2008年1月13日日曜日

サンフランシスコでのネットワーキング - その2

サンフランシスコでの2日目は、ノンプロフィット・コンサルティング・ファームを3社訪問しました。

1. FSG Social Impact Advisors

米国のサンフランシスコ、ボストン、シアトルと、スイスのジュネーブの4ヵ所にオフィスを持ち、約50人のスタッフを擁するノンプロフィット・コンサルティングの雄。設立者の一人が、戦略論で有名なマイケル・ポーターで、彼は今もシニア・アドバイザーの一人として関わっています。

ノンプロフィット・コンサルティングの仕事が実際どんなものか少し体感できるようにと、簡単なケース・スタディまでさせてくれました。私が本業のビジネス・コンサルの仕事で使っているスキルが、そっくりそのまま活かせそう。

2. Business for Social Responsibilty (BSR)

CSRに特化したコンサルティング・ファームで、サンフランシスコ、ニューヨーク、パリ、ミュンヘン、広州、香港、北京にオフィスを持っています。

会員制度を採っていて、会員企業は年会費を払うことで各種のリサーチ情報提供やイベント参加といったサービスを受けられる上に、個別コンサルティングサービスの割引が適用されるという仕組みのようです。昨今のCSRへの関心の高まりから、会員企業数が増加しているのかと思いきや、実は以前は400-500社あった会員企業数が現在は約250社弱まで減っているのだそうです。これは、数年前にビジネスモデルを見直して、大企業向けのサービスにフォーカスをシフトしたからということらしいです。

マネージャーのRaj Sapruさんによると、米国の企業より欧州の企業の方が、CSRに関する認識の高さや理解の深さにおいて、10年くらい進んでいるのだそうです。そういえば、FSGでも、フィランソロピーの進化は米国が、CSRの進化は欧州がより先を行っているという話しがありました。

少々雑な議論になりますが、米国型資本主義では、企業は純粋に経済的価値を追求する存在という考え方が強いのに対し、ネオ・コーポラティズム的な協調体制の面影が残る欧州では、企業は社会的存在であり続けたがために、社会的価値の推進を担う存在として、米国では企業でなく財団により牽引する形でフィランソロピーが発達し、欧州ではCSRが発達したということなのだと考えられそうです。

あと興味深かったのは、CSRの変遷についての議論。

① CSRが傍流でしかなかった時代 (~80年代)
     ↓
② 受動的CSRの時代 (90年代)
     ↓
③ CSRと本業の戦略的融和の時代 (2000年頃)
     ↓
④ 社会的価値を積極的に創出するCSRの時代 (現在~)

考えるに、ポーターの言う「戦略的CSR」は、 ③の段階の話。乱暴に言ってしまえば、CSRをどうせやるんだったら、本業のボトムラインにも貢献することをしようよ、って考え方です。それを超えたCSRが本当に今後生まれてくるのか?昨日見たClif Barのようなダブル・ボトムラインを追求する会社が例外的存在でなくなるのか?私自身はちょっとそれはナイーブにすぎる希望ではないかと考えているのですが、一応その可能性についても注目したいと思います。

3. Bridgespan Group

Bain & Companyの系列。オフィスは、ボストン、サンフランシスコ、ニューヨークの3ヵ所で、スタッフは総勢約150人。

ノンプロフィット・コンサルティングの分野で多分最も有名なファームだと思いますが、FSGがジュネーブにオフィスを最近設立するなど、いち早く国際化に取り組んでいるのに対し、今のところは国内市場にフォーカスしています。

FSGは学部生の新卒採用はせず、ビジネススクール卒業生でもコンサル経験者などの即戦力のみを採用するのに対し、ベインなどの普通のコンサル・ファームと同じように学卒もとればMBAの学生もとります。ただ、FSGと違って、まだ米国市民権保持者以外には雇用の門戸が開かれていません。

4. 交流会

他にも、サンフランシスコ市内のカフェで交流会を開き、以下の企業・組織の方々に来ていただき、コーヒー片手に色々な話を聞かせてもらうことができました。

  • Blu Skye: 社会的および環境的価値を追求する企業のための戦略立案などのサービスを提供しています。
  • The Broad Foundation: 教育、科学、芸術の分野でイノベーションを促進することを目的とした財団。
  • Education Pioneers: MBAなどの専門的スキルを持つ大学院生が、小・中・高校に行き、マネジメント改善などを行うというプログラムを展開しています。
  • IDEO: 世界最高といわれるデザイン・ファーム。バリアフリーの公共施設とか環境負荷の低い商品開発など、社会インパクトや環境インパクトを考えたデザインを専門にするスタッフもいます。
  • InsideTrack: 学生向けのコーチング・サービスを提供する会社。
  • Gap: ご存知、アパレルの大手企業。CSRに力を入れています。
  • Good Capital: Social enterpriseのポートフォリオをつくり投資商品として販売するなど、社会起業家の資本調達を助けるための業務を展開。
  • HIP Investor: 経済的利益と社会的貢献のダブル・ボトムラインを追求する企業へのコンサルティングを行っています。CEOのPaul Hermanさんは、私たちの「社会貢献価値」取引所プロジェクトのアドバイザーになってくれています。(彼の前歴がまた華やかで、McKinseyAshokaOmidyar Networkと渡り歩いてきています。)
  • Net Impact: 社会貢献に関心のあるMBA学生およびビジネス・リーダーの組織。米国を中心に世界に広がりつつあります。
  • Room to Read: 創業者ジョン・ウッドの著書『マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった』が最近日本でも出版され話題になったので、ご存知の方も多いと思います。
  • Salesforce.com Foundation: 社会貢献をするというのはそんなに難しいことじゃないんだと企業に呼びかけています。 「自社株式の1%を寄付できませんか?自社製品の1%を寄付できませんか?従業員の時間の1%をボランティア活動に充てることはできませんか?」
  • Social Venture Technology Group: 私たちの「社会貢献価値」取引所プロジェクトのアドバイザーで、Global Social Venture Competitionの創始者の一人でもあるSara Olsenさんにより2001年設立。社会的価値の測定に関するメソドロジーの開発やアドバイスを行っています。

2 件のコメント:

  1. cloudgrabber-san

    Thanks so much for very resouceful information on the subject of social entrepreneurship. I was also impressed wit h your project on social value exchange system. Hope all the ideas will be realized soon!

    ichi

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  2. コメントありがとうございます。ichiさんのブログも拝見させていただきました。今後も色々と情報交換して行きましょう!

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