2009年7月20日月曜日

アキュメンファンド

7月17日 (金) 午後 【ケニア】

アフリカを援助や慈善の対象としてではなく、ともにビジネスをするパートナーとして捉えなおす動きについては、このブログでもこれまで何度か紹介してきた(例えば、『山師がアフリカを救う?』、『Africa Open for Business』)。この潮流がどれだけ本物なのかを、自分の目で見て肌で感じて見極めたいというのが、今回アフリカを訪れることにしたそもそもの動機だ。(因みに、アメリカで購入してこちらにも持ってきて読んでいる『Africa Rising』という本の訳書が、『アフリカ 動きだす9億人市場』という邦題で英治出版から近日発売されるので、興味のある方は是非読んでみてください。)

しかし、単にアフリカの国を周って各国のビジネス事情を概観するだけでは、どうも問題意識が散漫になってしまいそうなので、自分は具体的にどうやって関れるのだろうかと考えてみた。その結果、現在の仮説としては、Robert FoglerさんのThousand Hills Venture Fundみたいに、アフリカの新興経済への投資の機会を日本の投資家に提供するファンド、それも社会的波及効果の高いベンチャーに絞って投資するファンドができないかと考えていて、その下調べという位置づけで、色々な人の話を聞いていくことにした。

今のところ全くの空想に過ぎないのだけれども、資本調達についてはMicroPlaceのモデル、そして投資のアプローチはAcumen Fundのやり方が、既存の例の中では頭に思い描いているイメージに最も近い。うまく育てれば、これを中核にして、以前から考えている本格的な社会資本市場のプロトタイプをつくることも可能ではないか。

そのAcumenの東アフリカ事務所がナイロビにあるので、Portfolio AssociateのAmon Andersonさんに会い、投資プロセスやビジネスモデルについて詳しく話を聞いた。(英語ですが、その時のメモはこちら。)

個人的には、特に興味深かったのが以下の4点。
  1. 資本調達: これまでは、財団や富裕層の個人による寄付(一口US$10万から)を財源としてきたが、経済的リターンを伴う営利資本の導入を開始している。今後は、小口の投資・寄付も狙うことを検討中。 
  2. バリューアップ: Acumenは、途上国のソーシャルビジネスの投資案件を選別する際に、ベンチャーキャピタルの手法を本格的に持ち込んで、ビジネスポテンシャルを厳格に審査する選球眼において、既存のプレーヤーと一線を画し、ここまで評価されてきた。それに比べて、ベンチャーキャピタルのビジネスモデルにおいてもう一つの重要な付加価値の源泉となる、投資先企業の価値最大化のための経営支援においては、実力(人材、ノウハウ)が十分に育っておらず、喫緊の課題として認識されている。
  3. 投資家へのフィードバック: Google.orgやSalesforce.comとの協力により、効果測定の指標開発とそれを管理するアプリケーションを開発してきたが、そうした情報を投資家に効果的にフィードバックし、さらなる寄付や投資につなげる仕組みについてはまだ手付かずになっている。
  4. フランチャイズ: 今後の国際展開の一つの方策として、フランチャイズモデルを検討中。
Amonさんも私の取り組みに強い関心を示してくれ、様々な強みを持ち、お互いに刺激を与え合い、また補完できるプレーヤーが現れることにより、この「社会投資」というインダストリーを育てていかなくてはならないという認識において、意見が一致した。

2 件のコメント:

  1. あまがえる2009年7月20日 21:02

    社会起業育成基金は興味深いです。

    投資家の配当についての関心はもとより、
    公共に役立つビジネスが育っていく事に喜びを見出す投資になることも重要だと思います。

    短期的または利己的利益追求に走らない策も興味深いです。

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  2. > あまがえるさん

    これまでの「社会投資」の仕組みのように、社会的リターンを曖昧なままにしたまま、経済的リターンが純粋な営利ファンドより低くなることの言い訳に使っていては、進歩は望めないのでしょうね。

    ちゃんと客観的な形で社会的リターンを示し、投資家の人が経済的リターンだけでなくこちらも追求するようしむけるようなインセンティブを設計できるかが、大きな鍵になると考えています。

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