2010年5月30日日曜日
【Living in Peace主催セミナー】投資が社会にもたらすもの~インパクト・インベストメントの可能性~
2009年5月9日土曜日
問題解決のスケールとスピード
オープニングはSKS Microfinanceの創業者にして会長のVikram Akula氏。営利事業化が進展しているマイクロファイナンスの世界で、ビジネスの手法を積極的に持ち込んで近年急成長を遂げているSKSは、業界の風雲児的存在です。トレーニングはマクドナルドのやり方から、支店展開とそのマネジメントはスターバックスのやり方からそれぞれ学び、マイクロファイナンスのビジネスモデルにとって要となるローンオフィサーの業務効率化のためにユーザーフレンドリーなITシステムを導入しています。また、地方の貧困層との接点を有効活用して、マイクロファイナンス以外のサービスや商品をクロスセルする計画もあるそうです。
彼が何より強調していたのが、問題解決のスケールとスピード。曰く、「ユヌス氏のグラミン銀行は現在800万人弱の人にマイクロファイナンスのサービスを提供しているが、このスケールに到達するまでに30年かかった。すばらしい実績だが、彼らマイクロファイナンス第一世代の経験から学んだ我々は、彼らと同じ事をするのではなく、さらに一歩先に進めなくてはならない。今なお世界中にはマイクロファイナンスのサービスが行き届かない貧困層の人々が30億人いる。第一世代のマイクロファイナンスと同じペースでやっていては、100年かかってもこの人たち全てにサービスを提供することなんてできない。そのためにはチャリティ資金にだけ頼っていてはだめで、商業資本も導入し、また業務プロセスやテクノロジーも最先端のものを使いこなさなくてはならない。」
一方で、スピードを追求することの弊害にも配慮が必要としており、特にボトルネックになりそうな要注意事項として、①人材の量と質、②ITシステムのキャパシティとデザイン、③マイクロファインナンスの商業化に対する一般の認識、世論、政治、といった点を挙げていました。
昼食時に出席したMicroPlaceのCFOのPaul Bryth氏によるプレゼンも興味深いものでした。よく対比されるKivaは個人が個人にお金を貸すP2Pのモデルで、利息はゼロなのに対し、MircroPlaceの場合はMFI(マイクロファイナンス機関)が発行する債券を個人が購入するモデルで、ちゃんと利息ももらえます。また、Kivaが非営利組織であるのに対し、MicroPlaceはeBayの子会社で営利企業です。
備忘録として、MicroPlaceに関していくつかポイントを書き留めておきます。
- MicroPlaceが徴収する手数料は、債券額面の1%で、MFIが負担
- 規模の経済が効くビジネスモデルなので、迅速に十分なスケールに到達できるかが成否の鍵
- 今年の第一四半期も取引高増加、第二四半期もさらに加速中で、不況下でも成長を続けている。株式市場などの既存市場が落ち込む中で、利息に魅力を感じて新規ユーザーになるケースが多いと思われる
- MicroPlaceは個人(債券購入者)とMFI(債券発行者)が直接取引できる場を提供するのみで、為替リスクはMFIが、信用リスクは個人が負う(2007年創業以来、今のところ債務不履行の事例はゼロ)
- 利用者は高学歴、高収入層に集中。40歳以下が50%、男性53%
- 現在手がけている発行市場(primary market)だけでなく、流通市場(secondary market)も将来は立ち上げたいと考えているが、現行の規制では不可能。今のところは現事業の拡大で手一杯で、発行市場立ち上げのため規制改正の働きかけなどの具体的な取り組みは特にまだ始まっていない
午後の基調講演は、ACCION Internationalの元CEOとしてメキシコのCompartamosのIPOにも関わったMichael Chu氏。CompartamosのIPOについて批判的な立場を取っているユヌス氏とは、激しい論争を繰り広げてきている人物です。
「貧困という途方も無く大きな問題を、軽減することに留まらず、根絶しようということを本気で考えた時には、拡張可能性(スケール)、持続可能性、継続的イノベーション、そしてスピードを伴った問題解決が必要になる。これら四つの条件を満足させるには、ビジネスというメカニズムを活用することが有効である」というのが、彼の主張の要旨です。
確かに、このスケールとスピードというのは、小さくてもいいからゆっくり良いものを育んでいこうという傾向が強い従来のノンプロフィット的アプローチが不得手とする部分です。
ただ、スケールとスピードのためには、何もかも商業化する必要がある訳ではありません。例えば、ジョンウッド氏のルーム・トゥ・リードは、寄付金に依存して途上国で学校を建設するという従来の非営利のビジネスモデルと何も変わらないものですが、マネジメントやマーケティングにおいてビジネスの手法をうまく導入し、目覚しいスケールとスピードを達成しています。
特に日本では、スケールとスピードを追求するという意識がビジネスにおいても比較的弱いので、社会起業を志す人たちは、より大きなスケールで、より迅速に、しかも本当に根本から問題を解決するには何が必要かを極めて意識的に考える習慣を自らに課す必要があると思います。
2009年5月6日水曜日
『無私』のビジネスでは世界を変えられない
ソーシャルビジネスを手がける企業が上場する株式市場も設立したい。ストリートチルドレンを救済している企業はどこか、医療のソーシャルビジネスはどこか、すぐに探して投資することができる。私の身近にいる学生たちはインターネットを使った市場の創設などを議論している。上場する際には厳正に審査し、本当に適合する企業だけが上場する仕組みを作る。上場はその企業に認証を与えることになるので、知名度向上にも役立つユヌス氏がかねてから提唱しているソーシャルビジネス向け株式市場についての言及もあり、やはりまだまだ一般の認知の低いこのコンセプトを多くの人に知ってもらうための一番のセールスパーソンは、今のところこの人をおいていないな、という思いを新たにしました。
自身が考える社会株式市場のあるべき姿について中々詳細は語らないユヌス氏ですが(彼を直接知る人たちによると、彼自身も大きなビジョンはあるがそれをどうすれば実現できるかという具体的なアイデアはまだ詳しく語れるほど固まっていないのではないかという話です)、
100万ドル出資したら、10年後でも同じ100万ドルが戻ってくる
社会目的の多くの慈善団体や政府機関がある。こうしたチャリティーのお金は通常、戻ってくることはないが、持続可能なソーシャルビジネスへの出資なら資金のリサイクルが可能だこれらの発言は、私たちが現在ブラジルのBM&F BOVESPA(サンパウロ証券取引所)のために草案を作成中の社会株式市場(厳密には、「株式」ではなく、より「債券」に近い資本市場を提案する方向で考えています)のデザインの基本思想と合致していて、意を強くしました。
ただ、微妙に考え方が違うのかなと思うのが、
人間は本来、利己的な部分と『無私』の部分を併せ持つ多面的な生き物だ。ただ、これまで『無私』が経済に組み込まれることはなかった。私の提案はこの『無私』に基づいたビジネスを創造し、資本主義に取り入れることでゆがみを正し、完成形を造り上げようというものだという部分。一見すると私がこのブログを始めた時に書いたこととも近いように思われるかもしれませんが、「他人に何かできるという喜びや満足感」、「他人を変えていくうれしさ」、「人の役に立ちたいという思い」、これらを「無私」(selfless)という言葉で捉えてしまうことには、私はどうしても違和感を感じます。
言葉尻の問題と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、こうした活動の原動力を、崇高な無私の精神と捉えるか、人間が自然に持つ欲求(例えばマズローの言う集団帰属、自己承認、自己実現といった欲求)の一種と捉えるかによって、それらを促進するための方策や制度の設計も根本的に異なってくると考えています。(この点、ビル・ゲイツの「創造的資本主義」のビジョンの方が、私はより共感できます。)
無私の精神とは、外部から与えられるインセンティブの多寡に反応するものではありません。無私の精神を行動原理とする人は、極めて希少だからこそ、尊敬に値します。そういう人たちが世の中にいないわけではないですし、また私たち一人ひとりの心の中にそのような部分が存在しないわけでもないですが、どうすればそうした無私の精神を現状よりも促進・拡大することができるでしょうか?
考えられるのは、道徳教育だとか、ロールモデルだとか、メディアを活用した啓蒙とかいったところではないでしょうか。それらが全く無意味だとは思いません。ただ、これまで人類の長い歴史の中でそうした努力は常に行われてきたのに、無私の精神が人間社会の支配的原理になることはありませんでした。それなのに、こうした取り組みの延長線上に、今後何か世界を変えるほどのインパクトを生む可能性があるとは、私には到底信じることができません。
ユヌス氏は私も最も尊敬する人物の一人ですが、私の知る限り、彼自身人並みはずれた自己顕示欲や自己実現欲の持ち主で、決して無私の人ではありません。「それにもかかわらず」私は彼を尊敬するのではなく、そうした強い欲求を持っている人「だからこそ」、それらの欲求を社会の発展にふりむけて極めて効果的に使っているからこそ、尊敬するのです。彼がいつも挙げるダノンやアディダスなどのソーシャルビジネスの例も無私の心で行ってるわけではないでしょう。
ユヌス氏や他の成功している社会起業家を、無私の聖人君子と捉えてしまうと、ほとんどの人にとって彼らの行蹟は尊崇の対象にとどまり、後に続くなんて「自分には無理」ということになりかねません。
ユヌス氏のような人たちがどのような欲求を持ち、どのようなインセンティブに反応しているのか、どういう弱点や盲点に陥りがちで、それを回避するにはどのようなサポートが必要なのか、そうしたことを深く掘り下げて理解して初めて、彼らのような人材を拡大再生産することが可能になります。
希少にしか存在しない無私の偉人がビジネスを起こすことに頼っていては、根っこのところで世界は変わりません。本当の変化は、人の痛みが分かり、事象の本質を見る目を持ち、目立ちたがりでええかっこしいな、そんな普通の人が動く時に起こります。普通の人が持つ金銭的・物質的欲求を全否定するのではなく、うまくバランスさせながら、それ以外のより向社会的な欲求を刺激し、社会的価値の創出に振り向け、充足し、促進する環境や仕組みをつくることができれば、世界は変わりはじめる。そう考えて今後もどんどん動いて仕掛けていきます。(で、まずはBM&F BOVESPAのためのレポートを仕上げないと。。)
2009年5月3日日曜日
定額給付金基金
某SNSのコミュで、敢えてdevil's advocate役を演じるため、私のごく限られた知識に基づいて定額給付金基金に関する私見を述べてみたのですが、反応がなかったためこちらに転載しておきます。
【良いなと思う点】
- 定額給付金という兎角注目度の高いイシューに絡めて、メディアの力をうまく利用している
- 定額給付金のような「たなぼた」的所得は、寄付などに使うのに比較的抵抗が少ないという人間の心理をついている
- 多くのNPOが集まることでクリティカル・マスをつくり出し、話題性を高めるとともに、寄付者の多様な関心領域にも対応できるようになっている
- 定額給付金みたいな無責任なバラマキ政策(と、私は思ってる)に便乗するのはどうもわだかまりを感じる
- 寄付に使うことで、定額給付金の本来の目的である経済活性化へどのような効果(コスト・ベネフィット)があるのかについてはまったく触れていない(定額給付金の政策意図である景気刺激への即効性が損なわれるのでは?)
- チャリプラが費用として寄付金の10%を徴収すること自体は、私自身としてはありだと思うし、それをウェブサイトにしっかり明記しているのは良いと思うが、それが寄付する人にどれだけちゃんと伝わっていて納得してもらっているのかは不明(米国の寄付ポータルGlobalGivingも同水準の手数料を取っていて、ウェブサイトにもよく見れば書いてあるんですが、それを知らなかった利用者も多くて一部で批判がずいぶんあったので)
2009年3月28日土曜日
ブラジルより - その4
人形製作事業チームの作業風景
- 3月25日(水): 午前中Ashokaを訪問し、ブラジルでFull Economic Citizenshipイニシアチブを統括するAlan Delcourtさんと、今後の提携の可能性について話し合う。 午後は、Raymundo Magliano Filhoさん(元BOVESPA会長、現BM&F BOVESPA Institute会長)と会い、私達のプロジェクトの概要と現在での仮説を説明する。
- 3月26日(木): ①World Business AcademyのSimone Ramounoulouさんとインタビュー。②NESsTのJeniffer Iversonさんと再会し、情報交換&提携体制を協議。③Luiz Maiaさん(元ABN AMROブラジルの会長で、現プライベートイクイティファームのCEO)と、Luiz Roberto Caladoさん(ブラジルの投資銀行の業界団体であるAssociação Nacional dos Bancos de Investimentoのマネージャー)と会い、SSE 2.0のコンセプトについてプレゼンを行い、意見交換。
- 3月27日(金): サンパウロから車で1時間半ほど西に位置するSorocabaという町へ。行き場を失ったシングルマザーにシェルター(宿泊所)を提供し、自立のためのグループ起業支援を行っているLua Novaという団体を訪問。創始者のRaquel da Silva Barrosさんとのインタビューの後、シェルターや様々な起業グループの現場を見学。
- 3月28日(土): 充実しまくりの春休みも終わり。 今日夕方の飛行機でサンパウロを発ち、明日朝にはシカゴに戻る。来週月曜からMBA留学最後の学期の授業が始まる。
シカゴに戻ってから、SSE2.0の制度の草案を設計・提案します。その1で書いたとおり、現在BM&F BOVESPA本体の状況が流動的なため、ちょっと見通しが立て辛いのですが、Celsoさんとの話では、今夏またブラジルを訪れSSE2.0の実行準備を手伝って欲しいと打診されています。
2009年3月25日水曜日
ブラジルより - その3
- 3月22日(日): 翌日のディスカッションに備えて、資料作成に深夜過ぎまで精を出す。
- 3月23日(月): 朝から、Celsoさんと、BM&F BOVESPA Institute(BM&F BOVESPAのCSR活動を担当する組織)のスタッフ、それにドイツから訪れているMichel Alouiさん(新興市場で成功をおさめた元ベンチャー経営者で、現在は自ら創設したBrandStiftungという財団のCEO)とミーティング。これまで得られた知見を共有し、そこから考えられる仮説について話し合う。午後は、①Nelson Spinelliさん(元BOVESPAの副会長。現在はBM&F BOVESPA Instituteの副会長であり、独立系大手証券会社のCEO)と、②Fernando Rossettiさん(Group of Inistituites, Foundations and Enterprisesの事務総長)とインタビュー。
- 3月24日(火): 朝サンパウロを発ち、車で3時間ほど北東に位置するCunhaという町に向かう。環境保全、有機農法の指導、それに有機作物の販売支援を行っているSerra Acimaを訪れ、CEOのMarcelo Michelsohnさんと、財源確保の問題や今後の戦略について話し合う。実際の指導現場にも足を運び、農民の方々から、なぜ有機農法に関心を持ったのか、有機農法に転換するにあたってどのような懸念や困難があるのかなど、聞き取りをする。
Cunhaの農家にて
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一月上旬にCelsoさんと、SSE2.0(寄付プラットフォームであるBVS&Aを第一世代として、より本格的に市場メカニズムを活用した第二世代のSocial Stock Exchange)の構想について初めて話し合った時は、周囲で色んな人が、「あれも考慮しなくてはならない」、「これも検討しなくてはならない」、とレベル感の異なるバラバラなことを言っていて、何が核心の問題で、具体的にどこからどうやって手をつけてよいのか分からず、五里霧中の状態にいるように見えました。
そこで私たちは、①ユヌス氏がああ言っているとか、GEXSIはこう言っているとかは、一旦置いておいて、ブラジルの現状に合致したメカニズムは何かをゼロベースで考える(例えば、株式市場が本当に最適解なのかという根本的なところから検証の範囲に含める)ことと、②提供する側の理屈ではなく、ユーザー側(この場合は、ソーシャルビジネスと出資者)の視点で設計を行うことを提案し、そのために、以下のようなプロセスでプロジェクトを進めることにしました。
- 基本方針の明示化と確認: 今までに無い金融の仕組みをつくろうというのですから、制度設計において考慮しなくてはならないこと(変数)は山ほどあります。ですからまずは、動かない軸足をどこに置くかを決める必要があります。私たちは最初の数回のディスカッションやQ&Aを通して、彼らが何を目的としてこのSSE2.0をつくろうとしているのか、基本理念や方針、最低限これは満たさなくてならないという条件、など暗黙の了解となっていたものをあぶり出して言語化し、話し合いの上で再確認・共有するという作業を行いました。
- 設計変数の洗い出しと優先順位付け: 次に行ったのは、制度設計の肝となる変数は何かを考えて、タスクの全体像を把握し、それに優先順位をつけることでした。リターンやリスクと言った金融商品設計の根幹の話から、管理・監督体制といった話まで、一緒くたにして扱っていては、いつまでたっても話が進んで行きません。ですから、一番最初にどこまで考えるのか、その次にはどのイシューに答えを出して、後回しにして良いのは何かを明確にしました。その上で、重要な設計変数について、それぞれふり幅はどのくらいで、その間にどのようなオプションがあり得るのかを整理しました。
- ソーシャルビジネス側と出資者側の双方のニーズの把握と制約条件の理解: ブラジルのソーシャルビジネスと潜在的出資者を対象に、実際に彼らがそれぞれどの設計変数を重要だと考え、どのオプションを選好するのかを理解するため、簡易コンジョイント分析を含めたオンラインアンケートを実施しました。さらに、今回こうしてブラジルに来て、多様なステークホルダーとのインタビューを通して、オンライン調査から得られた情報への肉付けと、ブラジルのビジネス環境、金融事情、非営利組織およびソーシャルビジネスを取り巻く文化と制度といった背景の理解に努めているというわけです。
- 制度案の提示: 今週土曜日にシカゴに戻ってからは、今回のフィールドトリップで得られた知見を整理するとともに、オンラインアンケートの分析結果と照らし合わせ、それを基に、ソーシャルビジネスと出資者双方のニーズをより良く満たすことができる制度の草案を設計・提案します。つまり、1で確認した事項を軸足に、3で得た情報を使って、2で洗い出した変数について最適化するという思考の流れになります。
- 実行プランの作成: コアとなる金融商品や取引プラットフォームを成り立たせるためには、どのような手順をとらなくてはならないか、また必要とされる付帯サービス(例:会計トレーニング、ビジネスコンサルティング、監査)を提供するためには誰が何をするべきかを提案します。
私も相棒のTも、これだけ画期的で注目度も高いプロジェクトに関わり、ほとんどフリーハンドで思い通りにやらせてもらっているので、とても大きなやり甲斐を感じています。
2009年3月22日日曜日
ブラジルより - その2
- 3月19日(木): ブラジル中でクリーンエネルギーのトータルシステム(発電・蓄電・管理の装置)をレンタルする事業を行っているIDEAASを訪問。創始者のFábio Rosaさんは、Ashoka Fellowの最古参の一人で、『未来を変える80人 僕らが出会った社会起業家』などでも紹介されているのでご存知の方も多いかもしれない。最近できたばかりのトレーニングセンターで彼と会い、今計画中の営利ビジネスのアイデアなどについて話しあう。夜Florianopoilisに飛ぶ。
- 3月20日(金): 農村の活性化のため、有機農業と農村観光(アグロツーリズム)を合体させた事業を行っているACOLHIDAを訪問。参加している農家もまわり、組織の運営や資金繰りについて話を聞かせてもらった。ACOLIDA側に英語が話せる人がいなかったけど、幸い随行してくれたリーダーのThaise Guzzattiさん(因みに彼女もAshoka Fellow)と私の相棒のTがフランス語を話せたため、「ポルトガル語→Thaiseさんがフランス語で通訳→Tが英語で通訳→私が英語で質問→Tがフランス語に通訳→Thaiseさんがポルトガル語で質問」というバベル状態だったが、なんとか役に立つ話を聞きだすことができた。
- 3月21日(土): 早朝サンパウロに帰着。一週間のまとめと来週の計画のため、週末はじっくり考えることに時間を費やすこととする。
ACOLIDAメンバーの農家で振舞っていただいたtoucinho do céuは究極のメニュー入り確実の絶品!
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それにしても、今回のプロジェクトは、「タイが社会株式市場の創設を準備中」という記事を、私がネット上でみかけたことがそもそもの発端でした。
私は一昨年来、友人達と社会貢献価値市場のビジネスプランを書き、様々な関係者と会ったり関連文献の研究を続けてきていて、(ちょっと大口を叩かせてもらえるならば)「この分野については自分よりよく理解している人間は世界中でもそうそういないだろう」くらいの自負を持っていたので、是非ともこのタイでの動きに何らかの形で関わりたいと考えました。そこで、記事に名前が出ていたアジア開発銀行、GEXSI、それにタイのThammasat UniversityとThe Population and Community Development Associationに、これまで私がこの分野に関連してやってきたことを説明したメールと履歴書をダメモトで送ってみました。
すると、GEXSIのCEO(当時)のMaritta Koch-Weserさんから返事が来て、「タイの案件はまだまだ関係者間の話し合いが始まったばかりで、ビジネスコンサルタントの手助けを必要とする段階ではないけど、ムハマド・ユヌス氏が提唱しているような本格的なソーシャルビジネス向け株式市場をつくる動きがブラジルで進行中なので、そちらを手伝ってくれないか」という願ってもない提案をいただき、Celso Greccoさんに紹介されました。
私としては、今まで考えて温めてきたアイデアを実践に役立てることができるまたと無いチャンス。喜び勇んで、いつもこの手のプロジェクトで組んでいる友人のTに声をかけたところ、もちろん参加するとの即答。
早速、予算獲得のため色々と動き回った結果、BM&F BOVESPA からブラジル国内での視察旅行の全経費を、そしてうちの学校のLevy Social Entrepreneurship Labからシカゴ-サンパウロ間往復の渡航費およびサンパウロでの滞在経費を、それぞれ支給してもらうことができることになりました。
2009年3月19日木曜日
ブラジルより - その1
前回のエントリーで書いたとおり、今ブラジルに来ています。
- 3月16日(月): 期限ぎりぎりでValue Based Leadershipの授業のtake-home examを提出し、夕方あわただしくシカゴを発つ。
- 3月17日(火): 朝サンパウロ到着。午後BM&F BOVESPAでミーティング。ブラジル側チームと、この2週間の予定確認および期待する成果についての意識のすりあわせをする。
- 3月18日(水): 午前中休息。午後は①Instituto de Estudos do Trabalho e Sociedadeというシンクタンクのスタッフでマイクロファイナンスを専門とする方、②社会起業家を育成するNESsTのスタッフ、③Fundação Getulio Vargasのビジネススクールの教授、の3人とインタビュー。夜、Porto Alegreに飛び、深夜過ぎにホテルにチェックイン。
という具合に、忙しく走り回っています。
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さて、一体何しにブラジルに来ているのか、ちょっとこのプロジェクトの背景について改めて説明しときましょう。
一言でいえば、コンサルティングプロジェクトで、クライアントはBM&F BOVESPA(サンパウロ証券取引所)。昨年5月、株式市場のBOVESPAと先物市場のBM&Fが合併。世界屈指(ラテンアメリカでは最大)の規模を誇る証券取引所です。
2003年、BOVESPAは、ありきたりの寄付活動に飽き足らず、もっとイノベーティブでユニークな形で社会貢献をできないかと考えていました。そこに、CSRやソーシャルマーケティングのコンサルに特化するAtitude Marketing SocialのCelso Grecoさんが、「社会株式市場(Social Stock Exchange)」をつくることを提案し、BVS&A(Environemntal and Social Investment Exchange)が創設されました。
ところが実際には、BVS&Aは株式を扱うわけではなく、その本質は、Globalgivingなどと同じ寄付プラットフォームです。一般投資家が理解しやすい株式市場の用語を使い、さらに本物の証券取引所が手がけているということで、Newsweekを始め一部では「世界初の社会株式市場」とも呼ばれていますが、Celsoさんは、BVS&Aのコンセプトをさらに発展させて、本当の意味での社会株式市場をつくりたいと考えていました。
そんな中、2006年のノーベル平和賞受賞スピーチなどで、ムハマド・ユヌス氏がソーシャルビジネスのための社会株式市場設立を提唱し、それを推進するため、シュワブ財団やベインなどの支援によって、ダボスの世界経済フォーラムでGEXSI(Global Exchange for Social Investment)が設立されます。こうしたグローバルな追い風もあって、BOVESPAはCelsoさんのアイデアに賛同し、ゴーサインが出ました。
しかし、極めて抽象的なコンセプトとしては多くの人が魅力を感じているけども、どうすれば実際に機能する社会株式市場がつくれるのか、具体的なデザインを考え始めると疑問が山積み。だれもやったことがないし、だれに聞いても答えが出てこず、これはユヌス氏とて同様。
抽象論を離れ、具体化に向けた取り組みとして最も先頭を走っているのが、英国のMark Campanale氏やPradeep Jethi氏が設立準備を進めているSocial Stock Exchange Ltd.だと思います。社会株式市場の実現可能性を探るため、ロックフェラー財団から50万ドルもの支援を受けて、本格的な市場調査を行いました。
一方、BOVESPAは、昨年のBM&Fとの合併以降、まだリーダーシップの移行などが続いていて、なかなか調査だけのために大きな投資に踏み切れる状況ではありません。そんな折も折、私たちがGEXSIを通してCelsoさんに紹介され、お互いの関心・ニーズが見事に合致して、今回のコンサルティングプロジェクトが始まることになったというわけです。
2009年2月27日金曜日
オバマ政権が大統領直属のOffice of Social Innovationを設置
The Chronicle of Philanthropyの"Crafting a plan for Social Innovation"という記事(無料での記事閲覧はこちら)で、オバマ政権になってホワイトハウス内にOffice of Social Innovationが新たに設置される動きになっていることを知りました。
オバマ氏は選挙活動中から、Social Investment Fund Networkの創設やCorporation for National and Community Service内にSocial Entrepreneurship Agencyを設置することを提案するなど、市民セクターの重要性について何度も言及していましたが、どうやらノンプロフィットや社会起業家を支援するための大統領直轄部署が誕生することになりそうです。
その機能や実態についてはまだ公式な発表がありませんが、政権移行の準備チームでthe Innovation and Civil Society subgroupに加わったメンバーたちの話によると、
- 実績を挙げている非営利組織・社会起業家への政府資金投資
- 非営利組織・社会起業家と政府の連携体制の強化
- ボランティア活動の促進のためのITやメディアの活用
- ソーシャルビジネスや社会起業への支援
- ソーシャルイノベーションの活性化のための政策立案
などを含め、従来のノンプロフィットやフィランソロピーの枠を超えたソーシャルイノベーションを促進するためのインフラ・環境整備に向け、抜本的な方策が検討されているようです。
Innovation and Civil Society subgroupのCo-Chairを務めたMichele Jolin氏が、Stanford Social Innovation Reviewの記事や、Echoing GreenのPresidentであるCheryl Dorsey氏とのインタビューでも語っているように、技術革新とソーシャルイノベーションが車の両輪ともいうべき役割を果たして、社会・経済の発展と問題解決の原動力となって行かなくてはならないという考え方が、オバマ政権の基本思想の一つとなっています。
もちろん、政府による市民セクターへの関与を手放しに歓迎することはできませんが、ソーシャルイノベーションが果たす役割に関する一般の認識を向上させるには、大きな効果が期待できると思います。
英国もGordon Brown政権になってから、ソーシャルビジネスの支援環境の整備のために盛んに手を打っており、Social Stock ExchangeやSocial Investment Bankを創設するための準備が本格化しています。オバマ政権に代わって、米国でもますますソーシャルイノベーションのスピードが加速していきそうです。
2009年2月3日火曜日
Global Federation of Social Investment Exchanges
この会議を主導しているのが、ロックフェラー財団のAntony Bugg-Levineさんと、南アフリカのSASIXのCarol Tappendenさん。ご両人とも個人的に面識があるのですが、このイシューにおける素晴らしいthought leadersです。
でも、こういった会議を今開く実質的な意義については、正直どうも疑問を感じます。本当の意味でSocial Investment Exchangeと呼べるworkableなモデルが(多分唯一の例外であるTriodos Ethexをのぞいて)まだ存在していないのに、まずGlobal Federationをつくってスタンダードやら協力体制やら政策やらを話し合うことにどれほどの価値があるのでしょうか。
最適解が何なのか誰も見当もついていない現段階では、各国各様に現地の事情に適合したモデルを、試行錯誤して作り上げていくことの方が、よっぽど喫緊の課題だと思うのですが。相互の情報交換は重要でしょうが、無駄なbureaucracyをつくる結果に終わらないでほしいものです。
ただ、この会議のウェブサイトのResourcesのページは、最近の社会資本市場に関する資料がよくまとまっていて、ご関心のある方にはオススメです。
2008年11月17日月曜日
Net Impact Conference
11/13-15にフィラデルフィアで開催されたNet Impact Conferenceに行ってきました。
ビジネススクールに通う学生の中で社会問題やノンプロフィット活動に関心のある人たちがクラブを作り、各校のそうしたクラブのネットワークとして1993年に生まれたのがNet Impactです。今ではビジネススクール以外の大学院生や学部生、それに社会人まで加わり、メンバー数は1万人以上にのぼります。支部も世界中に広がっていて、日本にも支部があります。
日本ではビジネススクールというと、なんだか個人的な金儲けや栄達にだけ関心がある人が行く所で、社会問題の解決や公共善の増進などとはやや縁が薄い存在なんていうイメージで受け取られがちです。しかし実際には、ビジネススクールの学生のこうしたイシューへの関心はとても高く、ケロッグでもSocial Impact Club(Net Impactの支部)はConsulting ClubやFinance Club等と並び、学内最大規模のクラブの一つになっています。
フィラデルフィア土産、Liberty Bellのミニチュア
今年のテーマは“The Sustainable Advantage: Creating Social and Environmental Value"。Room to ReadのCEOのJohn Woodや、World Wildlife FundのCEOのCarter Roberts等による基調講演のほかに、
- Corporate Social Responsibility
- Energy and Environment
- International Development
- Social Impact Finance
- Social Entrepreneurship
という5つのトピックに関連した多種多様な分科会が開かれました。分科会の数が多すぎて、全てを覗くことはとてもじゃないけど不可能ですが、私が参加した中から感想をいくつか。
- 一番印象に残ったのは、Mission MeasurementのCEOのJason Saulさんによるワークショップ。彼は、私が現在board memberとして参画しているCenter for What Worksのco-founderでもある。「単に漠然と社会のためになることをするというCSRは、もはや過去の遺物("CSR is dead")でしかなく、今後はCEOが追っている経営指標に対してどのような効果があるのかを示すことができるようにならなくてはならない」という彼のメッセージは、今まで聞いたどんなCSRに関する話よりも私の腑に落ちた。ポーターの言う「戦略的CSR」を、抽象論からオペレーショナルなレベルに落とし込むためには、彼らが勧めるようなファクトベースのマネジメントアプローチが必要になるのだろう。
- ソーシャルビジネスを制度面で支援する動きが、加速度的に活発になっている。Low-profit Limited Liability Company (L3C)という新しい法人形態が今年の4月にバーモント州で初めて採択され、非営利組織でなくても財団からのProgram Related Investment (PRI)が受けられるようになった。B Labを中心とするソーシャルビジネスの連合体もプレゼンスを高めていて、B Corporationの法制化を目指している。 近年政府がソーシャルビジネスに対する積極的な支援策を次々と打ち出している英国に比べ、米国は制度面でやや出遅れている感があるため、オバマ新大統領に対する期待は高い。
- 今年のオーガナイザーがファイナンスに強いWharton Schoolだったせいもあってか、昨年よりややファイナンス絡みの話題が多かった気がする。
- 社会資本市場への関心が、昨年より格段に高まってきているのを感じた。ムハマド・ユヌス氏が2006年ノーベル平和賞の受賞スピーチや『Creating a World Without Poverty: Social Business and the Future of Capitalism』で言及したことによる効果が大きいようだ。彼が言っていることは特に画期的でもなんでもないが、影響力は絶大。B Labの創始者のJay Coen GilbertさんやBart Houlahanさんと話をした時に教えてもらったMission Marketsなど、新しい取り組みがそこら中で始まっている。ただ、みんなソーシャルビジネスのための株式市場を考えている。個人的には、「ソーシャルビジネスに注目するあまり非営利組織のニーズを見過ごしてしまっているが、それでよいのだろうか」、「ソーシャルビジネスにしても本当に株式市場が最適解なのだろうか、株式以外の資本の方が少なくとも現段階では有効なのではないか」、という疑問が残る。
- Wharton Social Stock Exchangeというシミュレーションに参加したが、完全に期待はずれ。シミュレーションのインターフェースはなかなか洗練されているが、単なる普通の株式市場に、企業活動の社会的側面に関するニュースが流れてきて、それに市場参加者がどう反応するかをみるだけのもの。肝心な「既存の資本市場で扱うことができないでいる社会的価値という外部性をどう内部化するか」という問題に関して全く答えておらず、"Social Stock Exchange"の名に値するものではないと思った。
2008年3月2日日曜日
Information market as a social valuation mechanism
There has been a significant increase recently in the level of interests across the social sector in the possibility of adopting a market mechanism. Many have been trying to emulate the system of stock exchange, but they have been failing so far to achieve the most important purpose of adopting such a market mechanism – to allocate finite resources to their most valued use.
This is because, in my view, they take stock exchange system too literally without recognizing the critical differences between social values and economic values and the needs to adapt and modify the existing market mechanisms to this unique context.
A million-dollar question here is how to assess the non-economic values created by social organizations in the absence of price mechanisms since the society as a whole needs to collectively assign some value to different social organizations’ activities in order to be able to prioritize resource allocation. The social sector has invested enormous money and efforts in elaborating social impact evaluation methodologies and metrics, but I believe that the existing utilitarian approaches will never be sufficient.
I think the way forward is to disaggregate the functions of a market into two, that is, a valuation mechanism and a resource allocation mechanism. This is essentially a two-step system that works in a similar manner as TV advertisement market does. As is the case with the services provided by social organizations, those who benefit from TV programs (audience) are not same as those who pay for TV programs (sponsors). The TV producers succeeded in capturing, albeit imperfectly, the value of their programs using mechanisms such as a gross rating point (GRP), and made it possible for sponsors to allocate their money efficiently to the air time blocks with various valuation.
There already are emerging social investment platforms such as GlobalGiving and KIVA, that can work as resource allocation mechanisms in the social sector. What is lacking, however, is a feasible and credible valuation mechanism that can address unique difficulties of dealing with social values, including their public-good nature, impossibility of linear aggregation, and incommensurability. Information markets such as the Iowa Electronic Market and the Intrade appear to have a great potential in solving all.
When I shared this idea with Sara Olsen of SVT Group, she said that socialmarkets is now planning to experiment a similar idea. No one else in the social sector seems to have seriously tried to use an information market as a valuation mechanism and link it to a social investment platform. The obvious problem with using information market as a social valuation mechanism, however, is that there is no exogenous, observable measurement according to which prediction market participants' bets are rewarded or punished, and ultimately validate the accuracy of information market's results.
2008年2月18日月曜日
Kivaの売切御免
しっかりした運営方針を持つ非営利団体がキャパシティ以上の寄付を断るというのは、実はそれほど珍しい事ではないのですが、注目を集めているKivaだけに話題性が高いということで記事になったのでしょう。
これを読んだときは、「さすがKiva、資金供給が激増しているからと言って、安易にパートナー選択の基準を緩めたりせずに真面目な良い仕事をしてるんだな」程度の感想を抱いただけでした。
ところがその後、Financial Timesでもフィランソロピーに関する連載コラムを持つSean Stannard-StocktonのTactical Philanthropyというブログで、この話題に関する大変興味深い議論のやり取りが展開されています。
詳細な内容にご関心のある方はTactical Philanthropyの方をご覧頂くとして、主な論点としては以下の二つ。
- 「売切れにするのではなく、他の類似サービスに紹介する義務があるのではないか」 ← 証券取引所ではこのような規則があり、実際に非営利の世界でも、GlobalGivingでは必要に応じてそのような紹介を行っているそうです。
- 「サービスへの需要が高くて売り切れるのならば、市場論理に従い価格調整によって需給のバランスを取るということも一考に値するのではないか。つまり、貸し手の資金が100%借り手に渡る現状から、10%をKivaがサービス料として徴収し、それをボトルネックとなっているパートナーMFIの開拓のための資金に充てるということはできないか」 ← これに対しKivaは、「10%のサービス料では焼け石に水だし、第一P2Pの根本価値を損ねる」と回答しています。
この一件は私が友人たちと取り組んでいる「社会貢献価値」取引所の設計にも、大切な示唆を与えてくれます。
何よりも、Kivaユーザーのコメントからも明らかなように、
- 善意の実質的な結果をその提供者に伝達する仕組み
- 人々の善意を一回毎の使い切りにするのではなく、循環できる仕組み
に対する需要がいかに大きいか、あらためて認識する良い機会になりました。
2008年2月11日月曜日
ビジネスとしてのマイクロ・ファイナンス
- 日収$2以下で暮らしている人は全世界で約30億人。内、18億人は生産年齢だが、現在マイクロ・ファイナンスのサービスを受けている人口は1.2億人程度。このため成長余地は大きいと考えられ、また先進国の銀行では考えられないほど利益率も高いことから、ビジネスチャンスに関心を持った金融界から大量の資金が流入してきている。
- CGAPの2004年度調査によると、海外資金によるMFIへの投資のうち、69%が債権、23%が株式、残りが信用保証の形式を取る。
- MFIのローンの証券化、流通市場創設への動きが現在進行中。
- 資金供給過多に対して、MFI側のキャパシティが追いついていない。特にボトルネックになっているのは、マネージャー人材。リテール銀行の出身者は大歓迎される。ローンオフィサーの人材獲得競争も深刻。
- 30億人の貧困層全てが本当にマイクロ・ファイナンスを必要としているかは、議論の余地あり。これまでマイクロ・ファイナンスが主に対象としてきたのは、貧困層の中では中~上位の層。絶対貧困層は金融サービスのメリットを享受できる状態ではなく、その前にまずは従来型の開発援助(教育、保健衛生、雇用訓練、等)が必要と考える人も多い。
- また、彼らに実際にマイクロ・ファイナンスを提供することが可能なのかどうかも不確か。これまでマイクロファイナンスは、農村地域に金融サービスを提供することに貢献してきたが、主な成功例はどれも過密人口国。最貧困層の住む遠隔の過疎地には、コストがかかりすぎるため到達できていない。ITの活用に注目が集まっているが、携帯電話網等のインフラの無い地域ではITも役に立たない。
- マイクロ・ファイナンスの貧困削減効果について語るときに、ローンによって貧困層の起業を助けることで収入源を増やすというロジックが使われることが多いが、実際に起業資金に使われるケースは少数。
- ただ、起業資金以外に使われるローンには貧困削減効果が無いと考えるのは誤解。冠婚葬祭や緊急時(稼ぎ手の死亡、災害、事故、病気、盗難、etc.)、その他出産、子供の進学、住宅購入等の一時的に大きな支出が必要な時に、資金源がないために闇金融に頼るしかなくてさらなる困窮に陥っていた人々に、新しく健全な資金源が提供されることだけでも、大きな意義がある。事業の運転資金も重要。
- 基本的なビジネスモデルは、低金利(慈善資金を含む)で資金を調達し、闇金融よりは低く銀行よりははるかに高い金利で貸し出すことで利益を出す。費用構造はほとんどが営業費用で、これも銀行よりははるかに高い。低賃金で一生懸命働くローンオフィサーの存在は大きい。ローンオフィサーの業務効率と、ポートフォリオの質(不良債権の比率)は、MFIの業績を左右する最大の要因。
- 貸し倒れ率1%と言った数字が一人歩きしている観があるが、鵜呑みは禁物。不良債権計上を遅らせたり、返済期間繰り延べを行って帳簿上の貸し倒れ率を低く抑えているだけという場合もある。また、グループローンでは一人が返済できなくてもグループの他のメンバーが返済することで、貸し倒れ率は低くなるが、返済できなかった個人への過度のプレッシャーにより社会問題になることもある。ただ、そうは言っても、全般的にMFIの貸し倒れ率が一般の銀行に比べ圧倒的に低いという事実は変わらない。
- MFIの強みはリテール、特に地方・貧困層への浸透力。銀行とマイクロファイナンスの間で相互参入が進み、境界が曖昧になる中で、競争は激化しており、強みを伸ばしていかないと生き残れない。プラハラードの『ネクスト・マーケット 「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略』でも紹介されているICICIは、銀行とMFIのそれぞれの強みを活かし分業体制を築いた好例。
- 営利事業化が進行中。「慈善資金に頼っていてはサービス拡大に限界があるため、持続性を確立し、事業拡大を図るには営利事業化は必然」という見解がある一方で、「貧困削減の目的をm見失っては、マイクロ・ファイナンスが単なる高利貸しの美名になってしまう」として警戒する人たちも多い。
- 現在のところ、営利MFIが非営利MFIよりも効率的、または利益率が高いといった主張には、必ずしもデータによる裏付けが無い。
- 担保を持たない貧困層のため、社会的信用を担保にするグループローンの手法が有名だが、最近は個人ローンに重点を移すMFIの例が増えている。個人ローンは金額が通常グループローンに比べ高いため、MFIの業績には好材料だが、一方で貧困削減という観点からはグループローンは今なお重要。
- ソーシャルセクターとしては例外的にデータの標準化や情報開示への取り組みが進んでいるが、貧困削減効果に関しては「ローンあたりの金額」以外に標準的に比較可能なデータが無い。
- 現在ではほとんどのMFIがローンだけでなく、貯蓄商品を提供している。また、送金サービスも需要が高く成長している。
- マイクロ・インシュランス(低所得層向け保険商品)は、貧困削減効果が高いとして注目はされているが、いまだビジネスモデルとしては未発達。つい先日、ゲイツ財団が、Opportunity Internationalの運営するMicro Insurance Agencyに2400万ドルの支援を行うことが報道され、これが起爆剤となることが期待されている。
結論としては、これまで自分の中で持っていたマイクロ・ファイナンスに関する「神話のベール」のようなものを取り払い、客観的にビジネスモデルと業界構造を理解することができたのが最大の成果だったと思います。
2008年2月10日日曜日
マイクロ・ファイナンスの授業
秋学期は、私の関心領域から遠い数字系の必修科目(アカウンティング、統計、ファイナンス)でストレスをつのらせていたのに比べ、今学期は授業も面白いものが多くて好調です。自主的に進めている「社会貢献価値」市場プロジェクトの方も順調に動き始めているので実際の仕事量は多いのですが、キツイ生活があまり精神的負担になっていません。
マイクロ・ファイナンスは、そんな今学期お気に入りの授業の一つ。半学期分のコースなので今週で最後でしたが、5週間にわたる週一回3時間の授業が期待以上に内容の濃いもので、とてもためになりました。
教鞭を取るのはPaul Christensen教授で、彼はShoreCap Internationalというマイクロ・ファイナンスに特化したプライベートエクイティファームの現役COOでもあります。(因みにShoreCapの親会社のShoreBankは、アメリカのコミュニティバンクの先駆で、ムハマド・ユヌスが彼のマイクロクレジットプログラムを銀行化してグラミン銀行を立ち上げる際に、バングラデシュまで招かれてアドバイスをしたことでも有名。)世界中のMFIに投資し育成してきた彼の実地経験と豊富な知識に基づいた講義は、今大きな転換期に差し掛かっているマイクロ・ファイナンスという業界の構造や、問題と可能性について体系的・効率的に理解するには最高でした。
2007年12月11日火曜日
Ripple Project
I recently learned about this new open-source system called the Ripple that seems very promising for overcoming the kind of problems LETS had. The system is symple and robust. It is basically a financial version of LinkedIn, or a cyber version of traditional, informal value transfer system called hawala or hundi. Of course the Ripple is far from perfect, but I have a distinct feeling that this idea can lead to a very exciting and concrete innovation.
I am particularly interested in its potential application in international development. Combined with P2P mobile banking systems that are taking off in many developing countries, this can significantly help mirofinance institutions reduce their high transaction cost, especially related to due diligence. The result can be a next major innovation in micorfinance after salary-based lending and Kiva.