2010年5月30日日曜日

【Living in Peace主催セミナー】投資が社会にもたらすもの~インパクト・インベストメントの可能性~

先月の慶応ビジネススクールでの講演に続いて、昨日はLiving in Peace主催のイベントで、インパクト・インベストメントについてお話をする機会を頂きました。

雨の中、70名近くの方にご来場頂き、本当に感謝。また、会場のキャパシティの都合で、早々に参加申し込みを締め切らなくてはならず、今回ご参加頂けなかった方々には申し訳ありませんでした。

今回は社会人の参加者が中心で、出だしでやや緊張してしまいましたが、ディスカッションは興味深い視点や質問がたくさん出て、私にとってもよい勉強になりました。イベント後の懇親会でも様々な方とお会いしてお話しをすることができ、楽しかったです。

プレゼン資料はこちらにアップロードしておきましたので、ご興味のある方はご覧ください。(英語ですが…)

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2010年4月23日金曜日

社会起業家を本当の意味で応援するためには、甘やかさず、きっちり評価すること


昨年、『勝間和代のクロストーク』で「日本の社会起業家を応援しよう」と勝間さんが提案されていて、それに寄せた私のコメントベストアンサーに選ばれましたので、以下に抜粋・再掲しておきます。

  社会起業家を本当の意味で応援するためには、甘やかさず、きっちり評価することこそが一番大事だと思います。 

  非営利組織と営利企業の両方で働いた経験から、私自身は、社会起業の最大の意義は、社会問題の解決において結果を出すことにフォーカスし、そのために経済的・社会的に持続可能な仕組みをつくりあげることだと考えています。つまり、社会起業家が従来の非営利組織と異なる点は、その結果志向と持続可能性であるし、そうあらねばならないということです。 

  従来の非営利組織は、極端なことを言えば、「いいことをしている」という雰囲気をつくり、ドナーやボランティアを自己満足させることさえできればつぶれることがありませんでした。そこには、より多くの人に、より満足してもらえるサービスを提供して、迅速かつ効果的に社会問題を解決するために、絶えずイノベーションを起こして行くインセンティブが働きにくい構造になっています。 

  一方、営利企業は、社会的責任だとか従業員の満足だとか言ったところで、結局は経済的利益を生まなければ倒産するしかありません。 

  同様に、社会起業家も、動機や理念の崇高さだとかマーケティングの巧さではなく、社会問題の改善・解決という結果で厳しく評価される必要があります。結果を出している社会起業家は、より多くのリソースを使えるようになってさらに成長でき、そうでない者は退出せざるを得ない、そういう信賞必罰の仕組みをつくり出すことこそが、長い目で見れば社会起業家を育成するための最も有効な方法だと思います。

  それを、官庁主導で必要以上に優遇しては、健全な自助努力や工夫を阻害してしまいます。また、結果も伴わないうちに、マスコミ主導で社会起業家というものを無思慮にはやし立てるのも危険だと考えています。(僭越ながら、このあたりについては私のブログhttp://su.pr/1F0mhHでも書いていますので、よろしければご笑覧ください。)

  優れた社会起業家を応援することは大事ですが、弱い(=経済的自立性が低く、結果も出せない)社会起業家も一緒くたにして応援してしまっては、有象無象が群がる新しい既得権益をつくりだしてしまうだけです。

  そういう意味で、私自身は、 (社会起業家に限らず)普通の起業家がもっと起業しやすい政策環境、 社会起業家を結果で公正に評価する仕組み、 投資家が社会起業家とリスクを共有できる資本市場の仕組みをつくることこそが必要だと考えています。
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2010年4月22日木曜日

Pilot Design Study for a Next-Generation Social Capital Market in Brazil

ブラジルでのプロジェクト自体は、その後スポンサーの事情が変わり、棚上げになってしまいましたが、この時の知見を活かし、Celsoさんは現在ポルトガルで新市場創設を進めていますし、私がシンガポールのImpact Investment Exchange AsiaやケニアのKenya Social Investment Exchangeに関わることができるようになったのも、この実績が評価されたから。とてもよい機会になった思い出深いレポートです。

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2010年4月18日日曜日

慶応ビジネススクールでの講演&議論

「投資は世界を変えられるか?~Impact Investment市場の発展可能性」(編集自由)

昨日このようなテーマで慶応ビジネススクールでお話させて頂いた内容のツイッター実況を、まとめました。

この内容での議論をリアルでやったのは、僕にとっても日本では初めてなので、とても刺激的でした。

説明したりなかったところ、時間の関係で議論を深掘りできなかったところもありましたが、学生の皆さんと期待した以上に活発な議論ができたかな、と嬉しく思ってます。
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2010年1月25日月曜日

「日本型経営」と社会起業家

社会起業家フォーラム代表の田坂広志氏の小論『なぜ、いま若者は社会起業家をめざすのか』を一読しました。

小論の主旨である、

  1. 社会起業家が求められるようになった背景に、小さな政府への移行と、単なる善意のジェスチャーに留まらず具体的な結果を求める社会的投資への潮流がある
  2. 社会起業家は、働き甲斐・生き甲斐を感じられる生き方として、お金や出世のために競争に身をすり減らしながら働くことに疑問を抱く若者たちの心を惹きつけている
  3. 現在の日本の社会起業家の最大の問題の一つにビジネススキルの乏しさがある
という三点は、的を射た指摘だと思います。

しかし、田坂氏の「日本型経営」を理想化する以下のような議論には違和感を覚えました。

日本型経営においては、そもそも「社会貢献」と「利益追求」は、決して矛盾するものではなかった

日本型資本主義と日本型経営の歴史を振り返るならば、この国に生まれてきた多くの企業家や事業家は、まさに「企業家的手法を用いて社会的問題に取り組む人材」であり、文字通り「社会起業家」と呼ぶべき人材であったと言える

我々は、海外の動きに表層的に追随することなく、何よりも、こうした日本型経営の原点を深く見つめ、その精神と思想に回帰するべきであろう
「社会貢献」と「利益追求」を合致させると言えば、理念としては立派です。常にそれができるに越した事はありませんが、実際に企業を経営していれば、この二つが矛盾してくる局面も出てくる現実は、何も海外に限りません。日本で企業を経営したからといって、魔法のように社会貢献と利益追求の間の緊張関係が消えてなくなるはずはありません。

その矛盾を、高いレベルで解決してきた志高く優れた経営者は、日本にもいたし、アメリカにも欧州にも、世界中の社会にもいました。逆に目先の利益追求に専念する経営者も、日本を含めて世界中どこにだっていたわけです。

そうでなかったら、つまり、もし田坂氏の説く「日本型経営」が単なる精神論でなく歴史的現実であったとすれば、何故いまだに日本では企業活動を悪者視する風潮がここまで根強いのか、甚だ不可解と言わざるを得ません。

少し話が横に逸れますが、一般に「日本型経営」と言われるものの特徴として、他にも終身雇用や年功序列などがよく挙げられます。実はこれらも、何もそこまで日本に特殊なものではなく、以前は欧米の企業でも広く見られた慣行でした。経済の仕組みが進化を続ける中で、経済合理性に合わないやり方は少しずつ捨てられ、それができない企業は淘汰されました。過去の一時期の経済状況に適応して成り立っていた慣行を、文脈から切り離して「日本型経営」などと呼んで理想視しても、ノスタルジーを満足させる以外に何の役にも立ちません。

ともあれ、社会起業家や社会的企業を、一度も存在しえなかった社会貢献と利益追求が矛盾しない理想状態への「回帰」として捉える語り口は、一部のロマンチストには受けるでしょうが、現実の経済を理解し動かしている人たちの大部分には耳触りの良い話として聞き流される程度で、本当の現状変革や問題解決には結びつかないでしょう。

最近、東洋経済に藤田晋氏等による社会起業家についての懐疑的・批判的なコメントが載せられ、社会起業家に関心のある人たちの間でちょっとした話題になりました。また、堀江貴文氏がブログで「社会起業家とか眠たいこと言ってんじゃねーよ」と書いたり、Twitterでも池田信夫氏が「「社会的起業」なんてナンセンス」と発言しているなど、「社会起業家」というキーワードが徐々に注目を集めるようになるにつれ、これまで一般の耳目には触れる機会が少なかった懐疑的な意見も聞こえてくるようになりました。

こういう人たちにも社会起業家の意義を納得させることができなければ、学生やメディア、政治家・官僚の中に魅力的なキーワードに飛びついて来る人はいたとしても、現在の経済や社会の構造を大本から動かすことはできません。

そのためには、根拠の希薄な特殊性や現実から乖離した理想を拠り所にして、社会貢献と利益追求の間の緊張関係が存在しないかのように信じ込むのではなく、その間にある齟齬を直視しなくてはなりません。社会起業家や社会的企業は、この齟齬を社会・経済システム全体としてより高いレベルで解決するための新たなグランドデザインにおいて不可欠な役割を果たす主体として説明される必要があると、私は考えています。

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2010年1月8日金曜日

掴雲流アラフォーの心得 十二箇条

いつの間にか37歳。年が明けて数えでは39歳と、不惑の一歩手前。

学生気分も完全に抜けきったと言えるのか定かでないのに(第一、半年前までまた学生やってましたし…)、私もいわゆるアラフォーの仲間入りをしていることに気付きました。(いまさら?)

同年代の人たちを一括りにしようとする世代論ってあまり好きじゃないけど、上とも下とも世代の差を意識せざるを得ないちょっと微妙な年齢になってきていることは、最近徐々に感じます。

まだまだ若いつもりだけど、自分が以前は「おじさん」と一括りに捉えていた年齢帯に突入しつつあります。そういえば、白髪も増え、しわも出てきて、体が無理をきいてくれなくなり始め。。

どう足掻いても歳には逆らえませんし、現実逃避しても何の役にも立たないので、開き直って「アラフォーにもなれば、こうありたい」という心得=自戒を、考えつくまま列挙してみました。
  1. 「最近の若いもんはよく分からない」とか言うべからず: 自分が同じことを言われていたのも、そんなに昔じゃない。よく分からないのは、分かろうとする努力が足りないから。若いもんから吸収できること、しなきゃいけないことはまだまだあるはず。
  2. 若いもんに媚びるべからず: アラフォーになるまで、真摯に経験と知見を積み、思索と省察を重ねて来ていれば、自分が学生の頃に考えていたことと今考えていることの間に距離が生まれているのは、極めて自然なこと。同様に、今の学生が考えていることとの間にも、距離があって当然で、そうでなければおかしいくらい。若いもんに「かっこいい」と思われたい気持ちも分かるけど、迎合するのはみっともない。今の自分に自信を持ち、かっこ悪く見えることも、退屈に聞こえることも、堂々と主張し、やり通そう。
  3. 目上は敬して之を遠ざけるべからず: 若い頃は、目上の人を必要以上に軽んじたり、うざったがったりしがち。経験の大切さを真に身に沁みては理解していなかったし、また年輩の人にどう接すれば良いのか今ひとつよく分からなかったから、それもある意味仕方なかった。でもアラフォーにもなれば、そんな言い訳は通用しない。彼らの経験の蓄積とそこから生まれる洞察に敬意を払い、積極的に学ばせてもらおう。
  4. 目上を「上から目線」で見る姿勢を持つべし: アラフォーたるもの、何も分からずに上に楯突いて無責任にえらそーな事言ったり、逆に上から言われたからとよく考えもせず従ったり、といったことはいい加減卒業しないとまずい。会社の重役であれ一国の大臣であれ、どんな目上の人に対しても、自分自身が当事者になったつもり、さらには彼らの上司にでもなったつもりくらいの意識を持って考え、建設的なアドバイスができるようになる必要がある。そうすることで、大局を見て必要に応じ優先順位をつけ、個別の正論に従うのではなく全体最適を図ることができるリーダーとしての素養を培おう。
  5. 愛する者を愛すべし: 若い頃は自己愛が偏って大きく、他を本当の意味で愛する余裕のない人が多い。家族でもいい。恋人でも友人でもペットでもいい。「神」や、世界中の生きとし生けるものと言うならそれでもいい。自分自身にしっかり愛情を注いであげるのも大事だけど、自分以外に心底から愛することができる対象がいるというのは、かけがえのない幸福。その愛情を伝え、育む努力を決して怠ってはいけない。
  6. 守りに入るべからず: 守るべきものがあるのは素晴らしいこと。だけど、守りに専念するにはあまりに早すぎる。これまでに築いてきた関係、信用などの資産を、守るだけでなく、動かし、組み替え、工夫して最大限に活用して、さらなる高みを目指そう。
  7. スタンスを取るべし: ケロッグでグループディスカッションをしていた時に、私が「Xじゃないかなと思うんだけど、でも皆がYと考えるのも分かるんだよね」みたいな発言をしたところ、すぐさま友人から「スタンスを取れ」とビシッと言われた。「議論を深め、グループとしてより良い結論に到達するために、異なった視点から(例え100%確信がないとしても)きっちり論理を展開して見せろ」ということ。自分の主張が合ってるか間違ってるか、採用されるかされないかよりも、その議論をすることが全体の結果の向上に役立つかどうかを、一番の基準とし、自分を捨て石にすることも厭わない。
  8. 敵をつくることを恐れるべからず: 不必要に敵をつくることは避けなくてはいけないけど、誰にでも好かれようとしていては、何事も成し遂げることはできない。凡そあらゆる変革には、得する人がいる一方で、損をする人もいる。本質を抉る発言であればあるほど、賛成する人も反対する人も多くなる。敵を味方に変える工夫はするが、しかし敵をつくることを恐れず腹を決め、主張すべきことは主張し、為すべきことを為そう。
  9. システムを動かすべし: 自分の力だけでは一人相撲。周囲の人の力を使っても、まだ狎れあいの域を出るのは難しい。若い頃はそれもいい。色々やってみてそこから学べばいい。ただ、対症療法でない本質的な持続的変革は、人の動静の根底にあるシステムを動かして初めて可能なことを、アラフォーにもなれば理解していなければならない。果敢という名の思考停止、挑戦という名の自己陶酔を脱却し、思考、行動、議論の全てを駆使してシステムを動かそう。
  10. 歴史に学ぶべし: 「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」。空虚な理念でなく、人間の現実を学ぶには、様々な社会の様々な歴史は最良の教科書。複雑な社会のダイナミクスを理解するのにも、この上なく貴重な「実験室」 を提供してくれる。目先のトレンドに振り回されていることに気付きもせず振り回されたり、せっかく歴史を紐解いたのに英雄崇拝に終始したりといったことは、アラサーまでで十分。現実を知らずして、現実を変えることなんてできない。歴史の深い教訓を学び、活かせるようになろう。
  11. バランスにしがみつくべからず: バランスは確かに重要。だけど、バランスをとること自体が究極の目的ではないことに、もう気付かなければならない。何でもかんでも「バランスが大事」という科白で片付けていたら、突き抜けることなんてできない。現状より高次のバランスに達するためには、今あるバランスも崩して前に進まなくては。人間は、直立している状態からバランスを崩して、初めて前に進むことができる。
  12. 「不惑」になるべからず: 孔子曰く、「四十而不惑」。でも、40といえばもうそろそろ一生の締めくくり方を考え始なければいけなかった孔子の時代と異なり、今のアラフォーはまさに人生これから。惑わなくては進歩は無い。前に進みつづけるために、大いに惑わずにはいられない状況にこれからも自分を置いていこう。
ちょっとレベル感ばらばらですが、細かいことはご容赦いただいて、以上十二箇条。他にも色々ありそうですが、とりあえず思いついた中で特に私が大事だなと思ったのはこのあたり。

同年代のアラフォーの方々の、「これも大事!」という心得がありましたら、教えてくださいね。

また、アラフォー未満の方々の「アラフォーにはこうあって欲しい」という要望、元アラフォーの方々の「あの頃の自分にこう言ってやりたい」という教訓も、是非お聞きしたいです。


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2010年1月3日日曜日

新年明けましておめでとうございます

謹賀新年


Clouds with silver linings

over Ssese Islands on Victoria Lake, Uganda

新年明けましておめでとうございます!

昨年6月に米ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院の経営学修士(MBA)課程を無事修了し、現在はウガンダに滞在しています。
  • 2009年前半は、サンパウロ証券取引所の支援を受けて行った社会起業家向け資本市場のためのパイロットデザイン・プロジェクトに没頭しました。執筆したレポートは、Global Exchange for Social Investment (GEXSI)Social Stock Exchange Association (SSEA)のウェブサイトにて近日中に公開される運びとなっています。
  • また、私が共同創業者として参画しているKaienは、自閉症を持つ方たちの強みを活かしてソフトウェア検証を行うビジネスプランで、4月にニューオリンズで開催されたTulane Business Plan Competitionにおいて優勝を果たしました。その賞金を軍資金に、9月には日本で法人化し事業を開始いたしました。
  • ビジネススクール卒業後は、派遣元のコンサルファームへの復職のタイミングを延ばしてアフリカに渡りました。ルワンダのマイクロファイナンス銀行での一ヵ月半のインターンを含めて、11月中旬までの4ヶ月間、東部および南部アフリカ11カ国を巡りました。約80の現地企業や機関を訪れ、120人以上の投資家・事業家・社会起業家・政府官僚などと面会して意見を交換する中で、中小企業にリスクキャピタルを提供する金融がアフリカの開発に果たす役割に強く関心を惹かれました。
  • 11月中旬からは、ウガンダにあるAfrican Agricultural Capitalという農業関連ビジネスへの投資に特化したベンチャーキャピタルで仕事をしています。
  • その他、ブラジルでの経験を活かして、社会資本市場の整備に向けて準備を進めているシンガポールのImpact Investment Exchange Asia (IIX)やケニアのKenya Social Investment Exchange (KSIX)といった取り組みにも参画することになりました。

春頃には日本に戻る予定です。今年もさらに前進と飛躍に向け挑戦いたしますので、何卒ご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます。

皆様のご健康とご多幸を心からお祈り致します。

徐 勝徹 a.k.a. cloudgrabber

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2009年12月8日火曜日

ソマリアの海賊=アフリカ版ロビンフッド?

東部&南部アフリカ11カ国を周っておりましたが、7月中旬から4ヶ月に渡った旅も無事終了。

バックパックを背負って安宿に泊まり、時にはヒッチハイク、時には長距離バスで移動しながら、訪れる先で70以上の企業や政府および非営利組織を訪れてインタビューをし、投資家や実業家、官僚、学者、社会起業家など100人以上の方々にお会いして話を伺うという貴重な経験ができ、実に多くの学びがありました。

で、先月中旬からはウガンダのベンチャーキャピタルで仕事を始め、(それなりに)安定したネット環境に復帰したはずなのに、すっかりこちらのブログが放置状態になっていました。仕事があるという言い訳もありますが、本当は何よりの元凶はTwitter。短い文章で気軽に書けて、すぐ反応があるのが楽しくて、ついついブログの方は後回しに。

ちゃんと整理して書き記しておきたいことは山ほど溜まっているのですが、まずは構えてしまわず、兎にも角にもまた書き始めることが必要だな、と思い、今回はTwitterで見かけたニュースをネタに軽く一本。
ソマリアで「海賊に投資し身代金報酬の分配を受ける」投資市場がオープン
という、一瞬目を疑ってしまうようなニュース。どこまで信じていいのかちょっと分からないものの、英語の元ネタはロイターで、全くのデマではなさそう。

この記事に寄せられたコメントには面白がっているだけのものもありますが、大体は「野蛮」だとか「時代錯誤」といった批判的な声。ただ、ちょっと待って欲しい。

もちろん海賊行為は違法行為です。それを正当化するつもりは毛頭ありませんが、これが本当だとすると、とても興味深い話です。

英語の元記事の方には、海賊が手榴弾を購入する資金を投資して、身代金の分配として75000ドルを受け取った寡婦の話が出てきます。手榴弾がいくらだったのか分かりませんが、彼女のようなこの地域の住民にとって、このお金はまさに虎の子だったはず。貧しい(と思われる)彼女がそれを投資するには、何よりこの投資市場に対する信頼があったということを示しています。つまり、投資した海賊がうまく身代金をせしめたら、インチキなしに約束どおり分配をしてくれるという信頼です。

この信頼関係が海賊(またはその投資市場)と地域住民の間に存在するということは、実はすごいことだと思います。預金サービスを始めたマイクロファイナンス機関が、多くの地域で苦労するのがこの信頼の問題です。貧困層の住民に、お金を預けたらちゃんと後で返ってくるということを、理解してもらうのには地道な営業活動と実績の蓄積が必要なのです。

ソマリアの海賊について、日本の大手メディアではあまりその背景について説明されていないため、何だか単にアフリカ人が前時代的な野蛮行為を働いているくらいの認識をされている方が多い気がします。詳しい話はこちらのTime誌の記事などを見ていただくとして、簡単に言うと、

内戦による国家体制崩壊

領地・領海の統治・警察能力喪失


漁場が荒らされ、元々伝統的漁業で生計を立てていた地域住民の失業、貧困化

という背景があり、海賊行為は(少なくとも当初は)、不法な外国漁船に対する自衛手段であり、生計を失った地域住民の窮余の策であったという見方もできるのです。

そのため、海外のメディアでは時にソマリアの海賊をロビンフッドのような義賊に見立て擁護するような声もあります。

こうした論調に安易に与するつもりはありません。ただ、一部の先進国では武器産業が発達し、傭兵が企業活動として行われる一方で、少しでも生活を良くしたいという願いから、海賊に投資して利益を得るソマリア人を、単純に「野蛮」だと切り捨てたところで何も解決しないのではないでしょうか。

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2009年10月20日火曜日

南アフリカに来ています

9月中旬にルワンダを発ち、ケニア→マラウィ→ザンビア→ジンバブエ→ボツワナを経て、今は南アフリカのヨハネスブルグに来ています。(アップデートが滞ってますが、各国でのミーティングのメモは英語ブログの方にぼちぼち載せていきます。)

今週は、南アフリカのプライベートイクイティやベンチャーキャピタルの人たちを中心にネットワーキングをし、来週からはモザンビークやスワジランド、レソト、それに南アフリカのダーバンやケープタウンを巡る予定。

また、来月中旬からは、私が所属するコンサルファームからの出向という形で、African Agricultural Capital (AAC)で、4ヶ月ほど仕事をすることになりました。7月にウガンダを訪れたときにこのブログでもご紹介しましたが、農業関連中小企業への投資に特化したベンチャーキャピタルです。

アフリカ諸国を旅行し、事業家や金融業者、それにノンプロフィットおよび政府関係者たちと会って話しをする中で、
  • 零細個人事業主向けのマイクロファイナンスと、中~大規模企業に金融サービスを提供する既存金融機関(銀行、プライベートイクイティ&ベンチャーキャピタル)の狭間で、見落とされてきた中小企業向け金融(いわゆる「Missing Middle」の問題)の、経済発展における重要性
  • その中でも特に農業関連事業向けの金融サービスの欠如とその難しさ
  • アフリカの経済における農業の重要性と今後の成長余地の大きさ
が、自分の中で大きなテーマとして浮かび上がってきているところですので、今回AACでChief Business Development Associateとして仕事ができるのは、この辺りを掘り下げ、今後の展開につなげるにはこれ以上望むべくもない絶好の機会です。学べることは全て吸収しつくすつもりで、全力投球で行きたいと思います。

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2009年9月16日水曜日

ホームステイ

ルワンダでの最初の4週間は、UOBのスタッフのDanielさんの家族とホームステイさせてもらいました。

途上国での長期滞在は、これまでにも何度か経験がありますが、ホームステイをして現地の人と寝食、出退勤をともにするのは今回が初めて。

食事は出されたものを何でも食べる方ですし、お湯が出なかったり、水がにごったり、断水や停電が起きたり、きれいなタオルがなかったりなんてことにも慣れているので、特に不満はありませんでしたが、一番の悩みの種は出退勤時の交通手段でした。

お金を出せば、オートバイタクシーや普通のタクシーもありますけど、庶民の足は何と言ってもバス。ダウンタウンにあるオフィスから、Danielさん宅まで、車で約15-20分ほど。それを、バスを乗り継いでいくと300ルワンダフラン(約50円)、オートバイタクシーで1000フラン(約170円)、普通のタクシーだと4000-5000フラン(約700-900円)します。

ホームステイしている間は、Danielさんの行動に基本的に従うことにしたので、彼がバスに乗る時は私もバスに乗りました。しかし、このバスが、とにかく当てにならない。5分間隔で来たかと思えば、1時間以上来なかったりもする。

絶対的な供給量が少ないので、ピークの時間はバスが来ても、すでに満員で乗せてくれない。席が残っているバスがやっと来ると、我先にバスに乗り込もうと必死の競争になります。並ばないし、ぴったりここに停車すると決まっている場所があるわけでもないので、それこそカオス状態。少しでも遠慮なんてしてたら、本当にいつまでたってもバスに乗れません。

と、まぁそんな訳で、夕方6時に退社して、家にたどり着くのが9時なんてことも何度かありました。全く予測できませんので、肉体的にも精神的にも疲れます。

首都キガリで会社勤めをしていて、自家用車を持っていない人は、誰も一様に、交通手段について不満を述べます。国としても、 生産的なことに費やすことができたはずの国民の時間が大量に浪費されているわけですから、大きな非効率であり、経済的損失でしょう。

こういう環境では、会社をつくってバスの供給量を増やすだけでも大いに社会的意義のある「ソーシャルビジネス」と言えるのかもしれません。

P1000326
Danielさんの長男Shemaくん

考えてみると、私がこれまで途上国に滞在したときは、仕事で、移動の足はいつも用意されていたか、短期の旅行で、現地の人が高くて気軽に使わないようなタクシーもあまり気にせず使ってしまうか、という感じでした。

フィジーやミャンマーで仕事をしていた時に、同じオフィスで仕事をする現地スタッフが、どれほど交通手段のために苦労しているか、私はちゃんと理解できていなかったと思います。自分の想像力・共感力の不足に反省。

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