- 「愛は地球を救う」型: 草の根NPOなどに多いタイプで、思いやりの気持ち、行動の意図を重視するあまり、その効率や持続性にはあまり意識が向かない
- テクノクラート型: 国際組織や大手NGOの一部に多いタイプで、現実の問題の複雑さをよく理解しているがために、一種のシニシズムに陥り、現状の枠組みで与えられた仕事を粛々と進めることのみに専念する
- ビジネス万能主義型: 最近急増しつつあるタイプで、ビジネスの手法を活用し、市場原理を徹底させれば、世界の全ての問題が解決するかのような錯覚を持っている
しかし、今日ビル・ゲイツの世界経済フォーラムでの講演のノーカット版を改めて見てみて、彼はこれらのどの類型にも属さない、真に成熟したビジョンを持つthought leaderだと認識を新たにしました。
- 「より広範な分野で資本主義経済の力を利用してイノベーションを起こす」ことに留まらず、「資本主義経済と言う社会システム自体をイノベーションの対象にしてしまう」ことを提唱している
- 企業は、お金だけでなく頭脳を提供し、イノベーションの手助けをすることによってこそ、より大きな貢献が可能だと主張している
- 企業だけでなく、政府や非営利団体が果たすべき役割と、協働の必要性についてよく理解している
- 社会変革を突き動かす動力として、「自己利益」と並んで、「思いやり」が持つポテンシャルを認識している
- インセンティブの形態として、「金銭的利益」だけに限らず、「評判」の重要性にも着目している
- 「創造的資本主義」を現実にするためのさしあたっての突破口は、「成果の測定」にあることを理解している
ゲイツ財団を立ち上げて試行錯誤をする中で、様々な失敗もし、彼のスタイルについて批判もあると聞いていましたが、さすがに学習能力と洞察力がずば抜けているのでしょう。他のどんな社会起業家や学者と比べても、見えている視野の広さ、問題の本質を考える深さ、そして人を動かせる楽観的積極性において、これほどの人は私が知る限りちょっと見当たりません。
今のサブプライム問題で金融システムが崩壊して行く中で、
返信削除アメリカ経済の強さって何でしょうね。
一時はITも強かったけど、
今は軍事産業だけ?
アメリカの強さというのは理念というか、強烈な理想主義のメッセージを発信する力なのかな、と思います。現実には戦争を起こしたり、貧困や差別もあるものの、例えば今回ゲイツ氏が提唱する「創造的資本主義」も、そんな楽観的理想主義が込められていて、今年夏以降本格的にフィランソロフィー活動をする中で大きなインパクトを与えるのでは、と期待しています。ゲイツ氏に限らず、今年のダボスでは社会起業家的な動きが注目されているようですね。NYTimesのコラムが中でもうまくまとめられていてちょっと気になってます。
返信削除The Age of Ambition / NICHOLAS D. KRISTOF (1/27)
ブログ、いつも楽しく読ませていただいてます!
ichi
> rokuさん
返信削除サブプライムとの関連で言えば、アメリカ経済の強さは、一言でresilienceであり危機管理能力の高さにあるんでしょうね。問題が発生したときに、それがシステム全体を危機に陥れるのを避けるために、アメリカ経済が持つ多様性と開放性、そして明確なリーダーシップの存在は大きな力を発揮します。
銀行にパワーと同時にリスクも集中してしまったバブルがはじける前の日本とは違い、リスクがある程度分散されていて、さらに問題対処に迅速かつ決然と行動するFedがいますから、日本の「失われた10年」のようなことにはならないのではないかと思ってます。
> ichiさん
「現実を見ない理想主義は白昼夢、理想をもたない現実主義は悪夢」という言葉を思い出しました。現実を深く洞察し、なお楽観を失わず、人々の共感を得ることができるような理想を描ける人が、本当に優れたリーダーといえるのでしょう。
cloudgrabberさんのご指摘するフィランソロファーの3つの類型、まさにその通り!だと思います。実は私が似合いもしないビジネススクール進学を決めたのは、特にタイプ①、②の人々によって運営される組織に変革をもたらせるような人間になりたい、と思ったからでした。まだまだですけれども、いつかかならず。
返信削除> アビショコラさん
返信削除私が3年前に、ビジネス経験も無いのに戦略コンサルの世界に身を投じたのも、アビショコラさんと同じ理由でした。
最近は周りに③のタイプの人も多く見かけるようになってきて、自分はそうなってしまいたくはないなという自戒の念を強くしています。
はじめまして、yari123と申します。
返信削除ケア分野のソーシャルベンチャーを標榜したNPOを準備中です。
ゲイツの議論、とても面白かったです。
「思いやり」のもつポテンシャルや「評判」の重要性について、実践的に探ってみたく。
日本のケアという限られた分野では、そもそも自己利益や金銭的利益をインセンティブとしない、いわばやせ我慢!が通用してきたので、双方うまく折り合わせることが課題です。
また学ばせて頂きたく、どうぞよろしくお願いします。
> yari123さん
返信削除コメントありがとうございます。
私も、自己利益と社会的利益を二者択一でなく、うまくブレンドできる仕組みを創る必要があると思っています。
ソーシャルベンチャーの準備、頑張ってくださいね!