2007年12月8日土曜日

「社会貢献価値」取引と排出権取引の違い

私たちの「社会貢献価値」取引所創設のプロジェクトにアドバイザーとして参画してくれている一人に、HIP InvestorのCEOのポール・ハーマンがいます。彼から最近聞いた話では、排出権市場で「社会貢献価値」も取引できないかというプランを構想している人たちがいるそうです。

確かに、一見すると排出権市場も、それまで市場価値の無かったものに市場価値を与えることで、外部性不経済を内部化したということで、「社会貢献価値」取引所のアイデアと似ているように見えます。ただ、排出権市場で「社会貢献価値」をどうやったら取引できるのか、どうもぴんと来ない。私が考えるには、根本的に排出権市場は「社会貢献価値」を扱えるようにはデザインされていないのです。

排出権取引は、あくまで政府が温暖化ガスの排出量を規制することによって、人為的に希少性を作り出すことで、「排出権」という目に見えないものに価値が与えられて、それを取引できる場が用意されたことで成り立っています。つまり、ここでの価値の源泉は、政府がもつ強制力なのです。 ところが、政府が企業や個人に、「社会貢献価値」をそれぞれ何ユニットと割り当てを決めて、(納税のように)義務として拠出させるといったことは、ちょっと非現実的すぎます。さらに、「社会貢献価値」は、二酸化炭素の排出量よりも測定がはるかに困難です。「社会貢献価値」が取引されるには、具体的かつ測量可能な便益が見返りとして無ければなりません。

株式市場にしても、排出権市場にしても、すでに機能している既存の仕組みから学ぶことは重要です。でも、そのまま便乗または流用しようとするのは、それはやはり無茶というものだと思うんだけど。


P.S. 排出権取引といえば、私のミシガン大学留学時代からの畏友の吉高まりさんが、この分野における日本でのパイオニアの一人として、10月にNHKのザ・プロフェッショナルに出演されていました。私は滞米中なもので放映時は見ることができず、家族に録画を頼んでいたんですが、先日のサンクスギビング休暇で東京に戻ったときにチェックしたら、残念ながら録画失敗していました。楽しみにしていたのに…。仕方ないので、日経ビジネスオンラインの茂木健一郎のコラムを読んで我慢。

2 件のコメント:

  1. いや~、すごい偶然です!昨日偶然購入した「日経WOMAN」の、ウーマン・オブ・ザ・イヤーの8位に吉高さんが選出されています。
    「途上国で排出権を作るビジネスモデルを構築した」ことが受賞理由で、すごい女性だなぁと思っていました。彼女が影響を受けた本で「成長と限界」(ドネラ・H・メドウズ著)で、環境ビジネス業界に携わる人には必読書だそうで、読んでみたいと思っていました!

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  2. Wow!それは知りませんでした。教えていただきありがとうございます!早速まりさん(&ミシガン時代の仲間たち)におめでとうのメールを打っておきました。

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