2008年1月26日土曜日

ビル・ゲイツの「創造的資本主義」

ビル・ゲイツが、一昨日ダボスの世界経済フォーラムで行った講演で、「創造的資本主義」の必要を訴えて、大きな反響を呼んでいるようです。

資本主義経済が持つすばらしい特長は、インセンティブを有効に活用することで、人間一人一人が持つイノベーションを生み出す力を最大限に引き出して、価値創出の持続的拡大のサイクルを実現するという点にあります。ただ、資本主義が副産物として生み出す富の偏在は日々加速度的に進行しており、世界の人口の半分以上にあたる貧困にあえぐ人々は、そうしたメリットを享受できず取り残されています。

そうした資本主義の特長をより創造的に活用し、これまで資本主義経済の外部に置かれていた問題の解決に向けようという考え方が、ゲイツの「創造的資本主義」で、これはムハマド・ユヌスが提唱している社会性ビジネスの考え方にもまた密接に関連しています。

ゲイツはこの創造的資本主義のコンセプトについて、昨年ハーバード大学の卒業式での式辞でもすでに語っています。そこで彼は、「みんなが他の人を思いやる気持ちが足りないのが問題なのではない。複雑に入り組んだ現実に直面して、そうしたみんなの気持ちを活用することができずにいるのが問題なのだ」と言った後、「問題を認識し、解決策を見出し、そのインパクトを理解することができるようにして初めて、思いやりの気持ちが実際の行動へとつながる」と述べていますが、これには強く賛同します。

「問題の深刻さ・重要さを正しく認識できるようにする仕組み」、「解決策のイノベーションがより生まれやすくなる仕組み」、そしてその「インパクトがよりよく理解できるようにする仕組み」は、 どれも社会価値創出のためのエコシステムを構成する根幹の要素であり、これらが創造的資本主義への進化を促進するのだと考えています。私が現在友人たちと取り組んでいる「社会貢献価値」取引所のプロジェクトの意義もまさにここにあります。

2 件のコメント:



  1. 『みんなが他の人を思いやる気持ちが足りないのが問題なのではない。複雑に入り組んだ現実に直面して、そうしたみんなの気持ちを活用することができずにいるのが問題なのだ』

    確かにその通りかもしれないですね。
    人間は本質的に他人を思いやる気持ちを持っていると思います。だが、日本のことを言えば、相当深く考える経験をしたことがないと、なかなか、その本質にはたどり着かないと思います。

    だから、ビルゲイツが、創造的資本主義という言葉を用いたインパクトは、資本主義のプレーヤーである企業という存在に対しては巨大であり、今ある流れを加速させるものだと思います。

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  2. > コシロックさん

    このエントリーを書いたときは新聞記事と、ニュース映像で編集された短い講演映像しか見ていなかったのですが、改めて今日YouTubeでノーカット版を見て、鳥肌がたちました。

    こんなに自分の持っているビジョンに近い話をする人を初めて見ました。

    彼なら「今ある流れを加速させる」以上のことをするかもしれません。

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