2009年8月8日土曜日

GroFin Uganda: 援助と投資

7月28日 (火) 午前 【ウガンダ】

「途上国の発展に必要なのは、援助か投資か」、という議論が最近また盛んになっている。

これについて、アフリカ中に投資しているGroFinのウガンダオフィス代表にこの6月に就任したばかりのWalter Ogwalさんは、「Don't throw the baby out with the bathwater(大切なものを、捨てるべきものと一緒にして捨ててしまってはならない)」と語る。

援助のやり方が悪くて、被援助国の経済やその政府・市民のインセンティブを歪めてしまい、かえって発展の妨げになるという事例は確かに多い。しかし、だからといって、すべての援助を悪者扱いするのは間違っている。

援助もやり方次第であり、角を矯めて牛を殺すようなことをしてはならない。援助と投資は単純な二分論で考えるべきではなく、両者をうまく補完しあいながら使うことで、完全な商業資本の投資だけでは到底解決できない問題を解決することができる。

GroFinは、シェル財団や、アフリカ開発銀行(AfDB)、英政府系のプライベートイクイティのCDC、それに世銀グループのIFCといった、純粋な商業資本とは少々毛色の異なる投資家から資金を集めて、アフリカの中小企業に投資するファンドだ。
  • GroFinでは、"Support beyond finance"というモットーを掲げているとおり、資金提供をする前の段階から、中小企業に欠けているファイナンスの知識を補完するため、資本構成の設計に関するコンサルティングを行い、また資金提供後もキメ細やかな経営支援を提供することに力を入れている
  • 資金提供のやり方も、アップサイドが限られているけれど中小企業の経営者が理解しやすい長期の債権投資(debt investment)が主で、株式投資(equity investment)はあくまで投資先企業の要望がある時のみ行う。株式投資は現在ポートフォリオの20%未満
  • その他に、成果報酬というかたちで、投資先企業の業績向上に連動して収益が得られる仕組みも用いて、投資先企業とファンドがリスクを共有するようにしている
  • 投資先は、マイクロファイナンスが対象とする個人事業よりは大きいが、年収規模5億円以下、総資産規模3億円以下、従業員100人以下という中小企業。債務返済経歴が3年以上あることが望ましいが、全く新規のベンチャーも対象とする。担保は必須条件ではない
  • 投資規模はだいたい一件当たり500万円から1億円程度だが、それ以上になることもある。ウガンダではこれまで約30社に投資している
  • 投資期間は6年以下で、だいたい3-5年
  • 債務の年利率は、成長性、リスク(←担保の有無、マネジメントの質、債務返済経歴、カントリーリスク, etc.)、リスクフリー利率、予想為替レート、予想インフレ率を勘案して個々に決めるが、銀行(25%の上下)より高め、マイクロファイナンス(35%程度)より低めに設定
投資先企業に資金(financial capital)を提供するだけでなく、企業統治や運営に深く関わって経営支援を行い(human captial)、さらにサプライチェーンや顧客、提携先といったビジネスパートナーを紹介する (social capital)などして、企業価値の最大化を実現するのが、プライベートイクイティ・ファンドのビジネスモデルということになっている。しかし実際のと ころは、レバレッジにものを言わせて経営権を掌握した後は、リストラをしまくるなど即効性の高いコストカットと短期で見栄えのする成長施策を打つか、さっ さと企業を解体してしまって、できるだけ早く売りさばくということも多い。

中小企業向けのプライベートイクイティがあまり振るわないのも、規模の大きなディールと比べてかかる労力は大して変わらないのに、リターンが小さいから。 比較的human capitalやsocial capitalの重要性の比重が高いといわれるベンチャーキャピタルでさえ、その実情は単なるファイナンス屋というところも多いと聞く。

そうしたファンドが善いとか悪いとかの問題ではなく、彼らが使っている資本が純粋な商業資本であり、より少ない労力で効率よく利益を上げることを追求するようにインセンティブの構造が出来上がっている以上、このような流れになるのは当然というべきだ。

援助的色彩を持つ投資という、GroFinのユニークなビジネスモデルは、純粋な援助資本でも純粋な商業資本でもない、「開発を目的とした投資」という価値観を共有する機関・投資家から資金を集めているからこそ可能になっていると言えるだろう。

最後に、先進国における投資と比べて、途上国投資の特に難しい点として、Walterさんが挙げてくれたのが、
  • 投資先企業、業界、マーケットに関する情報・データの不足
  • 資本市場の未整備による資金調達の困難
  • 不明瞭かつ矛盾する法規制
  • 戦略マインドや経営スキルを持った人材の不足
「特に人材の問題は深刻だ。ウガンダも含めて多くの国では、有能な人材はみな官職につきたがる風潮が強く、起業家になろうという人は極めて変わり者扱いされるからね。」

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3 件のコメント:

  1. アフリカ編、楽しく拝読してます。
    最近、core SRI側から"Sustainable Investment"とか"Social Investment"と呼ばれる分野を眺めてますが、いろんなモチベーションを持つ投資家がこのエリアに流入していて、ESGを考慮した投資のパフォーマンスをどう評価するのか難しいと感じてます。

    またアフリカからのアップデート期待してます。

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  2. > ryusaitoさん

    パフォーマンス評価は、確かに難しい問題ですが、不可能な話ではないと思っています。(このあたりの話はいつかこのブログで書かなくてはと思いながら、ずっと先延ばしになっていますが、そろそろ書かないと。。)

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  3. とても魅力的な記事でした!!
    また遊びに来ます!!
    ありがとうございます。。

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