オバマ政権になってホワイトハウスにOffice of Social Innovationが新設される動きになっているという話題を、以前にこのブログでも取り上げましたが、先週これについて正式な発表があり、Google.orgのSonal Shah氏がこの新しい部署を率いることになりました。(The Chronicle of Philanthropyの記事によると、国内政策全般の調整を行うDomestic Policy Councilの下に設置されるそうなので、前回書いた「大統領直属」って言い方はちょっと間違いでしたね。)
では日本は、というと経産省がソーシャルビジネスの振興に取り組み始めています。先月ソーシャルビジネス全国フォーラムを開催し、「日本ソーシャルビジネス宣言」なるものを採択しましたが、これからどうなりますことやら。経済産業省が実施しているソーシャルビジネス/コミュニティビジネスの推進施策ってのを見てても、決して意図が間違ってるとは思わないけれど、どうもいかにもいつものお役所仕事の延長線上で、無難で実効性のないことにお金を使ってるなという印象を受けます。少なくとも、どうしたら本当に日本でソーシャルビジネスが活性化されるのか、真剣に深く考えた結論として出てきた施策とはちょっと思えないんですよね。
まぁ、でもあまり経産省のやってることに文句をつけても仕方ないのかな、という気も。 ソーシャルビジネスをリードする側が着々と実績を積んで実力をつけ、ソーシャルビジネスの発展には何が必要か、行政が担う役割は何か、ということをしっかり提言するようになるまでは、下手に官僚に主導権をとられてもうまくいかないと思うので。
日本では、特に社会福祉や公共善といった話になると、「お上」に何かやってもらおうという意識がどうしても強いように思いますが、ことソーシャルビジネスや社会起業に関しては、行政の力をうまく利用できる実力をつけるまで、つかずはなれずの微妙な距離感(arm's length relationship)を保つ必要があると思います。
因みにこれは、メディアとの関係についても言えることじゃないでしょうか。もちろん、社会起業家やソーシャルビジネスは、メディアをうまく活用する必要があることは言うまでもありません。ただ、日本の「社会起業」とか「ソーシャルビジネス」というものを語っている側の間でもそれが何のことを指しているのか不明瞭で、まだ内実が伴わないうちに下手に注目だけ集めると、有象無象が群がり収集のつかないことになってしまう危険があります。
アメリカの例を見ていても、メディアが注目し始めた頃には、しっかりとした実績をもった成功例が数多くあり、明確なビジョンを持ってメッセージを主体的に発信できる態勢がある程度整っていましたが、日本ではまだ成長段階がそこまで至っていませんので、あまり世間の注目を集めることに躍起にならない方がいいでしょう。
ましてやアメリカに比べて、財団などのサポート基盤や、民主導のソーシャルイノベーションや起業家精神に関する一般の理解といった環境が整っていない中で、日本のソーシャルビジネスには、より戦略的に業界全体を育てていくという思考が求められると思います。
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1 週間前
アメリカはチームで行うから、縦割りとかなくていいですよね。官僚に対して強いし。
返信削除”行政に役割を提言する”が興味深いです。
返信削除少々遅くなっても基盤のしっかりしたソーシャルビジネスが育って欲しいです。
そうですね、時間をかけても地道に実績を積み重ねていくことが、後々の堅実なビジネスモデルの構築に繋がっていくと思います。ソーシャルファイナンス以前に慣例的なファイナンスの文化の醸成されていない行政主導では、革新的に根本に働きかけるのに限界があると思います。特に農林水産業の分野では法律や規制の段階で市場参入自体が困難ですが、既存の枠組みを実績を積み上げることで押し広げて、投資家、メディア、ひいては三権に働きかけられればと考えています。長くなってしまいましたが、コンペティションの優勝、おめでとうございます!:)
返信削除> scorpioさん
返信削除まぁ、アメリカにはアメリカの抱える問題もたくさんありますからね。日本の実情に即して何が最適解か、考えていきたいものです。
> あまがえるさん、U-keyさん
私の言葉が足りず誤解されたかもしれませんが、私はスピードは大事だと思っています。
孫子曰く「兵は拙速なるを聞くも、いまだ巧久なるを睹ざるなり」。
ただ、状況を見て「急がば回れ」いうことも必要で、そのためには戦略的な視点が不可欠だと思います。