2009年5月18日月曜日

そもそも社会起業って何? - その1

先日私の友人で、KAIENのCEOのSさんのところに一通のメールが来ました。その中に、KAIENの事業に関する色々なありがたいご意見とともに、「KAIENのやろうとしていることは、社会貢献企業であり、社会起業ではないのではないか」という問いかけがあったそうです。

最初に断っておきますが、Sさん自身は、特に社会起業家と呼ばれたいとは思っていません。Sさんにとって何より大事なのは、「自閉症を抱える一人息子が将来成人する頃に、彼のような人たちに公正な参加の機会が開かれている社会をつくりたい」というミッションです。そんな遠大なミッションを夢で終わらせず、具体的にどうすれば実現できるのか、と考え抜いた末に、その手段として起業という道を選んだに過ぎず、それが「社会」起業と呼ばれるかどうかなんてことにはあまり興味がありません。

Sさんを始めKAIENに関わる私たちは、「自閉症を持つ人は、社会的なスキルなどの弱点はあるけれど、それを補って余りある人並み優れた才能を持つ人たちがたくさんいる。彼らの弱点をサポートし、強みを活かすコツさえ企業側がつかめば、保護すべき弱者ではなく貴重な人材として、ビジネスに貢献してもらうことができる」ということを、がちがちの資本主義の論理で動くビジネスの本流にいる人たちに理解してもらうため、私たちが身をもって証明してみせることこそが、ミッションを達成するための一番の近道だと考えています。ですから、もしも「社会起業家」というまだふわふわしたレッテルで呼ばれることが、かえってビジネスの本流にいる人たちに真剣に受け取ってもらえない理由になり、KAIENのミッション達成の障害になるとしたら、Sさんは社会起業家なんて呼ばれたくないとさえ思っているはずです。

以前マザーハウスの山口絵里子さんとちょっとメールのやり取りをする機会があった時も、「私自身は自分を社会起業家だと全く思って」いないと書かれていました。彼女の場合、Sさんとはちょっと違った理由からですが、どちらにしろ、お二人ともミッションを達成することに無我夢中で、周りの人が自分のことを何と呼ぶかにはあまり頓着しないのでしょう。

ただ、それにしても、「社会起業」って、「社会起業家」って、何なんでしょうか?なんでSさんにメールをくれた方は「KAIENは社会起業ではない」と言われたのでしょうか?

と、そんなきっかけがあって、少しこのあたりについて私の考えていることを整理して書いてみようと思い立ちました。

では、ここで、ちょっと変な問題を。

次の4つの文章の中から正しいものを一つ選んでください
A. 社会起業をする人が社会起業家である
B. 社会起業家がやることが社会起業である
C. AとBの両方正しい
D. AとBの両方間違っている

どう思いますか?

2009年5月9日土曜日

問題解決のスケールとスピード

昨日シカゴ大で開かれたChicago Microfinance Conferenceに参加してきました。


オープニングはSKS Microfinanceの創業者にして会長のVikram Akula氏。営利事業化が進展しているマイクロファイナンスの世界で、ビジネスの手法を積極的に持ち込んで近年急成長を遂げているSKSは、業界の風雲児的存在です。トレーニングはマクドナルドのやり方から、支店展開とそのマネジメントはスターバックスのやり方からそれぞれ学び、マイクロファイナンスのビジネスモデルにとって要となるローンオフィサーの業務効率化のためにユーザーフレンドリーなITシステムを導入しています。また、地方の貧困層との接点を有効活用して、マイクロファイナンス以外のサービスや商品をクロスセルする計画もあるそうです。

彼が何より強調していたのが、問題解決のスケールとスピード。曰く、「ユヌス氏のグラミン銀行は現在800万人弱の人にマイクロファイナンスのサービスを提供しているが、このスケールに到達するまでに30年かかった。すばらしい実績だが、彼らマイクロファイナンス第一世代の経験から学んだ我々は、彼らと同じ事をするのではなく、さらに一歩先に進めなくてはならない。今なお世界中にはマイクロファイナンスのサービスが行き届かない貧困層の人々が30億人いる。第一世代のマイクロファイナンスと同じペースでやっていては、100年かかってもこの人たち全てにサービスを提供することなんてできない。そのためにはチャリティ資金にだけ頼っていてはだめで、商業資本も導入し、また業務プロセスやテクノロジーも最先端のものを使いこなさなくてはならない。」

一方で、スピードを追求することの弊害にも配慮が必要としており、特にボトルネックになりそうな要注意事項として、①人材の量と質、②ITシステムのキャパシティとデザイン、③マイクロファインナンスの商業化に対する一般の認識、世論、政治、といった点を挙げていました。


昼食時に出席したMicroPlaceのCFOのPaul Bryth氏によるプレゼンも興味深いものでした。よく対比されるKivaは個人が個人にお金を貸すP2Pのモデルで、利息はゼロなのに対し、MircroPlaceの場合はMFI(マイクロファイナンス機関)が発行する債券を個人が購入するモデルで、ちゃんと利息ももらえます。また、Kivaが非営利組織であるのに対し、MicroPlaceはeBayの子会社で営利企業です。

備忘録として、MicroPlaceに関していくつかポイントを書き留めておきます。

  • MicroPlaceが徴収する手数料は、債券額面の1%で、MFIが負担
  • 規模の経済が効くビジネスモデルなので、迅速に十分なスケールに到達できるかが成否の鍵
  • 今年の第一四半期も取引高増加、第二四半期もさらに加速中で、不況下でも成長を続けている。株式市場などの既存市場が落ち込む中で、利息に魅力を感じて新規ユーザーになるケースが多いと思われる
  • MicroPlaceは個人(債券購入者)とMFI(債券発行者)が直接取引できる場を提供するのみで、為替リスクはMFIが、信用リスクは個人が負う(2007年創業以来、今のところ債務不履行の事例はゼロ)
  • 利用者は高学歴、高収入層に集中。40歳以下が50%、男性53%
  • 現在手がけている発行市場(primary market)だけでなく、流通市場(secondary market)も将来は立ち上げたいと考えているが、現行の規制では不可能。今のところは現事業の拡大で手一杯で、発行市場立ち上げのため規制改正の働きかけなどの具体的な取り組みは特にまだ始まっていない

午後の基調講演は、ACCION Internationalの元CEOとしてメキシコのCompartamosのIPOにも関わったMichael Chu氏。CompartamosのIPOについて批判的な立場を取っているユヌス氏とは、激しい論争を繰り広げてきている人物です。

「貧困という途方も無く大きな問題を、軽減することに留まらず、根絶しようということを本気で考えた時には、拡張可能性(スケール)、持続可能性、継続的イノベーション、そしてスピードを伴った問題解決が必要になる。これら四つの条件を満足させるには、ビジネスというメカニズムを活用することが有効である」というのが、彼の主張の要旨です。

確かに、このスケールとスピードというのは、小さくてもいいからゆっくり良いものを育んでいこうという傾向が強い従来のノンプロフィット的アプローチが不得手とする部分です

ただ、スケールとスピードのためには、何もかも商業化する必要がある訳ではありません。例えば、ジョンウッド氏のルーム・トゥ・リードは、寄付金に依存して途上国で学校を建設するという従来の非営利のビジネスモデルと何も変わらないものですが、マネジメントやマーケティングにおいてビジネスの手法をうまく導入し、目覚しいスケールとスピードを達成しています。

特に日本では、スケールとスピードを追求するという意識がビジネスにおいても比較的弱いので、社会起業を志す人たちは、より大きなスケールで、より迅速に、しかも本当に根本から問題を解決するには何が必要かを極めて意識的に考える習慣を自らに課す必要があると思います。

2009年5月6日水曜日

『無私』のビジネスでは世界を変えられない

5月2日の日経新聞朝刊にムハマド・ユヌス氏のインタビューが掲載されていたようですね。(複数のブログで取り上げられていて知ったのですが、日経のサイトでは何故か見つからず、記事全文はこちらで読みました。)
ソーシャルビジネスを手がける企業が上場する株式市場も設立したい。ストリートチルドレンを救済している企業はどこか、医療のソーシャルビジネスはどこか、すぐに探して投資することができる。私の身近にいる学生たちはインターネットを使った市場の創設などを議論している。上場する際には厳正に審査し、本当に適合する企業だけが上場する仕組みを作る。上場はその企業に認証を与えることになるので、知名度向上にも役立つ
ユヌス氏がかねてから提唱しているソーシャルビジネス向け株式市場についての言及もあり、やはりまだまだ一般の認知の低いこのコンセプトを多くの人に知ってもらうための一番のセールスパーソンは、今のところこの人をおいていないな、という思いを新たにしました。

自身が考える社会株式市場のあるべき姿について中々詳細は語らないユヌス氏ですが(彼を直接知る人たちによると、彼自身も大きなビジョンはあるがそれをどうすれば実現できるかという具体的なアイデアはまだ詳しく語れるほど固まっていないのではないかという話です)、
100万ドル出資したら、10年後でも同じ100万ドルが戻ってくる
社会目的の多くの慈善団体や政府機関がある。こうしたチャリティーのお金は通常、戻ってくることはないが、持続可能なソーシャルビジネスへの出資なら資金のリサイクルが可能だ
これらの発言は、私たちが現在ブラジルのBM&F BOVESPA(サンパウロ証券取引所)のために草案を作成中の社会株式市場(厳密には、「株式」ではなく、より「債券」に近い資本市場を提案する方向で考えています)のデザインの基本思想と合致していて、意を強くしました。

ただ、微妙に考え方が違うのかなと思うのが、
人間は本来、利己的な部分と『無私』の部分を併せ持つ多面的な生き物だ。ただ、これまで『無私』が経済に組み込まれることはなかった。私の提案はこの『無私』に基づいたビジネスを創造し、資本主義に取り入れることでゆがみを正し、完成形を造り上げようというものだ
という部分。一見すると私がこのブログを始めた時に書いたこととも近いように思われるかもしれませんが、「他人に何かできるという喜びや満足感」、「他人を変えていくうれしさ」、「人の役に立ちたいという思い」、これらを「無私」(selfless)という言葉で捉えてしまうことには、私はどうしても違和感を感じます。

言葉尻の問題と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、こうした活動の原動力を、崇高な無私の精神と捉えるか、人間が自然に持つ欲求(例えばマズローの言う集団帰属、自己承認、自己実現といった欲求)の一種と捉えるかによって、それらを促進するための方策や制度の設計も根本的に異なってくると考えています。(この点、ビル・ゲイツの「創造的資本主義」のビジョンの方が、私はより共感できます。)

無私の精神とは、外部から与えられるインセンティブの多寡に反応するものではありません。無私の精神を行動原理とする人は、極めて希少だからこそ、尊敬に値します。そういう人たちが世の中にいないわけではないですし、また私たち一人ひとりの心の中にそのような部分が存在しないわけでもないですが、どうすればそうした無私の精神を現状よりも促進・拡大することができるでしょうか?

考えられるのは、道徳教育だとか、ロールモデルだとか、メディアを活用した啓蒙とかいったところではないでしょうか。それらが全く無意味だとは思いません。ただ、これまで人類の長い歴史の中でそうした努力は常に行われてきたのに、無私の精神が人間社会の支配的原理になることはありませんでした。それなのに、こうした取り組みの延長線上に、今後何か世界を変えるほどのインパクトを生む可能性があるとは、私には到底信じることができません。

ユヌス氏は私も最も尊敬する人物の一人ですが、私の知る限り、彼自身人並みはずれた自己顕示欲や自己実現欲の持ち主で、決して無私の人ではありません。「それにもかかわらず」私は彼を尊敬するのではなく、そうした強い欲求を持っている人「だからこそ」、それらの欲求を社会の発展にふりむけて極めて効果的に使っているからこそ、尊敬するのです。彼がいつも挙げるダノンやアディダスなどのソーシャルビジネスの例も無私の心で行ってるわけではないでしょう。

ユヌス氏や他の成功している社会起業家を、無私の聖人君子と捉えてしまうと、ほとんどの人にとって彼らの行蹟は尊崇の対象にとどまり、後に続くなんて「自分には無理」ということになりかねません。

ユヌス氏のような人たちがどのような欲求を持ち、どのようなインセンティブに反応しているのか、どういう弱点や盲点に陥りがちで、それを回避するにはどのようなサポートが必要なのか、そうしたことを深く掘り下げて理解して初めて、彼らのような人材を拡大再生産することが可能になります

希少にしか存在しない無私の偉人がビジネスを起こすことに頼っていては、根っこのところで世界は変わりません。本当の変化は、人の痛みが分かり、事象の本質を見る目を持ち、目立ちたがりでええかっこしいな、そんな普通の人が動く時に起こります。普通の人が持つ金銭的・物質的欲求を全否定するのではなく、うまくバランスさせながら、それ以外のより向社会的な欲求を刺激し、社会的価値の創出に振り向け、充足し、促進する環境や仕組みをつくることができれば、世界は変わりはじめる。そう考えて今後もどんどん動いて仕掛けていきます。(で、まずはBM&F BOVESPAのためのレポートを仕上げないと。。)

2009年5月3日日曜日

定額給付金基金

定額給付金基金が、メディアなどでも取り上げられ、ちょっとした話題になってます。 これ、私の知り合いにも関わっている方がいらっしゃいますし、面白いアプローチだと思うので、うまく行ってほしいなと思う反面、ちょっと個人的には心のどこかにひっかかる違和感もあります。

某SNSのコミュで、敢えてdevil's advocate役を演じるため、私のごく限られた知識に基づいて定額給付金基金に関する私見を述べてみたのですが、反応がなかったためこちらに転載しておきます。


【良いなと思う点】
  1. 定額給付金という兎角注目度の高いイシューに絡めて、メディアの力をうまく利用している
  2. 定額給付金のような「たなぼた」的所得は、寄付などに使うのに比較的抵抗が少ないという人間の心理をついている
  3. 多くのNPOが集まることでクリティカル・マスをつくり出し、話題性を高めるとともに、寄付者の多様な関心領域にも対応できるようになっている
【疑問に思う点】
  1. 定額給付金みたいな無責任なバラマキ政策(と、私は思ってる)に便乗するのはどうもわだかまりを感じる
  2. 寄付に使うことで、定額給付金の本来の目的である経済活性化へどのような効果(コスト・ベネフィット)があるのかについてはまったく触れていない(定額給付金の政策意図である景気刺激への即効性が損なわれるのでは?)
  3. チャリプラが費用として寄付金の10%を徴収すること自体は、私自身としてはありだと思うし、それをウェブサイトにしっかり明記しているのは良いと思うが、それが寄付する人にどれだけちゃんと伝わっていて納得してもらっているのかは不明(米国の寄付ポータルGlobalGivingも同水準の手数料を取っていて、ウェブサイトにもよく見れば書いてあるんですが、それを知らなかった利用者も多くて一部で批判がずいぶんあったので)

2009年4月26日日曜日

C.K. プラハラード

人の頭の中にあるアイデアやコンセプトの本質を掴みとるのはなかなか難しいもので、著書やウェブサイトを通してその人のやっている事、考えている事を分かったつもりでいても、実際に会って話を聞いてみると、特に新しい情報が加わったわけではないのに、「あぁ、要はそういうことなのね」と、一皮剥けた理解ができるようになることがあります。

昨年Kivaの共同創業者の一人のJessica Jackley Flanneryさんに会ったときや、今年一月にRoom to Readの創業者のJohn Wood氏(因みに彼はケロッグの卒業生)の話を聞いたときが、そうでした。


世界屈指の経営学者で、"core competence"とか"BOP (the bottom of the pyramid)"といった言葉の生みの親として知られるミシガン大学のC.K. プラハラード教授の著書を読んだときも、今ひとつなんでこの本がそんなに話題になっているのか理解できませんでしたが、先週彼の講演を聞いて、その考え方が腑に落ちた気がします。

その講演を聞きながら私がメモをした中から、いくつか抜書きしてみます。

  • 2022年のインドはどんな国になることができるだろうか?ここで「どうすれば」という問いを気にしてはいけない。目標の前に手段を考えては、ポテンシャルを最大限に発揮することは不可能だ。
  • 起業家に必要なのは、想像力、勇気、そして情熱だ。リソースを集め活用できる才覚はもちろんだが、現在のリソースの制約を乗り越えて何かを成し遂げようとする野心も起業家には求められる。
  • ビジネスが、イノベーションや顧客開拓の努力によって、貧困層にも市場経済の仕組みが貢献できるようにする必要がある。これまでのイノベーションは、先進国の富裕層が持つニーズを満たすために開発され、その恩恵が徐々に発展途上国や貧困層にもこぼれ落ちてくるものだった。しかしこれは、もう一つの大切なイノベーションの機会を見逃している。今後は、発展途上国の貧困層が持つニーズに応えるイノベーションを起こすことで、先進国や富裕層向けのビジネスにおいてもユニークな競争優位を得ることが可能になる。
  • 貧困層への市場経済の普及が環境に与える影響についての質問に答えて) 現在の市場経済におけるやり方が持続可能でないからといって、市場経済から排除されている貧困層が市場に参加し利益を享受することを阻むのではなく、その現在のやり方自体を変えるべきだ。その方法はいくらでも工夫のしようがある。
最近インドのタタ・モーターズが30万円という衝撃的な低価格自動車ナノを発売したことを受けて、一部のエコロジストの間には懸念を表す人たちがいますが、最後に挙げたプラハラード教授のポイントは、そうした意見に対する反論として説得力があると思います。

2009年4月24日金曜日

行政やメディアとソーシャルビジネスの距離感

オバマ政権になってホワイトハウスにOffice of Social Innovationが新設される動きになっているという話題を、以前にこのブログでも取り上げましたが、先週これについて正式な発表があり、Google.orgのSonal Shah氏がこの新しい部署を率いることになりました。(The Chronicle of Philanthropyの記事によると、国内政策全般の調整を行うDomestic Policy Councilの下に設置されるそうなので、前回書いた「大統領直属」って言い方はちょっと間違いでしたね。)

では日本は、というと経産省がソーシャルビジネスの振興に取り組み始めています。先月ソーシャルビジネス全国フォーラムを開催し、「日本ソーシャルビジネス宣言」なるものを採択しましたが、これからどうなりますことやら。経済産業省が実施しているソーシャルビジネス/コミュニティビジネスの推進施策ってのを見てても、決して意図が間違ってるとは思わないけれど、どうもいかにもいつものお役所仕事の延長線上で、無難で実効性のないことにお金を使ってるなという印象を受けます。少なくとも、どうしたら本当に日本でソーシャルビジネスが活性化されるのか、真剣に深く考えた結論として出てきた施策とはちょっと思えないんですよね。

まぁ、でもあまり経産省のやってることに文句をつけても仕方ないのかな、という気も。 ソーシャルビジネスをリードする側が着々と実績を積んで実力をつけ、ソーシャルビジネスの発展には何が必要か、行政が担う役割は何か、ということをしっかり提言するようになるまでは、下手に官僚に主導権をとられてもうまくいかないと思うので。

日本では、特に社会福祉や公共善といった話になると、「お上」に何かやってもらおうという意識がどうしても強いように思いますが、ことソーシャルビジネスや社会起業に関しては、行政の力をうまく利用できる実力をつけるまで、つかずはなれずの微妙な距離感(arm's length relationship)を保つ必要があると思います。

因みにこれは、メディアとの関係についても言えることじゃないでしょうか。もちろん、社会起業家やソーシャルビジネスは、メディアをうまく活用する必要があることは言うまでもありません。ただ、日本の「社会起業」とか「ソーシャルビジネス」というものを語っている側の間でもそれが何のことを指しているのか不明瞭で、まだ内実が伴わないうちに下手に注目だけ集めると、有象無象が群がり収集のつかないことになってしまう危険があります。

アメリカの例を見ていても、メディアが注目し始めた頃には、しっかりとした実績をもった成功例が数多くあり、明確なビジョンを持ってメッセージを主体的に発信できる態勢がある程度整っていましたが、日本ではまだ成長段階がそこまで至っていませんので、あまり世間の注目を集めることに躍起にならない方がいいでしょう。

ましてやアメリカに比べて、財団などのサポート基盤や、民主導のソーシャルイノベーションや起業家精神に関する一般の理解といった環境が整っていない中で、日本のソーシャルビジネスには、より戦略的に業界全体を育てていくという思考が求められると思います。

2009年4月23日木曜日

無念!

みなさんに応援いただいていたDell Social Innovation Competitionでしたが、残念ながらKAIENの決勝進出はならず。ご投票いただいた方々には申し訳ない結果となってしまいました。

でもまぁ、フィードバックはもちろん参考にするにしても、結果については、勝負は水物だから仕方ないとスッパリ気持ちを切り替えて、実際の立ち上げに向けてCEOのSさんを中心に頑張っていきます。

これからも是非とも応援よろしくおねがいいたします!

2009年4月19日日曜日

KAIENがTulane Business Plan Competitionで優勝しました!


昨年このブログでも、高機能自閉症の人たちの強みを活かしてB2Bでソフトウェアテストのサービスを提供する社会起業について何度か書きましたが、その後CEOのSさんの八面六臂の大活躍で、来年の本格的な立ち上げに向けて、どんどん準備が進展しています。詳しくは、こちらのKAIENホームページをご覧ください。

そんな中、昨夜Tulane Business Plan Competitionの社会起業部門の決勝で、KAIENがClean India (バージニア大)PolicyPitch.com (チューレーン大)をおさえ、優勝賞金2万ドルを獲得したという朗報が舞い込みました。
私自身は、決勝プレゼンがウォーレン・バフェット氏とのミーティングと同じ日だったので、残念ながら大会会場でSさんと喜びを分かち合うことはできませんでした。

自信を持って臨んだGlobal Social Venture Competitionでは、準決勝敗退という結果に終わりやや落胆していただけに、今回の勝利は私たちのチームにとって大きな弾みになりそうです。この勢いで、もう一つ参戦しているDell Social Innovation Competitionでも決勝に駒を進めたいもの。

このブログの読者の方の中には、同コンペティションの一次で投票してくださった方も多いかと思いますが、100チーム中3チームに絞られる準決勝でも、審査員団の評価の際に一般投票による得票数が考慮されますので、是非こちらの投票の手順をご参照の上ご協力のほどお願いいたします。(一次での投票結果は白紙に戻され、準決勝のため改めて投票していただく必要があります。。)準決勝投票の〆切は4月21日(日本時間では22日午前7時)と目前に迫っていますが、得票数で苦戦していますので、ご友人、お知り合いにもお声をかけていただけるとありがたいです。

2009年4月18日土曜日

「オマハの賢人」とのツーショット

「オマハの賢人」の愛称で知られるウォーレン・バフェット氏に会う機会があり、ネブラスカ州はオマハに行ってきました。



先月のミット・ロムニー氏との座談会の時と同じようなプロセスで、希望者の中から書類選考によって我が校から27人の学生が選ばれ、オマハで他校(シカゴ大、コロンビア大、MIT、他3校のビジネススクール)からやってきた学生たちと合流しました。

ご承知の通り、バフェット氏といえば米フォーブス誌による世界長者番付でビル・ゲイツに次ぐ2位の大富豪で、投資家の神様みたいに扱われている人物ですが、実際に会ってみると、一見素朴で実直な好々爺といった風情で、例えばレストランとかで隣に座ってても、ちょっと気付かないかもしれないと思われるほど。入ってきた途端に部屋中にカリスマがみなぎるようなミット・ロムニー氏とは対照的で、その辺りが、他の人に一目置かれてなんぼの政治家に転身して成功したビジネスマンと、我が道を行く投資理念と経営手腕だけを頼りに莫大な富を築いたビジネスマンの違いなんでしょうか。

でも話しはじめると、冴え渡る知性と円熟した知恵がほとばしり、さすがに一代で世界の経済界の頂点に登りつめた人物だなと納得。その中からいくつか心に残ったバフェット氏の言葉を紹介しましょう。

  • 「もしも25歳に戻ることができたとしたら、何をするか?」という質問に対して) 現実の人生でしたことと特に変わらないことをするだろう。人に雇われず(work for myself)、自分の好きな仕事をできれば(do what I love)それで良い。
  • 自分がうまくやってると思えることをできていればそれで幸せで、財産の桁が増えることなんて大切じゃない。(I was happy doing what I was doing as long as I felt successful, and the number of zeros didn't really matter)
  • 私がやっていることをするのには脳味噌はあんまり必要ない。もしもIQが130以上ある人は、超過分を誰かに売ってしまっていい。投資に重要なのは自分の頭で考える能力、それに必要な程度の知性、そして何より大事なのが近視眼にならないでいられる気質(temperament)だ。
  • 短期投資で勝てる方法を私は知らない。私は、勝ち方が分かっている自分のゲームで戦う。(I don't know how to win in short-term investments. I play my own game that I know how to win.)
  • 自分の子供達に各々の財団を用意した後、自由にやらせ一切運営や活動内容に口出しはしなかった理由として) フィランソロピーってのは長期で考えなくてはならず、2-3年で結果についてどうこう言えるものではない。
  • 環境の問題は深刻だ。既存の市場システムに手を入れて、未来の世代へのコストを勘案する(modify the market system to take into accout future costs)ようにしないといけないが、問題はそのやり方だ。いずれにしろ、人々に自己利益に反する行動を取らせるのは極めて難しい。私がオバマに投票した理由の一つは、彼はこの問題をより良く理解していて、人々が理解できるように説明し、説得する能力があると思ったからだ。
  • 「将来どの産業が発展すると思うか?」という質問に対して) 20年-30年後を見通して、どの産業が発展するか言い当てることは不可能に近い。インターネットがどれだけビジネスに影響を与えるか、95年当時ビル・ゲイツ等と話し合った時には誰も想像がつかなかった。ただ言えるのは、人間は人間の潜在能力をより良く活用できるシステム(system that unleashes human potentials)を生み出し続けてきたし、今後もそうし続けていくだろうということだ。

機知とユーモアに富んだ応答で、2時間余りにおよんだミーティングの時間はあっという間に過ぎていきました。昼食は、バフェット氏が長年通っているというPiccolo Pete's Restaurantで、彼の奢りでステーキをご馳走になりました。

その後、なんと参加した学生一人一人とツーショットでの写真撮影というサービスぶり。もちろん彼にとって一銭の得にもならないのに、いやな顔一つせず、200人近い学生と茶目っ気たっぷりに色んなポーズでの写真撮影のリクエストに応じる姿には感嘆させられました。信じがたいほど気さくな方で、人と接するのを心底楽しんでいらっしゃる様子でした。いやー、ほんと頭が下がります。

2009年4月7日火曜日

ビジネスウィーク誌が選ぶ『アメリカの最も有望な社会起業家』

米ビジネスウィーク誌が選ぶ『アメリカの最も有望な社会起業家 (America's Most Promising Social Entrepreneurs)』25組が発表されました。

友人のSara OlsenさんとBrett GalimidiさんSocial Venture Technology Group)が選ばれたと聞き、チェックしてみたところ、Microfinance International Corp.のCEOにして日本人初のアショカグローバルフェローの枋迫篤昌氏も入選していました。

今回発表された25組から、4月26日までの一般投票でトップ5組が選ばれるそうなので、是非応援しましょう!