諸々の事情により南米4カ国(チリ→アルゼンチン→ウルグアイ→ブラジル)を巡る旅に変更。

明日チリに飛び、そこから2週間のクルージングで南米大陸の南部をぐるっと回ってブラジルまで行き、あとはリオでまた2週間ほどゆっくり滞在するというなかなか贅沢なプラン。

それにしても、秋学期は比較的緩やかに始まり、授業もこれまでになくまじめに出ていたのですが、11月に入ったあたりからは突然全てに加速度がついてきて、最後の一ヶ月ほどは疾風怒濤の如く過ぎていきました。

まぁその一番の原因は明らかで、サンクスギビング休暇を利用して日本で行ったスタディトリップ。訪問先のアレンジをしたSさんの大活躍で、当初の想定以上に充実したスケジュールになり、東京、名古屋、大阪で
  • 障害者雇用に力を入れている企業2社
  • 自動車部品メーカー2社
  • 組込みソフト検証業者1社

を訪問したほか、ご自身が発達障害の方4名、組込みソフトに詳しい大学教授1名、自閉症者の就労支援を研究されている大学教授1名と大学院生1名にお会いすることができました。

強行軍でちょっと体力的にも無理しながらも頑張った甲斐があって、期待以上の成果がありました。自動車部品メーカー2社からは、起業の暁には一緒に仕事する機会を前向きに探りたいというお言葉をいただき、さらに個人的に出資をしたいと言ってくださる方まで現れました。このスタディトリップで得られた知見と自信のおかげもあって、こちらに帰ってきて今週行ったVenture Formulationのクラスの最終プレゼンは、ジャッジのベンチャーキャピタリストや起業家の方にも大変好評でした。

次のステップとしては、2009-2011を準備期間としてその間にパイロットプロジェクトを実施するために、協力企業や出資者を集めることを考えています。そのため冬休みには、Sさん一人でもう一度日本に戻り、さらに色々な関係者とネットワーキングをすすめることになっています。

2008年11月4日火曜日

スタディトリップを敢行!

現在自動車業界では、急増する組込みエンジニアへの需要を、
  1. 社内または子会社
  2. 国内ソフトハウスへのアウトソースまたは派遣会社
  3. インド・中国等へのオフショア
で対応していますが、概して他業界に比べて2や3の取り組みが遅れています。1>2>3の順で円滑なコミュニケーションやクオリティの確保もしやすい反面、コストも高くなります。また、フレキシブルな労働力調整(現況では特に人員増加)が可能なのは逆に3>2>1の順になります。

そうすると、単純に言えば、2と同等または少し高いくらいのコストでも、1とほぼ同等のクオリティを提供できれば十分勝算があるといえそうです。そのためには、一番の工夫のしどころになるのが、高機能自閉症やアスペルガー症候群の人たちが本当に能力を発揮でき、それを顧客企業に評価してもらえるような環境・システムの作りこみだと考えています。
  • トレーニング
  • 業務プロセス
  • プロジェクトマネジメント体制
  • 顧客とのコミュニケーションインターフェース
  • オフィス環境
といった諸要素を、高機能自閉症やアスペルガー症候群の方の特性にあわせ、なおかつ顧客のニーズにより良く応えることができるように、根本から見直してデザインしなおす必要があります。

この数週間で日米の自動車業界、組込みソフト業界、それに自閉症支援専門家の方たちにインタビューをしまくって、「これは行けそうだ」という感触がだんだん強まってきました。しかしそうは言っても、やはり現場を見ないことには、どうにもピンと来ないことが沢山あります。

そのため、思い切って今月後半のサンクスギビングの休暇を利用して、Sさんと私で日本の自動車部品メーカーやソフトテスト会社を訪問することにしました。訪問先の企業から、いくつか見学OKとのお返事をいただき、目下日程を調整中です。

ただ、できるなら自閉症の方の就労支援に詳しい方と一緒にこうした現場を訪問できれば、収穫は数倍になるはず。この分野で著名な大学教授数人ともお話させていただいたのですが、生憎なかなか日程が合いませんでした。

というわけで突然ですがこの場を借りて、11月24日の週で、東京、大阪、名古屋の各地で、私たちと一緒に企業訪問をしてくださるボランティアを募集させていただきます。もしも、このブログをお読みの方のお知り合いに、

  • 自閉症者の就労支援の専門家(特に高機能自閉症、アスペルガー症候群)
  • 自閉症スペクトラム支援士
  • ご自身が高機能自閉症、アスペルガー症候群で、ソフトウェア開発のご経験がある方

がいらっしゃったら、是非ご紹介いただけると有難いです。

2008年10月26日日曜日

社会起業で、高機能自閉症の方のニーズに適合した職場環境を - その4

Thorkil Sonne氏が創ったSpecialisterneでは、トレーニング、オフィス環境、業務プロセス、それにコミュニケーション体制が、高機能自閉症やアスペルガー症候群の人たちの特性にあわせてデザインされています。こうして、高機能自閉症やアスペルガー症候群の人たちが持つ弱点をうまくカバーしつつ、強みを最大限に活かすことで、一般のデバッガーに比べて20%も高いパフォーマンスを発揮することを可能にしています。

このモデルを日本に持ち込もうする際に、私たちが現在着目しているのが車載電子機器・部品の組込みシステムやソフトウェアのデバッグです。
『近年では、電気・電子機器の高度化・複雑化と、マイクロプロセッサやメモリの性能単価の下落が進んだ結果、より広範な分野で組み込みシステムが採用されるようになっている。洗濯機、炊飯器、テレビ、ビデオ、デジタルカメラ、プリンタ、コピー機、携帯電話、自動車、自動販売機、券売機など、身の回りにあるほとんどの機械には何らかの組み込みシステムが搭載されているといっても過言ではない。』
このように、組込みシステムや組込みソフトウェアの開発・検証に必要なスキルへの需要は急速に拡大しているのに対して、現在日本では全産業で約10万人の組込みエンジニアが不足しているといわれています。

特にこの問題が深刻なのが、自動車業界です。今や「走るコンピューター」とさえ呼ばれるほど自動車の電子化は進んでおり、車載電子機器・部品が車の製造コストの30-40%を占めています。こうした傾向は今後さらに加速することが見込まれており、組込みエンジニアの確保は業界全体の課題となっています。

私たちはここにチャンスを見出し、自動車業界に特化して、組込みシステムやソフトウェアのデバッグおよび検証を行うビジネスができないかと考えています。とは言え、実は困ったことに、私たちのチームには、自動車業界に詳しい人も、ソフトウェア・エンジニアリングの知識を持っている人もいないため、現在はこれらの業界関係者や自閉症支援専門家の方たちに必死で聴き取り調査をかけているところです。

2008年10月22日水曜日

社会起業で、高機能自閉症の方のニーズに適合した職場環境を - その3

高機能自閉症やアスペルガー症候群を持つ人たちのほとんどは、障害者手帳の交付対象とならないため、これまで雇用支援などの行政による支援の外に置かれてきました。厚労省は、やっと来年度から発達障害者の雇用にも助成金を出す方針を決めたようですが、「大企業は1人当たり年間50万円、中小 企業は1年半で90万円」という額が実際どれほどの効果をもつのかは疑問だと思います。

ほとんどの企業経営者にしてみれば、知的能力が高くても自閉症をもつ人たちについて「不可思議で、取り扱い困難な存在」という程度の認識しかないのが現実でしょうから、
  • 高機能自閉症やアスペルガー症候群の人たちが持つ特有の強みや弱点は何か
  • 彼らの強みをどうすれば活かす事ができ、逆に弱点はどのようにサポートすればよいのか
  • それをすることでどのようなメリットがあり、どのくらいのコストが発生するのか

ということを実例を見て納得してもらわない限り、助成金の果たす役割は極めて限定的になると考えています。

一方慈善団体による自閉症者への援助は、青少年やシニア層を対象としたものが大部分で、成人の場合は知的障害を持つ人に就労機会を提供する共同作業所などの取り組みが細々と行われているだけのようです。これらの活動自体は非常に有益なものだとは思いますが、高機能自閉症やアスペルガー症候群を持つ成人の雇用の問題は、ここでも見落とされがちです。

2008年10月21日火曜日

社会起業で、高機能自閉症の方のニーズに適合した職場環境を - その2

一方、夏休みの間、残ったメンバーで社会貢献価値市場のプロジェクトの今後をどうするか話し合いましたが、どうも意見がまとまりませんでした。主要メンバーの全員が、MBA卒業後は一般企業に一旦就職する(私の場合は元の職場に戻る)予定で、場所もアメリカと日本に分かれることになりますが、私たちのアイデアを実現しようとすると、大変な労力と中長期的なコミットメントが必要になるのは明らかです。この一年間だけでできることとなると、どうにも中途半端になってしまいそうで、議論が行き詰ってしまいました。

そこで思い切って、社会貢献価値市場のアイデアは一度寝かせておくことにして、その間Sさんの起業アイデアの具体化を手助けしようということになりました。私たちがSさんのプロジェクトに魅力を感じた理由としては、以下のような点が挙げられます。
  • 一人息子の将来を案じて、自分で現状を変えていこうとするSさんの思い
  • 障害を持つ人たちを保護の対象として見るのではなく、既製の環境では発揮しきれない能力を持った能動的な存在として捉える考え方と、その実例をつくってみせることによる社会的な波及効果
  • (前回のエントリーへ頂いたコメントにあった言葉を使わせていただくと)「人を組織に当て込むのではなく、組織を人に合わせて作っていく」という発想の逆転
  • 安易に政府や慈善団体の援助に頼らず、できる限りビジネスの視点から自立的で持続可能な解決策を見つけだそうとするアプローチ

そんなわけで、今学期はEntrepreneurship & New Venture Formulationのクラスを通して、Sさんと他の3人の仲間と一緒に、このビジネスプランの策定に専念しています。

2008年10月20日月曜日

社会起業で、高機能自閉症の方のニーズに適合した職場環境を - その1

社会貢献価値市場のプロジェクトを昨年から一緒に進めてきた仲間の一人に、日本人のSさんがいます。今年の6月だったか、その彼から「プロジェクトを抜けようと思っている」という話が出ました。理由をきくと、「高機能自閉症の人に快適な就労機会を提供する社会起業をしたいと考えていて、MBA二年目はその準備に集中したい」とのこと。

Sさんの息子さんは、昨年彼が渡米する直前に自閉症と診断され、現在も奥さんと息子さんは日本にいます。一口に自閉症といっても、症状の現れ方は様々です。一般的には自閉症というと知的障害を伴うイメージが広くいきわたっていますが、知的能力が低くない自閉症者も実は多く(一説には75%)、「高機能自閉症」とか「アスペルガー症候群」といわれます。この二つの厳密な区別は難しいのですが、Sさんの息子さんもそうしたケースです。

こうした人たちは、健常者と比べて全く遜色ない知的能力を持っていても、対人コミュニケーション能力が弱いなどの自閉症特有の困難を抱えているために、多くの職場では受け入れられず、失業率がとても高いのが現状です。

しかし、デンマークにあるSpecialisterneという会社では、高機能自閉症やアスペルガー症候群の人たちが持つ「繰り返し作業で発揮する高い集中力」、「微細な異変・異常を感知する鋭敏性」、「几帳面さ」といった能力を積極的に活用して、マイクロソフトやオラクルなどのソフトウェア会社からデバッグ業務を受託するサービスを提供し、ビジネスとして成功しています。実は、CEOのThorkil Sonne氏の息子さんも高機能自閉症で、彼らが生産的に仕事をできる職場を創りたいという思いから、Specialisterneを興したそうです。

SさんもSpecialisterneのモデルを基に、日本で会社をつくることはできないかと考えていました。

2008年1月28日月曜日

ビル・ゲイツがすごいと思うわけ

フィランソロピーや社会貢献の話をしていると、よく出会う人たちの類型があります。

  • 「愛は地球を救う」型: 草の根NPOなどに多いタイプで、思いやりの気持ち、行動の意図を重視するあまり、その効率や持続性にはあまり意識が向かない
  • テクノクラート型: 国際組織や大手NGOの一部に多いタイプで、現実の問題の複雑さをよく理解しているがために、一種のシニシズムに陥り、現状の枠組みで与えられた仕事を粛々と進めることのみに専念する
  • ビジネス万能主義型: 最近急増しつつあるタイプで、ビジネスの手法を活用し、市場原理を徹底させれば、世界の全ての問題が解決するかのような錯覚を持っている
若干誇張が入ってますが、いずれにせよどのタイプにもそれぞれ長所と短所があり、それぞれに補いあってダイナミズムが生まれています。

しかし、今日ビル・ゲイツの世界経済フォーラムでの講演のノーカット版を改めて見てみて、彼はこれらのどの類型にも属さない、真に成熟したビジョンを持つthought leaderだと認識を新たにしました。

  • 「より広範な分野で資本主義経済の力を利用してイノベーションを起こす」ことに留まらず、「資本主義経済と言う社会システム自体をイノベーションの対象にしてしまう」ことを提唱している
  • 企業は、お金だけでなく頭脳を提供し、イノベーションの手助けをすることによってこそ、より大きな貢献が可能だと主張している
  • 企業だけでなく、政府や非営利団体が果たすべき役割と、協働の必要性についてよく理解している
  • 社会変革を突き動かす動力として、「自己利益」と並んで、「思いやり」が持つポテンシャルを認識している
  • インセンティブの形態として、「金銭的利益」だけに限らず、「評判」の重要性にも着目している
  • 「創造的資本主義」を現実にするためのさしあたっての突破口は、「成果の測定」にあることを理解している
等々、彼の話を聞いていると、「我が意を得たり!」というポイントが目白押しです。

ゲイツ財団を立ち上げて試行錯誤をする中で、様々な失敗もし、彼のスタイルについて批判もあると聞いていましたが、さすがに学習能力と洞察力がずば抜けているのでしょう。他のどんな社会起業家や学者と比べても、見えている視野の広さ、問題の本質を考える深さ、そして人を動かせる楽観的積極性において、これほどの人は私が知る限りちょっと見当たりません。

2008年1月26日土曜日

ビル・ゲイツの「創造的資本主義」

ビル・ゲイツが、一昨日ダボスの世界経済フォーラムで行った講演で、「創造的資本主義」の必要を訴えて、大きな反響を呼んでいるようです。

資本主義経済が持つすばらしい特長は、インセンティブを有効に活用することで、人間一人一人が持つイノベーションを生み出す力を最大限に引き出して、価値創出の持続的拡大のサイクルを実現するという点にあります。ただ、資本主義が副産物として生み出す富の偏在は日々加速度的に進行しており、世界の人口の半分以上にあたる貧困にあえぐ人々は、そうしたメリットを享受できず取り残されています。

そうした資本主義の特長をより創造的に活用し、これまで資本主義経済の外部に置かれていた問題の解決に向けようという考え方が、ゲイツの「創造的資本主義」で、これはムハマド・ユヌスが提唱している社会性ビジネスの考え方にもまた密接に関連しています。

ゲイツはこの創造的資本主義のコンセプトについて、昨年ハーバード大学の卒業式での式辞でもすでに語っています。そこで彼は、「みんなが他の人を思いやる気持ちが足りないのが問題なのではない。複雑に入り組んだ現実に直面して、そうしたみんなの気持ちを活用することができずにいるのが問題なのだ」と言った後、「問題を認識し、解決策を見出し、そのインパクトを理解することができるようにして初めて、思いやりの気持ちが実際の行動へとつながる」と述べていますが、これには強く賛同します。

「問題の深刻さ・重要さを正しく認識できるようにする仕組み」、「解決策のイノベーションがより生まれやすくなる仕組み」、そしてその「インパクトがよりよく理解できるようにする仕組み」は、 どれも社会価値創出のためのエコシステムを構成する根幹の要素であり、これらが創造的資本主義への進化を促進するのだと考えています。私が現在友人たちと取り組んでいる「社会貢献価値」取引所のプロジェクトの意義もまさにここにあります。

2008年1月23日水曜日

ムハマド・ユヌスがやってきた ヤァ!ヤァ!ヤァ!


グラミンバンクの創始者で2006年のノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏がシカゴで講演をされるということで、極寒の中ダウンタウンまで出かけて聴いてきました。700~800人くらい収容できる会場はほぼ満席でした。

マイクロファイナンスや社会起業に特に関心のある層を対象としたものではなく、全く一般の人向けなので、ユヌス氏の話の内容も、出てくる質問のレベルも、正直言って大したことありませんでした。でもまぁミーハーな私としては生ユヌスを見て、直筆サイン入りの新著『Creating a World Without Poverty: Social Business and the Future of Capitalism』を購入できただけで、とりあえずは満足。

講演自体は40分程で、グラミンバンク設立当初の話が半分、残りは最近彼がフォーカスしている社会性ビジネスについてでした。新著でも述べている通り、彼の定義では「社会起業 (social entrepreneurship)」は営利も非営利も包含するのに対し、「社会性ビジネス (social business)」はその下位概念で、営利活動を通じて社会的価値を生み出す事業形態の方にスポットライトをあてます。

ノーベル平和賞受賞スピーチでも話していた"social stock market"についても二回言及がありました。個人的にはこのトピックについて彼の考え方をもうちょっと突っ込んで聞きたかったのですが、軽く触れた程度で、ちょっと残念でした。

質問時間は20分くらい。私もずっと手を挙げ続けていましたが、競争者が多くて、運悪く結局指されず終いでした。

2008年1月18日金曜日

村上世彰氏が日本の寄付市場の拡大を図るためのプラットフォーム作りに20億円を寄付

東京の友人からのメールで、村上ファンドの村上世彰氏が、日本の寄付市場を拡大するためのプラットフォームとしてNPO法人「チャリティープラットフォーム」を設立したというニュースを知りました。

最近のAERAに記事が載っていたそうで、それによると、
  • 村上氏は同NPO基金に15億円を既に寄付済みで、今年も5億円予定。 累計の寄付は20億円にのぼる
  • 資金の使途としては、NPO/NGO支援のために5億円、大震災時の緊急支援の研究のために10億円

とのことらしいです。日本のノンプロフィット業界で20億円というと、相当インパクトがある金額です。

ゲイツやバフェットに触発されて、日本でも大きな動きを見せる人が現れてこないはずがないと思っていましたが、村上氏は正直ノーマークでした。 さすがに頭の良い人ですから、ただお金を出すだけではなく、その効果を最大化させるためには何に使えばよいかを考えた上で、寄付市場拡大のプラットフォームに目をつけたのでしょう。ただ、ホームページを見た限りでは、まだ具体的なアプローチや活動についてはフォーカスが絞りきれていない印象を受けました。実際にどうすれば寄付市場を拡大させることができるのか、そこで自分たちにできるユニークな貢献とは何か、「theory of change」を模索している段階ではないでしょうか。

ノンプロフィット業界では人々からの信頼が何といっても最大の資本ですから、世間の村上氏に対するネガティブな見方を考えると、既存の中堅以上の団体は、まずは「敬して之を遠ざく」というリスク・アバースなスタンスにならざるをえません。しかし、近年日本でも台頭しつつある社会起業家の中には、ビジネスライクに「白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕るのが良い猫である」と割り切り、リスクを取ってでも協働する人たちも出てくるはずだと思います。

私が目指す、「社会起業インフラの整備」とその先にある「社会価値創出エコシステムの共創」というビジョンに近いものを感じますので、是非注目していきたいと思います。

2008年1月13日日曜日

サンフランシスコでのネットワーキング - その2

サンフランシスコでの2日目は、ノンプロフィット・コンサルティング・ファームを3社訪問しました。

1. FSG Social Impact Advisors

米国のサンフランシスコ、ボストン、シアトルと、スイスのジュネーブの4ヵ所にオフィスを持ち、約50人のスタッフを擁するノンプロフィット・コンサルティングの雄。設立者の一人が、戦略論で有名なマイケル・ポーターで、彼は今もシニア・アドバイザーの一人として関わっています。

ノンプロフィット・コンサルティングの仕事が実際どんなものか少し体感できるようにと、簡単なケース・スタディまでさせてくれました。私が本業のビジネス・コンサルの仕事で使っているスキルが、そっくりそのまま活かせそう。

2. Business for Social Responsibilty (BSR)

CSRに特化したコンサルティング・ファームで、サンフランシスコ、ニューヨーク、パリ、ミュンヘン、広州、香港、北京にオフィスを持っています。

会員制度を採っていて、会員企業は年会費を払うことで各種のリサーチ情報提供やイベント参加といったサービスを受けられる上に、個別コンサルティングサービスの割引が適用されるという仕組みのようです。昨今のCSRへの関心の高まりから、会員企業数が増加しているのかと思いきや、実は以前は400-500社あった会員企業数が現在は約250社弱まで減っているのだそうです。これは、数年前にビジネスモデルを見直して、大企業向けのサービスにフォーカスをシフトしたからということらしいです。

マネージャーのRaj Sapruさんによると、米国の企業より欧州の企業の方が、CSRに関する認識の高さや理解の深さにおいて、10年くらい進んでいるのだそうです。そういえば、FSGでも、フィランソロピーの進化は米国が、CSRの進化は欧州がより先を行っているという話しがありました。

少々雑な議論になりますが、米国型資本主義では、企業は純粋に経済的価値を追求する存在という考え方が強いのに対し、ネオ・コーポラティズム的な協調体制の面影が残る欧州では、企業は社会的存在であり続けたがために、社会的価値の推進を担う存在として、米国では企業でなく財団により牽引する形でフィランソロピーが発達し、欧州ではCSRが発達したということなのだと考えられそうです。

あと興味深かったのは、CSRの変遷についての議論。

① CSRが傍流でしかなかった時代 (~80年代)
     ↓
② 受動的CSRの時代 (90年代)
     ↓
③ CSRと本業の戦略的融和の時代 (2000年頃)
     ↓
④ 社会的価値を積極的に創出するCSRの時代 (現在~)

考えるに、ポーターの言う「戦略的CSR」は、 ③の段階の話。乱暴に言ってしまえば、CSRをどうせやるんだったら、本業のボトムラインにも貢献することをしようよ、って考え方です。それを超えたCSRが本当に今後生まれてくるのか?昨日見たClif Barのようなダブル・ボトムラインを追求する会社が例外的存在でなくなるのか?私自身はちょっとそれはナイーブにすぎる希望ではないかと考えているのですが、一応その可能性についても注目したいと思います。

3. Bridgespan Group

Bain & Companyの系列。オフィスは、ボストン、サンフランシスコ、ニューヨークの3ヵ所で、スタッフは総勢約150人。

ノンプロフィット・コンサルティングの分野で多分最も有名なファームだと思いますが、FSGがジュネーブにオフィスを最近設立するなど、いち早く国際化に取り組んでいるのに対し、今のところは国内市場にフォーカスしています。

FSGは学部生の新卒採用はせず、ビジネススクール卒業生でもコンサル経験者などの即戦力のみを採用するのに対し、ベインなどの普通のコンサル・ファームと同じように学卒もとればMBAの学生もとります。ただ、FSGと違って、まだ米国市民権保持者以外には雇用の門戸が開かれていません。

4. 交流会

他にも、サンフランシスコ市内のカフェで交流会を開き、以下の企業・組織の方々に来ていただき、コーヒー片手に色々な話を聞かせてもらうことができました。

  • Blu Skye: 社会的および環境的価値を追求する企業のための戦略立案などのサービスを提供しています。
  • The Broad Foundation: 教育、科学、芸術の分野でイノベーションを促進することを目的とした財団。
  • Education Pioneers: MBAなどの専門的スキルを持つ大学院生が、小・中・高校に行き、マネジメント改善などを行うというプログラムを展開しています。
  • IDEO: 世界最高といわれるデザイン・ファーム。バリアフリーの公共施設とか環境負荷の低い商品開発など、社会インパクトや環境インパクトを考えたデザインを専門にするスタッフもいます。
  • InsideTrack: 学生向けのコーチング・サービスを提供する会社。
  • Gap: ご存知、アパレルの大手企業。CSRに力を入れています。
  • Good Capital: Social enterpriseのポートフォリオをつくり投資商品として販売するなど、社会起業家の資本調達を助けるための業務を展開。
  • HIP Investor: 経済的利益と社会的貢献のダブル・ボトムラインを追求する企業へのコンサルティングを行っています。CEOのPaul Hermanさんは、私たちの「社会貢献価値」取引所プロジェクトのアドバイザーになってくれています。(彼の前歴がまた華やかで、McKinsey、Ashoka、Omidyar Networkと渡り歩いてきています。)
  • Net Impact: 社会貢献に関心のあるMBA学生およびビジネス・リーダーの組織。米国を中心に世界に広がりつつあります。
  • Room to Read: 創業者ジョン・ウッドの著書『マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった』が最近日本でも出版され話題になったので、ご存知の方も多いと思います。
  • Salesforce.com Foundation: 社会貢献をするというのはそんなに難しいことじゃないんだと企業に呼びかけています。 「自社株式の1%を寄付できませんか?自社製品の1%を寄付できませんか?従業員の時間の1%をボランティア活動に充てることはできませんか?」
  • Social Venture Technology Group: 私たちの「社会貢献価値」取引所プロジェクトのアドバイザーで、Global Social Venture Competitionの創始者の一人でもあるSara Olsenさんにより2001年設立。社会的価値の測定に関するメソドロジーの開発やアドバイスを行っています。