2008年12月6日土曜日

スタディトリップの成果

今朝のEntrepreneurial Financeで、秋学期の授業は終了。今学期私が取った授業は運良くin-class examがなく、レポート提出やtakehome examも今日で全て終わり。一足早く明日から冬休みに入ります!

当初は中東旅行なども企画していたのですが、諸々の事情により南米4カ国(チリ→アルゼンチン→ウルグアイ→ブラジル)を巡る旅に変更。

明日チリに飛び、そこから2週間のクルージングで南米大陸の南部をぐるっと回ってブラジルまで行き、あとはリオでまた2週間ほどゆっくり滞在するというなかなか贅沢なプラン。

それにしても、秋学期は比較的緩やかに始まり、授業もこれまでになくまじめに出ていたのですが、11月に入ったあたりからは突然全てに加速度がついてきて、最後の一ヶ月ほどは疾風怒濤の如く過ぎていきました。

まぁその一番の原因は明らかで、サンクスギビング休暇を利用して日本で行ったスタディトリップ。訪問先のアレンジをしたSさんの大活躍で、当初の想定以上に充実したスケジュールになり、東京、名古屋、大阪で
  • 障害者雇用に力を入れている企業2社
  • 自動車部品メーカー2社
  • 組込みソフト検証業者1社

を訪問したほか、ご自身が発達障害の方4名、組込みソフトに詳しい大学教授1名、自閉症者の就労支援を研究されている大学教授1名と大学院生1名にお会いすることができました。

強行軍でちょっと体力的にも無理しながらも頑張った甲斐があって、期待以上の成果がありました。自動車部品メーカー2社からは、起業の暁には一緒に仕事する機会を前向きに探りたいというお言葉をいただき、さらに個人的に出資をしたいと言ってくださる方まで現れました。このスタディトリップで得られた知見と自信のおかげもあって、こちらに帰ってきて今週行ったVenture Formulationのクラスの最終プレゼンは、ジャッジのベンチャーキャピタリストや起業家の方にも大変好評でした。

次のステップとしては、2009-2011を準備期間としてその間にパイロットプロジェクトを実施するために、協力企業や出資者を集めることを考えています。そのため冬休みには、Sさん一人でもう一度日本に戻り、さらに色々な関係者とネットワーキングをすすめることになっています。

2008年11月17日月曜日

Net Impact Conference

11/13-15にフィラデルフィアで開催されたNet Impact Conferenceに行ってきました。

ビジネススクールに通う学生の中で社会問題やノンプロフィット活動に関心のある人たちがクラブを作り、各校のそうしたクラブのネットワークとして1993年に生まれたのがNet Impactです。今ではビジネススクール以外の大学院生や学部生、それに社会人まで加わり、メンバー数は1万人以上にのぼります。支部も世界中に広がっていて、日本にも支部があります。

日本ではビジネススクールというと、なんだか個人的な金儲けや栄達にだけ関心がある人が行く所で、社会問題の解決や公共善の増進などとはやや縁が薄い存在なんていうイメージで受け取られがちです。しかし実際には、ビジネススクールの学生のこうしたイシューへの関心はとても高く、ケロッグでもSocial Impact Club(Net Impactの支部)はConsulting ClubやFinance Club等と並び、学内最大規模のクラブの一つになっています。

フィラデルフィア土産、Liberty Bellのミニチュア

今年のテーマは“The Sustainable Advantage: Creating Social and Environmental Value"。Room to ReadのCEOのJohn Woodや、World Wildlife FundのCEOのCarter Roberts等による基調講演のほかに、

  • Corporate Social Responsibility
  • Energy and Environment
  • International Development
  • Social Impact Finance
  • Social Entrepreneurship

という5つのトピックに関連した多種多様な分科会が開かれました。分科会の数が多すぎて、全てを覗くことはとてもじゃないけど不可能ですが、私が参加した中から感想をいくつか。

  • 一番印象に残ったのは、Mission MeasurementのCEOのJason Saulさんによるワークショップ。彼は、私が現在board memberとして参画しているCenter for What Worksのco-founderでもある。「単に漠然と社会のためになることをするというCSRは、もはや過去の遺物("CSR is dead")でしかなく、今後はCEOが追っている経営指標に対してどのような効果があるのかを示すことができるようにならなくてはならない」という彼のメッセージは、今まで聞いたどんなCSRに関する話よりも私の腑に落ちた。ポーターの言う「戦略的CSR」を、抽象論からオペレーショナルなレベルに落とし込むためには、彼らが勧めるようなファクトベースのマネジメントアプローチが必要になるのだろう。
  • ソーシャルビジネスを制度面で支援する動きが、加速度的に活発になっている。Low-profit Limited Liability Company (L3C)という新しい法人形態が今年の4月にバーモント州で初めて採択され、非営利組織でなくても財団からのProgram Related Investment (PRI)が受けられるようになった。B Labを中心とするソーシャルビジネスの連合体もプレゼンスを高めていて、B Corporationの法制化を目指している。 近年政府がソーシャルビジネスに対する積極的な支援策を次々と打ち出している英国に比べ、米国は制度面でやや出遅れている感があるため、オバマ新大統領に対する期待は高い。
  • 今年のオーガナイザーがファイナンスに強いWharton Schoolだったせいもあってか、昨年よりややファイナンス絡みの話題が多かった気がする。
  • 社会資本市場への関心が、昨年より格段に高まってきているのを感じた。ムハマド・ユヌス氏が2006年ノーベル平和賞の受賞スピーチや『Creating a World Without Poverty: Social Business and the Future of Capitalism』で言及したことによる効果が大きいようだ。彼が言っていることは特に画期的でもなんでもないが、影響力は絶大。B Labの創始者のJay Coen GilbertさんやBart Houlahanさんと話をした時に教えてもらったMission Marketsなど、新しい取り組みがそこら中で始まっている。ただ、みんなソーシャルビジネスのための株式市場を考えている。個人的には、「ソーシャルビジネスに注目するあまり非営利組織のニーズを見過ごしてしまっているが、それでよいのだろうか」、「ソーシャルビジネスにしても本当に株式市場が最適解なのだろうか、株式以外の資本の方が少なくとも現段階では有効なのではないか」、という疑問が残る。
  • Wharton Social Stock Exchangeというシミュレーションに参加したが、完全に期待はずれ。シミュレーションのインターフェースはなかなか洗練されているが、単なる普通の株式市場に、企業活動の社会的側面に関するニュースが流れてきて、それに市場参加者がどう反応するかをみるだけのもの。肝心な「既存の資本市場で扱うことができないでいる社会的価値という外部性をどう内部化するか」という問題に関して全く答えておらず、"Social Stock Exchange"の名に値するものではないと思った。

2008年11月8日土曜日

Kivaの創始者からのフィードバックと、Ashoka Fellowとの協働プロジェクト

今学期は、高機能自閉症の方を雇用する社会起業プロジェクトにフォーカスをシフトしていますが、平行して「社会貢献価値」市場プロジェクトの方もぼちぼち仕込んでいます。自分たちのアイデア自体にエキサイトしていた段階から、一歩退いて、様々な人からフィードバックをもらいながらアイデアを「発酵」させている状況といえるかもしれません。

先月Kivaの創始者のJessica Jackley Flanneryさんが、Innovating Social Change Conferenceでの基調講演のためにKelloggを訪れた時に、少しお話をする機会があり、私たちの社会貢献価値市場プロジェクトについてもちょっと触れたところ、関心を示してくれました。そこで、メールでコンセプト説明資料とビジネスプランの草稿を送ったのですが、主に

  • 需要サイド(Social enterprises)、供給サイド(Social investor/Donor)の双方に、このような斬新な社会金融システムへのニーズが本当にあるのか、という疑問に対して説得力がまだ不足している。この点を補うためにも、Kivaを含む既存のプレイヤーが持つ長所と欠点のより詳細な分析を示す必要がある。
  • 現在のビジネスプランでは富裕層をまずターゲットとすることになっているが、もっと幅広い層の参加を促進するための工夫はできるのではないか。
という二点のフィードバックを頂きました。Jessicaさんは、
『To be clear, I think this is quite good! Just wanted to provide some feedback that may illuminate ways to make the doc even better.. Hope this is helpful and pls keep in touch as things develop.』
と言ってくれているので、今後また改良を加えた後に相談にのってもらえればと思っています。

来学期(2009年1月~3月)には、ブラジルのサンパウロ証券取引所(BOVESPA)が開設しているEnvironemntal and Social Investment Exchangeの発展型を開発するというプロジェクトをAshoka FellowでもあるCelso Greccoさんと一緒に実施することが決まりました。このプロジェクトはThe Global Exchange for Social Investment (GEXSI)との提携により実現したもので、フィールドトリップの旅費はKelloggのThe Carol and Larry Levy Social Entrepreneurship Labから支援をうけることになっています。

この一年間で、このまだ狭い「業界」の色々な人と話をしてきました。そのうちの多くの方が、「"Social Stock Market"を創ろうという掛け声のもとにこれまで出てきた他のどんなアイデアよりも、独創的で、良く練られている」と言ってくれる一方で、「ただ時代の先を行き過ぎていて、実現するには大いに難航する可能性がある」という懸念を示しました。事業コンセプトを、机上の空論を離れ、できる限りシンプルで実践的な形に進化させていかないとならないわけですが、BOVESPA/GEXSIとのプロジェクトは、そのためにも絶好のlearningができそうなチャンスになりそうです。

2008年11月4日火曜日

スタディトリップを敢行!

現在自動車業界では、急増する組込みエンジニアへの需要を、
  1. 社内または子会社
  2. 国内ソフトハウスへのアウトソースまたは派遣会社
  3. インド・中国等へのオフショア
で対応していますが、概して他業界に比べて2や3の取り組みが遅れています。1>2>3の順で円滑なコミュニケーションやクオリティの確保もしやすい反面、コストも高くなります。また、フレキシブルな労働力調整(現況では特に人員増加)が可能なのは逆に3>2>1の順になります。

そうすると、単純に言えば、2と同等または少し高いくらいのコストでも、1とほぼ同等のクオリティを提供できれば十分勝算があるといえそうです。そのためには、一番の工夫のしどころになるのが、高機能自閉症やアスペルガー症候群の人たちが本当に能力を発揮でき、それを顧客企業に評価してもらえるような環境・システムの作りこみだと考えています。
  • トレーニング
  • 業務プロセス
  • プロジェクトマネジメント体制
  • 顧客とのコミュニケーションインターフェース
  • オフィス環境
といった諸要素を、高機能自閉症やアスペルガー症候群の方の特性にあわせ、なおかつ顧客のニーズにより良く応えることができるように、根本から見直してデザインしなおす必要があります。

この数週間で日米の自動車業界、組込みソフト業界、それに自閉症支援専門家の方たちにインタビューをしまくって、「これは行けそうだ」という感触がだんだん強まってきました。しかしそうは言っても、やはり現場を見ないことには、どうにもピンと来ないことが沢山あります。

そのため、思い切って今月後半のサンクスギビングの休暇を利用して、Sさんと私で日本の自動車部品メーカーやソフトテスト会社を訪問することにしました。訪問先の企業から、いくつか見学OKとのお返事をいただき、目下日程を調整中です。

ただ、できるなら自閉症の方の就労支援に詳しい方と一緒にこうした現場を訪問できれば、収穫は数倍になるはず。この分野で著名な大学教授数人ともお話させていただいたのですが、生憎なかなか日程が合いませんでした。

というわけで突然ですがこの場を借りて、11月24日の週で、東京、大阪、名古屋の各地で、私たちと一緒に企業訪問をしてくださるボランティアを募集させていただきます。もしも、このブログをお読みの方のお知り合いに、

  • 自閉症者の就労支援の専門家(特に高機能自閉症、アスペルガー症候群)
  • 自閉症スペクトラム支援士
  • ご自身が高機能自閉症、アスペルガー症候群で、ソフトウェア開発のご経験がある方

がいらっしゃったら、是非ご紹介いただけると有難いです。

2008年10月26日日曜日

社会起業で、高機能自閉症の方のニーズに適合した職場環境を - その4

Thorkil Sonne氏が創ったSpecialisterneでは、トレーニング、オフィス環境、業務プロセス、それにコミュニケーション体制が、高機能自閉症やアスペルガー症候群の人たちの特性にあわせてデザインされています。こうして、高機能自閉症やアスペルガー症候群の人たちが持つ弱点をうまくカバーしつつ、強みを最大限に活かすことで、一般のデバッガーに比べて20%も高いパフォーマンスを発揮することを可能にしています。

このモデルを日本に持ち込もうする際に、私たちが現在着目しているのが車載電子機器・部品の組込みシステムやソフトウェアのデバッグです。
近年では、電気・電子機器の高度化・複雑化と、マイクロプロセッサやメモリの性能単価の下落が進んだ結果、より広範な分野で組み込みシステムが採用されるようになっている。洗濯機、炊飯器、テレビ、ビデオ、デジタルカメラ、プリンタ、コピー機、携帯電話、自動車、自動販売機、券売機など、身の回りにあるほとんどの機械には何らかの組み込みシステムが搭載されているといっても過言ではない。』
このように、組込みシステムや組込みソフトウェアの開発・検証に必要なスキルへの需要は急速に拡大しているのに対して、現在日本では全産業で約10万人の組込みエンジニアが不足しているといわれています。

特にこの問題が深刻なのが、自動車業界です。今や「走るコンピューター」とさえ呼ばれるほど自動車の電子化は進んでおり、車載電子機器・部品が車の製造コストの30-40%を占めています。こうした傾向は今後さらに加速することが見込まれており、組込みエンジニアの確保は業界全体の課題となっています。

私たちはここにチャンスを見出し、自動車業界に特化して、組込みシステムやソフトウェアのデバッグおよび検証を行うビジネスができないかと考えています。とは言え、実は困ったことに、私たちのチームには、自動車業界に詳しい人も、ソフトウェア・エンジニアリングの知識を持っている人もいないため、現在はこれらの業界関係者や自閉症支援専門家の方たちに必死で聴き取り調査をかけているところです。

2008年10月22日水曜日

社会起業で、高機能自閉症の方のニーズに適合した職場環境を - その3

高機能自閉症やアスペルガー症候群を持つ人たちのほとんどは、障害者手帳の交付対象とならないため、これまで雇用支援などの行政による支援の外に置かれてきました。厚労省は、やっと来年度から発達障害者の雇用にも助成金を出す方針を決めたようですが、「大企業は1人当たり年間50万円、中小 企業は1年半で90万円」という額が実際どれほどの効果をもつのかは疑問だと思います。

ほとんどの企業経営者にしてみれば、知的能力が高くても自閉症をもつ人たちについて「不可思議で、取り扱い困難な存在」という程度の認識しかないのが現実でしょうから、
  • 高機能自閉症やアスペルガー症候群の人たちが持つ特有の強みや弱点は何か
  • 彼らの強みをどうすれば活かす事ができ、逆に弱点はどのようにサポートすればよいのか
  • それをすることでどのようなメリットがあり、どのくらいのコストが発生するのか

ということを実例を見て納得してもらわない限り、助成金の果たす役割は極めて限定的になると考えています。

一方慈善団体による自閉症者への援助は、青少年やシニア層を対象としたものが大部分で、成人の場合は知的障害を持つ人に就労機会を提供する共同作業所などの取り組みが細々と行われているだけのようです。これらの活動自体は非常に有益なものだとは思いますが、高機能自閉症やアスペルガー症候群を持つ成人の雇用の問題は、ここでも見落とされがちです。

2008年10月21日火曜日

社会起業で、高機能自閉症の方のニーズに適合した職場環境を - その2

一方、夏休みの間、残ったメンバーで社会貢献価値市場のプロジェクトの今後をどうするか話し合いましたが、どうも意見がまとまりませんでした。主要メンバーの全員が、MBA卒業後は一般企業に一旦就職する(私の場合は元の職場に戻る)予定で、場所もアメリカと日本に分かれることになりますが、私たちのアイデアを実現しようとすると、大変な労力と中長期的なコミットメントが必要になるのは明らかです。この一年間だけでできることとなると、どうにも中途半端になってしまいそうで、議論が行き詰ってしまいました。

そこで思い切って、社会貢献価値市場のアイデアは一度寝かせておくことにして、その間Sさんの起業アイデアの具体化を手助けしようということになりました。私たちがSさんのプロジェクトに魅力を感じた理由としては、以下のような点が挙げられます。
  • 一人息子の将来を案じて、自分で現状を変えていこうとするSさんの思い
  • 障害を持つ人たちを保護の対象として見るのではなく、既製の環境では発揮しきれない能力を持った能動的な存在として捉える考え方と、その実例をつくってみせることによる社会的な波及効果
  • (前回のエントリーへ頂いたコメントにあった言葉を使わせていただくと)「人を組織に当て込むのではなく、組織を人に合わせて作っていく」という発想の逆転
  • 安易に政府や慈善団体の援助に頼らず、できる限りビジネスの視点から自立的で持続可能な解決策を見つけだそうとするアプローチ

そんなわけで、今学期はEntrepreneurship & New Venture Formulationのクラスを通して、Sさんと他の3人の仲間と一緒に、このビジネスプランの策定に専念しています。

2008年10月20日月曜日

社会起業で、高機能自閉症の方のニーズに適合した職場環境を - その1

社会貢献価値市場のプロジェクトを昨年から一緒に進めてきた仲間の一人に、日本人のSさんがいます。今年の6月だったか、その彼から「プロジェクトを抜けようと思っている」という話が出ました。理由をきくと、「高機能自閉症の人に快適な就労機会を提供する社会起業をしたいと考えていて、MBA二年目はその準備に集中したい」とのこと。

Sさんの息子さんは、昨年彼が渡米する直前に自閉症と診断され、現在も奥さんと息子さんは日本にいます。一口に自閉症といっても、症状の現れ方は様々です。一般的には自閉症というと知的障害を伴うイメージが広くいきわたっていますが、知的能力が低くない自閉症者も実は多く(一説には75%)、「高機能自閉症」とか「アスペルガー症候群」といわれます。この二つの厳密な区別は難しいのですが、Sさんの息子さんもそうしたケースです。

こうした人たちは、健常者と比べて全く遜色ない知的能力を持っていても、対人コミュニケーション能力が弱いなどの自閉症特有の困難を抱えているために、多くの職場では受け入れられず、失業率がとても高いのが現状です。

しかし、デンマークにあるSpecialisterneという会社では、高機能自閉症やアスペルガー症候群の人たちが持つ「繰り返し作業で発揮する高い集中力」、「微細な異変・異常を感知する鋭敏性」、「几帳面さ」といった能力を積極的に活用して、マイクロソフトやオラクルなどのソフトウェア会社からデバッグ業務を受託するサービスを提供し、ビジネスとして成功しています。実は、CEOのThorkil Sonne氏の息子さんも高機能自閉症で、彼らが生産的に仕事をできる職場を創りたいという思いから、Specialisterneを興したそうです。

SさんもSpecialisterneのモデルを基に、日本で会社をつくることはできないかと考えていました。

2008年10月18日土曜日

リスの救出作戦

自転車で帰宅途中、道端のゴミ箱から「カリカリ」という音がするのに気づいた。
不審に思って自転車を止めてみると、ゴミ箱から上体が生えたような異様な姿で、リスがもがいていた。
どうやらゴミ箱をあさった後、側面に空いた穴から出ようとして、下半身が引っかかって身動きができなくなってしまった様子。そのまま放置しては、猫か何かに襲われてしまうことになるだろうと思い、助けてやることにした。
ゴミ箱を開け、自宅から持ってきたホウキの柄でお尻を押してやるが、びくともしない。
「押してだめなら引いてみよう」ということで、ゴミ箱を倒し、頭の方から押してやる。
リスが散々もがいた末に、するっとゴミ箱の中に姿を消した。
無事解放されてメデタシ、メデタシ。

2008年10月15日水曜日

MBA二年目 秋学期の授業

今学期は、アントレ関連の授業を、意識的に多く取っています。
  • Entrepreneurship & New Venture Formulation: 学生同士でチームを組んで、自分たちのアイデアを元に、実際にビジネスプランを書くクラス。ここから巣立って実際に起業した卒業生も多い。社会起業の例としては、2006年卒のAndrew Younが設立したOne Acre Fundなんかがあります。
  • Entrepreneurial Finance: 起業家が実際に直面する様々なシチュエーションで使える実践的なファイナンスを学ぶクラス。
  • Business Law for Entrepreneurs: 教鞭を取る現役敏腕弁護士が、「ビジネスローについて、自分のクライアントになる起業家には、是非知っておいて欲しい知識をぎっしりつめこんだ」という授業。同級生の弁護士さんによると、「アメリカのビジネスローを学んでおけば、9割がたの内容は日本でも通用する」ということらしいので取っています。
  • Services Marketing and Management: 私が起業をするとすれば、多分(広義での)サービス業でということになるだろうと思い、取ってみました。前評判もなかなか高く、 伝統的な「モノを売るビジネス」と、「サービスを売るビジネス」では、マーケティングの仕方がどのように異なるのか、という疑問に答えが見出せるかな、と 期待していたのですが、今のところはどうもイマイチ。どっかの誰かが考えた理論的フレームワークを寄せ集めて、その表面を軽くなでておしまい、という感じで、議論の深みとか知見の鋭さにうならされることがない。
  • Values and Crisis Decision Making: 秋学期始めの一週間の集中講義で、二年生の必修クラス。実際に仕事をしていると、危機管理に関して腰を据えて考える機会というのはほとんど無いので、大変興味深かったです。
  • Science Boot Camp: バイオテック入門といった内容の、単位ゼロの特別講義。毎週二時間、専門用語の嵐にさらされています。

2008年10月13日月曜日

シカゴマラソン

サンフランシスコで故障した膝が完治せず、全く練習できないままシカゴマラソン当日をむかえてしまいました。一応出走するも、案の定5マイルも走ると左膝が疼き始め、結局10マイル地点でリタイア。
当分マラソンは諦めたほうがよさそうです。何か膝への負担が軽い運動を探さないと。

2008年8月13日水曜日

ランナー膝になっちゃったみたいです

8月3日のサンフランシスコマラソンでハーフを完走後、しばらく膝や股関節が痛かったので、大事をとって痛みがとれても練習を休んでいたのですが、昨日また試しに走ってみました。

ところが、走り始めるとまたすぐに左ひざの外側に痛みを感じ、1kmも走らないうちにストップ。ネットであれこれ調べてみたんですが、どうやら腸脛靱帯炎、俗に言う「ランナー膝」になっちゃったみたいです。

症状の誘発方法(徒手検査法)として、膝を90度屈曲して外顆部で腸脛靱帯を押さえてから膝を伸展していくと、疼痛が誘発されるgrasping testが有用です。』
という情報を見て試してみたところ、

「イテテテっ、そりゃ痛いわ!」。

主因はオーバーユースです。過剰なランニング時間と距離、柔軟性不足(ウォームアップ不足)、休養不足、硬い路面や下り坂、硬いシューズ、下肢アライメント(内反膝)など、さまざまな要因が加味されています。』
私の場合は特に体がガチガチに硬いくせに、面倒くさがっていつもランニング前後の柔軟を適当にやっていたので、自業自得なのでしょう。

当分しっかり休養して、アイシングとストレッチに勤しむことにします。。。

2008年8月4日月曜日

サンフランシスコマラソン


サンフランシスコマラソンに参加しました。ハーフマラソンを2時間11分23秒かけて完走!30代男性1084人中623位ですから、別に自慢できるような結果ではありませんが、初挑戦で、さらに一ヶ月前に左足首を捻挫してから全く練習できなかったことを考えれば、自分としてはまずまずの出来かなと。


私が走ったのは1st Half Marathonなので、↓ のビデオでいうとPart 2の13マイルまでです。
Official San Francisco Marathon Course Video (part 1)
Ferry Buildingの近く、Mission St. & Embaracaderoからスタートして、ウォーターフロント沿いにFisherman's WharfやGhirardelli Squareを走り抜け、Golden Gate Bridgeを往復、最後にGolden Gate Parkでフィニッシュという見所満載のコース。

ジムのランニングマシンで10マイル走ってみたときは、特に何も問題がなかったので、記録にこだわって無理さえしなければハーフマラソンも軽くいけるだろうと思っていたのですが、甘く見すぎていたことを思い知りました。10マイルを過ぎたあたりから膝から股関節にかけて痛みを感じ始め、最後はラストスパートなんてする余力はぜんぜん残っていませんでした。走り終えてから関節の痛みはさらにひどくなり、2日間まともに歩けないほどでした。こんなの生まれて初めて。


今回の経験を通して、
  1. 脚に無駄に負担がかかるフォームで走っている → もっと全身の筋肉(腹筋、胸筋、背筋)を活用して走るようにフォームを改善する必要がある
  2. 脚の筋肉が十分に鍛えられていないため、負荷が関節に直に行ってしまう → スクワットなどの筋トレも取り入れて、膝や太腿の筋力アップが必要
ということを身をもって学びました。10月のシカゴではフルマラソンを走る予定でいるのですが、相当本気でトレーニングしないと。

2008年8月1日金曜日

La Michoacana

最近ちょっとはまっているのが、アパートのすぐ隣にあるグロッサリーショップで売っているLa Michoacanaのアイス。カリフォルニア州ローカルのマイナーな存在ですが、天然素材だけを使っていて、何より色々なユニークな味の品揃えが魅力。特にお気に入りは下の3種類。

左から、辛子キュウリ味、辛子マンゴー味、ライスプディング味

2008年7月6日日曜日

サンフランシスコの夏

夏の間、インターンシップのためサンフランシスコに来ています。インターン先はノンプロフィットコンサルティングのBridgespan Groupです。

アパートはアルハンブラ宮殿をモチーフに建てられたユニークな造り

学期中、過密スケジュールに追われて体調を崩してしまったので、こちらでは、仕事の方はそこそこにして、ジム通いに勤しんでいます。調子に乗って、来月始めに開催されるサンフランシスコ・マラソンにもハーフで出場することにしちゃいました。

先週末開かれたゲイの祭典San Francisco Pride 2008

昨日の独立記念日は、友人たちとGhirardelli Squareで花火を見物。夏のサンフランシスコ名物の霧が出て、「夜空を鮮やかに彩る花火」とは行きませんでしたが、深い霧のスクリーン越しに見る霞んだ花火も、山水画のような幻想的な趣きがありなかなかのものでした。



独立記念日の花火

2008年6月24日火曜日

The Catalog of Approaches to Impact Measurement

先月、"A Catalog of Methods for Entrepreneurs and Investors to Define, Measure and Communicate Social Impact and Return in Privately-Held Companies"が、Social Venture Technology Groupロックフェラー財団により刊行されました。

これに、寄稿者の一人として私の名前が載っています。ほんのささやかなものですが、Appendix Aの社会資本市場(Exchanges)に関する調査・分析を担当し、p.70の"Social Investment Platforms: Summary of Impact Measurement Approaches"の表を作成しました。

名前が載ること自体はほとんど自己満足でしかありませんが、この調査の過程で色々な業界関係者と直接コンタクトをとる機会があったことはラッキーでした。こうして地道にネットワークを広げていこうと思います。

2008年6月10日火曜日

4人の日本人ネット起業家

今週月曜日に、日本のネット企業4社の創業CEOの話を伺うというラッキーな機会がありました。

四氏とも、1999-2000年のネットバブルの最盛期にeコマースのそれぞれの領域で起業し、その後のバブル崩壊の淘汰を勝ち抜いて来た経歴の持ち主です。

元々CEO同士で勉強会を組んでいる気心の知れた仲だそうで、今回シカゴで開かれるInternet Retailer Conference & Exhibition 2008に参加されるついでに、日本から来ているMBAの学生と話をしてみたいと考えられ、シカゴ大GSBとケロッグに声がかかったということらしい。

各社の事業内容について簡単なプレゼンがそれぞれ10分ほどあった後でQ&Aという流れで、講演会というよりは座談会に近い打ち解けた雰囲気で、率直なお話を聞かせていただくことができました。皆さん気さくで、知性と情熱にあふれていて、「こういう人とだったら一緒に仕事をしてみたい」という気にさせる魅力を持っていらっしゃいます。

丁度、私の中で留学前に起業に対して抱いていた「やってみたいな」という憧れが、「絶対やらなきゃ」という確信に変わってきたところでしたので、大いに触発されました。

特に、中休みの際にお話させていただいた佐藤氏は、Kivaについてもご存知で、私が友人たちと取り組んでいるビジネスアイデアについても少しだけお話しする機会がありました。P2Pのマイクロファイナンスを仲介するKivaは、従来の慈善資金のお金の流れの仕組みに比べると、すばらしく画期的なものですが、本当に効果的な資源調達および配分を実現するためには、お金が生む社会的価値を客観的に見えるようにし、その成果の大小を資金提供者のインセンティブにリンクさせる必要があると、私は考えています。

こうした仕組みを生み出すためにもインターネットの力を使うことは不可欠ですし、ゼロから市場を作り出す経験をされた彼らの話しからは学ぶべきところが多く、MBA一年目の締めくくりにとても良い刺激を頂くことができました。

2008年6月7日土曜日

世界献血デー

前回に続いて古巣の赤十字関連のネタになりますが、ネットでちょっと興味深いニュースを見かけたので。 私も日本にいたら行ってみたいところ。

サウジ大使館:「留学生の代わりに献血して」と呼びかけ
 『世界献血デー』(14日)に、すべての自国民が滞在国で献血をするように」とのサウジアラビア政府の指示に従い、在日本サウジアラビア大使館(東京都港区六本木1)が留学生たちに献血をさせようとしたところ、多くは英国留学経験があるなどの理由で献血できないことが分かった。大使館は苦肉の策として、「大使館内でごちそうするので、代わりに日本人が献血して」と異例の呼びかけをしている。

 同政府は「世界各地のサウジアラビア人が献血し、相手国と友好を深めよう」との試みを各国にある大使館に指示。在日大使館も4月、日本の大学などで学ぶ約200人の留学生にメールなどで協力要請を始めたが、留学生のほとんどはヨーロッパへの滞在・留学経験があった。日本は変異型クロイツフェルト・ヤコブ病への対応で、「80~96年に1日以上英国に滞在した人は献血できない」との献血制限を実施しており、多くの留学生が該当した。

 しかし、献血は本国政府の指示のため、日本だけ中止することはできず、大使館に日本赤十字社の献血車を呼び、日本人に献血してもらうことにした。その代わり、特例的に大使館の一部を開放し、昼にはサウジ風炊き込みに肉を乗せた「カプサ」など高級食材のお国料理を振る舞う。

(中略)

 受け付けは14日午前10時~正午と午後1~4時。問い合わせは同大使館(03・3589・5241)

献血需要の充足と、自国のイメージアップと、国際交流とを一度に達成してしまおうというなかなか粋な企画ですね。日本では有償採血は禁止されていますが、国際赤十字による定義では、「少額の物品、軽い飲食物や交通に要した実費の支払いは、自発的な供血と矛盾しない。」ということなので、このサウジアラビア大使館の試みは問題ないということみたいです。

2008年5月19日月曜日

ミャンマー・サイクロン災害

最近、ミャンマーのサイクロン、中国の大地震と立て続けに大きな災害がアジアを襲いました。

被害はどちらも甚大ですが、中国政府が迅速な対応で国際的な評価を高めたのに反して、ミャンマーの軍事政権は国連の支援を拒否し続けるなど、相変わらず自国民の苦難に無頓着な対応に終始しています。

私が国際赤十字の仕事で、ミャンマー赤十字社の組織強化および災害対策を担当していた2002-04年当時と比べても、ミャンマーの政情はさらに悪化していて、政権が国際支援に対して抱く警戒感もより強くなっているようです。

しかし、5月17日付のSan Francisco Cronicleの記事の中でSan Francisco FoundationのCEOも語っているように、「このような政情では、ミャンマーに支援をしようとしたところで無駄だ」というふうに考えないで頂きたいと思います。

この記事でも取り上げられているように、こうした困難な状況で力を発揮するのが、国際的な資源動員力と、現地の草の根ネットワークを併せ持つNGOです。数は限られていますが、Save the ChildrenWorld VisionなどのNGOが、ミャンマーでも活躍しています。

私の古巣の国際赤十字赤新月社連盟も、外国人の被災地への立ち入りが極度に制限される中で、国内最大のボランティア網を誇るミャンマー赤十字社と連携し、救援活動を展開しています。

5月16日に発表された52億円規模の緊急救援計画に関するプレス・リリースで、連盟の事務総長は以下のように語っています。

"(Local Red Cross volunteers and other trained community members) know the language, culture and context. They have been the first to respond and we need to continue to support and use this expertise and experience to reach as many people as possible."

私はミャンマーでの任期中に、赤十字ボランティアと地域コミュニティのメンバーを対象として、災害対策トレーニングプログラムを全国規模で立ち上げたのですが、その成果がささやかながらこうして現れているようです。

地震では、発災後2-3日が救援活動の最大の山場になり、あとは徐々に復興活動に移っていくのに比べて、サイクロンとそれにより引き起こされる洪水では、感染症の蔓延などの二次被害の懸念がより深刻なため、救援活動の遅滞はそのままさらなる被害者数の拡大につながりかねません。

日本赤十字社でもミャンマー・サイクロン災害被災者救援金の受付をしていますので、是非ご協力ください。

2008年5月17日土曜日

ウォール・クライミング

友人に誘われて、前から興味があったウォール・クライミングのレッスンを受けました。ロープを使わないボルダリングは一度だけやったことがありますが、今回はハーネスとロープを使うトップロープ・クライミングに挑戦。

週1回3時間 x 2週間の速習コースで、
  1. 用具の名称や専門用語の説明
  2. ロープの結び方
  3. 安全確認の仕方
  4. ロープ捌きの練習
  5. 二人一組になって、交互にクライマーと、ビレイヤー(クライマーのために地面でロープを確保する人)の練習
  6. クライミング・テクニックのレッスン
  7. 試験

というのが大体の流れ。無事試験をパスしてコース修了が認定されると、監督者なしで自由にクライミングウォールを使用することができます。

傍から見ていると筋力だけの勝負に見えますが、これが中々奥が深く、柔軟性や持久力も必要とされるし、体重移動や手足の動かし方の手順を考える一種のゲーム的な楽しさもあります。何より難易度の高いルートを登り終えた時の達成感は、何とも言えません。

週一回くらいのペースで練習して、次はリード・クライミングもマスターしてみたいな。

2008年5月15日木曜日

PC復活

修理に出していたPCがやっと帰ってきて、また日本語での入力ができるようになりました。 友人から古いラップトップを借りて修理期間中をしのいでいたのですが、日本語IMEが入っておらず、インストールしようにもハードディスクに十分なスペースが無かったので、しばらく日本語は読めても書けない状態でした。

ところで、前回書いたケース・コンペティションについて、 Aspen Institute我が校のウェブサイトにそれぞれ記事が載せられたので、もしお時間があればチェックしてみてください。

2008年4月27日日曜日

JP Morgan Leadership Case Competitionで優勝!

JP モルガン・チェース銀行Aspen Instituteが主催するThe Walter V. Shipley Business Leadership Case Competition。社会貢献価値市場のビジネスプランとは別口で、同級生たちとこの大会に出場していたのですが、その決勝が、25日ニューヨークはバッテリーパークのリッツカールトンホテルで行われました。

ビジネスプランのコンテストとは違い、ビジネスケース(模擬のビジネス課題)を与えられて、それへの対処策を提案しその優劣を競うものです。 課題の内容は、企業買収ファンドの大手であるKKRTPGが、昨年TXUという石炭火力発電所で悪名高い電力会社を買収した実際の事件に基づいています。設定は、買収準備の最終段階で、ファンド側が、TXU批判の最先鋒に立つNGOであるEnvironmental Defense Fund (EDF)National Resource Defense Council (NRDC)に交渉を申し込んできた時点になっていて、我々に与えられた任務は、前代未聞の事態に戸惑うNGOに、以下の点を考慮しながら交渉戦略をアドバイスすること。
  1. NGOが買収に賛意を表明することが、ファンド側にどのような経済価値をもたらすか
  2. それを交渉材料にして、どのような環境を配慮した譲歩施策を要求するべきか
  3. 最大限の効果を引き出すためには、交渉はどのように進めるべきか

出場権は招待校に限られていて、今年は以下のビジネススクール8校が参加しました。

  • コロンビア大学
  • ダーデン (バージニア大学)
  • ハーバード大学
  • ケロッグ (ノースウエスタン大学)
  • ロス (ミシガン大学)
  • スターン (ニューヨーク大学)
  • タック (ダートマス大学)
  • ウォートン (ぺンシルバニア大学)
一次の各校予選で選抜された代表グループが、二次でふるいにかけられ、決勝に勝ち進んだのはコロンビア、ダーデンと我らがケロッグ。

一次では課題が発表されて3日間で状況分析、戦略立案、文書提出をしなくてはならないのですが、私は折悪しく体調を崩して寝込んでしまったため、一番最初にアプローチの仕方を決めるところ以外はほとんど貢献できず、チームメートには大変申し訳なく思っていました。

運良くこうして再び機会が回ってきたことで、今回プレゼン準備を通して、コンサル業で鍛えられたスキルを発揮できましたので、どうにか一次の失点を挽回することができて幾分負い目が減りました。

決勝の課題は、一次で提案した戦略のプレゼン。ありものを単にパワーポイントに移して話すだけなら楽なのですが、それでは勝てないということで、一週間は授業もそっちのけで、夜遅くまで準備する日々が続きました。

その甲斐があって、見事優勝を果たした時は本当にうれしかった~!!打ち上げはブルックリンのPeter Luger Steak Houseで、大迫力のステーキをお腹がはちきれるくらい食べて、いー気分でカラオケへ。とても貴重な経験になりました。

2008年4月20日日曜日

ビジネスプラン

University of Texas at Austinが主催する2008 Social Innovation Competitionですが、昨日準決勝の結果が発表されました。

私たちのチームの結果は…残念ながら、決勝進出はならず。

でも今回無理をして完成度が低いながらも、一旦ビジネスプランを書いてみたことで、今後なすべきことの全体像がつかめ、改善・補強の必要な点があきらかになり、とても良い経験になりました。私たちのアイデアを実現に近づけるため、ビジネススクールで残された今後一年強の時間をより有効に使うための基礎ができたように思います。

2008年4月14日月曜日

ご無沙汰です

前回のエントリーから3週間近くも間が空いてしまいました。

2週間のタンザニア旅行を終えて、アメリカに戻ってきたのが3月30日の夕方。(友人がみんなの旅行中の写真を集めてスライドショーを作ってくれたので、ご興味のある方はこちらをご覧ください。)

その翌日から即春学期が始まる中、Social Innovation Competitionのビジネスプランをやっとこ仕上げて4月2日に提出することができました。

しかしその後、ここ数週間の無茶な仕事量が祟って、週末から4日間も寝込んでしまいました。

最近、数ヶ月無理を重ねては数日ぶっ倒れるというのがパターンになりつつあります。しかも、その周期が段々短くなってる気が。。

胸に手を当てて考えてみると、ここ一年くらいは運動らしい運動をしていない。生活にメリハリがなく、ずるずると仕事&勉強をしている。

これはまずいということで、以下の三点を決心しました。

  • 徹夜はしない。最低でも3時間は寝る。それも最悪週2回まで。
  • 生活のリズムを取り戻す。基本的に深夜2時までには寝て、朝8時に起きる。
  • 体力をつけなおすため、まじめに運動する。と言っても、私の性格からして、何か明確な目標がないとすぐにまた元の怠惰な生活に戻ってしまうのは目に見えているので、勢いで大枚$130を払って、シカゴマラソンに出走登録しちゃいまいした。

うし、有言実行!

2008年3月27日木曜日

Social Innovation Competition二次選考の〆切延長

タンザニアに来ています。17日にダルエスサラームに入り、21-23日はザンジバルに滞在し、今はキリマンジャロに近いアルーシャにいます。

昼は本来の目的のプロジェクトで病院訪問+少し観光、ホテルに戻るとほとんど徹夜でSocial Innovation Competitionの二次選考用のビジネスプラン作成に勤しむ日々。無理を重ねて、まだまだ完成度は低いながら、〆切ぎりぎりでどうにかこうにか出来上がりそう…という状態で、必死になってラストスパートをかけていた矢先、なんとつい先程期限延長の告知メールが届きました。

どうやら、担当の方がここ一週間病気で寝込んでいて、参加者からの質問にまともに答えられなかったため、一週間期限を延長するということらしいです。うーん、喜んでよいのやら、なんとも言えない心境。

緊張の糸がぷっつり切れて、今夜はプロジェクトの仲間たちとポーカーに興じてしまいました。まぁ、勝ったからいいんですけど。

2008年3月9日日曜日

Social Innovation Competition 一次通過!

なななんと、一次通過していました!何の話かって、University of Texas at Austinが主催する2008 Social Innovation Competitionです。

これ、実はチームで話し合ったときは、私たちの社会貢献価値市場プロジェクトは、アイデアが固まりきっていない準備段階のため、まだこうしたコンペティションに参加するのは時期尚早だろうという結論でした。ただそれにしても、一次審査はExecutive Summaryだけだし、ダメもとで出すだけ出しても何の損もないだろうと思い、期限最終日に速攻で一人で作成して提出したんです。

だけど、一次審査の結果は2月28日発表で、メールで通知が来るということだったのに、ずっと何の音沙汰も無し。その後数日何度かホームページをチェックした時も、何のアナウンスメントも無かったので、今回は駄目だったんだな、と思っていました。

今日になって、「誰か知り合いでも通過していないかな」とふと思って、もう一度ホームページを見てみたんですね。

すると、何と私の名前があるじゃないですか!やったー!

。。。でも、これが喜んでばかりはいられないんです。

1000組以上の応募から48組が残ったその中に選ばれたこと自体は、すごく嬉しいんですが、来週は期末の試験やレポートが目白押し。で、それが終わるや否や、17日からはタンザニアに行かなきゃならない。二次審査用の本格的なビジネスプランの締め切りは3月28日ですが、その頃はまだタンザニアにいる予定です。タンザニアは休暇でなく、うちの学校がゲイツ財団IDEOAbbott等と組んでやっているGlobal Health Initiativeというプロジェクトで行くので、毎日忙しいし。

どう考えても、~30頁の本格的なビジネスプランを作成する時間が全く無い。

こうなると、2月28日の発表日から今日までの時間を浪費してしまったのが、いかにも惜しい。 どうして通知のメールが来なかったんだー!と、嘆いても始まらないし。。

こんなチャンス(一等賞金は$50,000で、おそらくこの手の学生コンペティションでは全米最大級!)を、みすみすあきらめるのも悔しい。 うーん、どうしよう。チームの他のメンバーと相談してみよう。。

2008年3月2日日曜日

Information market as a social valuation mechanism

Sean Stannard-Stockton's recent column on the Financial Times envisages that more individuals of moderate income will be interested in the social markets by 2033.

There has been a significant increase recently in the level of interests across the social sector in the possibility of adopting a market mechanism. Many have been trying to emulate the system of stock exchange, but they have been failing so far to achieve the most important purpose of adopting such a market mechanism – to allocate finite resources to their most valued use.

This is because, in my view, they take stock exchange system too literally without recognizing the critical differences between social values and economic values and the needs to adapt and modify the existing market mechanisms to this unique context.

A million-dollar question here is how to assess the non-economic values created by social organizations in the absence of price mechanisms since the society as a whole needs to collectively assign some value to different social organizations’ activities in order to be able to prioritize resource allocation. The social sector has invested enormous money and efforts in elaborating social impact evaluation methodologies and metrics, but I believe that the existing utilitarian approaches will never be sufficient.

I think the way forward is to disaggregate the functions of a market into two, that is, a valuation mechanism and a resource allocation mechanism. This is essentially a two-step system that works in a similar manner as TV advertisement market does. As is the case with the services provided by social organizations, those who benefit from TV programs (audience) are not same as those who pay for TV programs (sponsors). The TV producers succeeded in capturing, albeit imperfectly, the value of their programs using mechanisms such as a gross rating point (GRP), and made it possible for sponsors to allocate their money efficiently to the air time blocks with various valuation.

There already are emerging social investment platforms such as GlobalGiving and KIVA, that can work as resource allocation mechanisms in the social sector. What is lacking, however, is a feasible and credible valuation mechanism that can address unique difficulties of dealing with social values, including their public-good nature, impossibility of linear aggregation, and incommensurability. Information markets such as the Iowa Electronic Market and the Intrade appear to have a great potential in solving all.

When I shared this idea with Sara Olsen of SVT Group, she said that socialmarkets is now planning to experiment a similar idea. No one else in the social sector seems to have seriously tried to use an information market as a valuation mechanism and link it to a social investment platform. The obvious problem with using information market as a social valuation mechanism, however, is that there is no exogenous, observable measurement according to which prediction market participants' bets are rewarded or punished, and ultimately validate the accuracy of information market's results.

2008年2月23日土曜日

びっくり

前回のKivaに関するエントリーが、なんと当のTactical Philanthropyで取り上げられました。

とは言っても、私の書いた内容についてではなく、ブログが国境を越えて迅速にアイデアを伝播する力についてという趣旨でですが。日本語のエントリーだったので、何が書かれているかSean Stannard-Stockton氏には理解不能ですから。

元々このブログを昨年始めた時には、大まかに日本語と英語のエントリーを半々くらいで書くつもりでした。最近ちょっとなまけて日本語ばかりになっていて、「そろそろ久しぶりに英語でも書かないと」と思っていたのですが、かえって日本語で書いていることによってこんな楽しいサプライズがあるとは。世の中面白いもんです。

2008年2月18日月曜日

Kivaの売切御免

先月末のNew York Timesに、インターネットを利用したP2Pのマイクロファイナンスというユニークなビジネスモデルで脚光を浴びるKivaに関する記事が載っていました。あまりの人気で、ついにこの度全ての借り手に資金が貸し付けられ、それ以上貸したくてもお断りになるという、売切御免の状況が発生したという話です。

しっかりした運営方針を持つ非営利団体がキャパシティ以上の寄付を断るというのは、実はそれほど珍しい事ではないのですが、注目を集めているKivaだけに話題性が高いということで記事になったのでしょう。

これを読んだときは、「さすがKiva、資金供給が激増しているからと言って、安易にパートナー選択の基準を緩めたりせずに真面目な良い仕事をしてるんだな」程度の感想を抱いただけでした。

ところがその後、Financial Timesでもフィランソロピーに関する連載コラムを持つSean Stannard-StocktonのTactical Philanthropyというブログで、この話題に関する大変興味深い議論のやり取りが展開されています。

詳細な内容にご関心のある方はTactical Philanthropyの方をご覧頂くとして、主な論点としては以下の二つ。

  1. 「売切れにするのではなく、他の類似サービスに紹介する義務があるのではないか」 ← 証券取引所ではこのような規則があり、実際に非営利の世界でも、GlobalGivingでは必要に応じてそのような紹介を行っているそうです。
  2. 「サービスへの需要が高くて売り切れるのならば、市場論理に従い価格調整によって需給のバランスを取るということも一考に値するのではないか。つまり、貸し手の資金が100%借り手に渡る現状から、10%をKivaがサービス料として徴収し、それをボトルネックとなっているパートナーMFIの開拓のための資金に充てるということはできないか」 ← これに対しKivaは、「10%のサービス料では焼け石に水だし、第一P2Pの根本価値を損ねる」と回答しています。

この一件は私が友人たちと取り組んでいる「社会貢献価値」取引所の設計にも、大切な示唆を与えてくれます。

何よりも、Kivaユーザーのコメントからも明らかなように、

  • 善意の実質的な結果をその提供者に伝達する仕組み
  • 人々の善意を一回毎の使い切りにするのではなく、循環できる仕組み

に対する需要がいかに大きいか、あらためて認識する良い機会になりました。

2008年2月11日月曜日

ビジネスとしてのマイクロ・ファイナンス

たけやんさんのリクエストにお応えして、前回のエントリーでお話したマイクロ・ファイナンスの授業からの私なりのkey takeawaysを、(まとまっておらず恐縮ですが)箇条書きで列挙してみたいと思います。

  1. 日収$2以下で暮らしている人は全世界で約30億人。内、18億人は生産年齢だが、現在マイクロ・ファイナンスのサービスを受けている人口は1.2億人程度。このため成長余地は大きいと考えられ、また先進国の銀行では考えられないほど利益率も高いことから、ビジネスチャンスに関心を持った金融界から大量の資金が流入してきている。
  2. CGAPの2004年度調査によると、海外資金によるMFIへの投資のうち、69%が債権、23%が株式、残りが信用保証の形式を取る。
  3. MFIのローンの証券化、流通市場創設への動きが現在進行中。
  4. 資金供給過多に対して、MFI側のキャパシティが追いついていない。特にボトルネックになっているのは、マネージャー人材。リテール銀行の出身者は大歓迎される。ローンオフィサーの人材獲得競争も深刻。
  5. 30億人の貧困層全てが本当にマイクロ・ファイナンスを必要としているかは、議論の余地あり。これまでマイクロ・ファイナンスが主に対象としてきたのは、貧困層の中では中~上位の層。絶対貧困層は金融サービスのメリットを享受できる状態ではなく、その前にまずは従来型の開発援助(教育、保健衛生、雇用訓練、等)が必要と考える人も多い。
  6. また、彼らに実際にマイクロ・ファイナンスを提供することが可能なのかどうかも不確か。これまでマイクロファイナンスは、農村地域に金融サービスを提供することに貢献してきたが、主な成功例はどれも過密人口国。最貧困層の住む遠隔の過疎地には、コストがかかりすぎるため到達できていない。ITの活用に注目が集まっているが、携帯電話網等のインフラの無い地域ではITも役に立たない。
  7. マイクロ・ファイナンスの貧困削減効果について語るときに、ローンによって貧困層の起業を助けることで収入源を増やすというロジックが使われることが多いが、実際に起業資金に使われるケースは少数。
  8. ただ、起業資金以外に使われるローンには貧困削減効果が無いと考えるのは誤解。冠婚葬祭や緊急時(稼ぎ手の死亡、災害、事故、病気、盗難、etc.)、その他出産、子供の進学、住宅購入等の一時的に大きな支出が必要な時に、資金源がないために闇金融に頼るしかなくてさらなる困窮に陥っていた人々に、新しく健全な資金源が提供されることだけでも、大きな意義がある。事業の運転資金も重要。
  9. 基本的なビジネスモデルは、低金利(慈善資金を含む)で資金を調達し、闇金融よりは低く銀行よりははるかに高い金利で貸し出すことで利益を出す。費用構造はほとんどが営業費用で、これも銀行よりははるかに高い。低賃金で一生懸命働くローンオフィサーの存在は大きい。ローンオフィサーの業務効率と、ポートフォリオの質(不良債権の比率)は、MFIの業績を左右する最大の要因。
  10. 貸し倒れ率1%と言った数字が一人歩きしている観があるが、鵜呑みは禁物。不良債権計上を遅らせたり、返済期間繰り延べを行って帳簿上の貸し倒れ率を低く抑えているだけという場合もある。また、グループローンでは一人が返済できなくてもグループの他のメンバーが返済することで、貸し倒れ率は低くなるが、返済できなかった個人への過度のプレッシャーにより社会問題になることもある。ただ、そうは言っても、全般的にMFIの貸し倒れ率が一般の銀行に比べ圧倒的に低いという事実は変わらない。
  11. MFIの強みはリテール、特に地方・貧困層への浸透力。銀行とマイクロファイナンスの間で相互参入が進み、境界が曖昧になる中で、競争は激化しており、強みを伸ばしていかないと生き残れない。プラハラードの『ネクスト・マーケット 「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略』でも紹介されているICICIは、銀行とMFIのそれぞれの強みを活かし分業体制を築いた好例。
  12. 営利事業化が進行中。「慈善資金に頼っていてはサービス拡大に限界があるため、持続性を確立し、事業拡大を図るには営利事業化は必然」という見解がある一方で、「貧困削減の目的をm見失っては、マイクロ・ファイナンスが単なる高利貸しの美名になってしまう」として警戒する人たちも多い。
  13. 現在のところ、営利MFIが非営利MFIよりも効率的、または利益率が高いといった主張には、必ずしもデータによる裏付けが無い。
  14. 担保を持たない貧困層のため、社会的信用を担保にするグループローンの手法が有名だが、最近は個人ローンに重点を移すMFIの例が増えている。個人ローンは金額が通常グループローンに比べ高いため、MFIの業績には好材料だが、一方で貧困削減という観点からはグループローンは今なお重要。
  15. ソーシャルセクターとしては例外的にデータの標準化や情報開示への取り組みが進んでいるが、貧困削減効果に関しては「ローンあたりの金額」以外に標準的に比較可能なデータが無い。
  16. 現在ではほとんどのMFIがローンだけでなく、貯蓄商品を提供している。また、送金サービスも需要が高く成長している。
  17. マイクロ・インシュランス(低所得層向け保険商品)は、貧困削減効果が高いとして注目はされているが、いまだビジネスモデルとしては未発達。つい先日、ゲイツ財団が、Opportunity Internationalの運営するMicro Insurance Agency2400万ドルの支援を行うことが報道され、これが起爆剤となることが期待されている。

結論としては、これまで自分の中で持っていたマイクロ・ファイナンスに関する「神話のベール」のようなものを取り払い、客観的にビジネスモデルと業界構造を理解することができたのが最大の成果だったと思います。

2008年2月10日日曜日

マイクロ・ファイナンスの授業

冬学期も早くも半分が終わり、折り返し地点です。

秋学期は、私の関心領域から遠い数字系の必修科目(アカウンティング、統計、ファイナンス)でストレスをつのらせていたのに比べ、今学期は授業も面白いものが多くて好調です。自主的に進めている「社会貢献価値」市場プロジェクトの方も順調に動き始めているので実際の仕事量は多いのですが、キツイ生活があまり精神的負担になっていません。

マイクロ・ファイナンスは、そんな今学期お気に入りの授業の一つ。半学期分のコースなので今週で最後でしたが、5週間にわたる週一回3時間の授業が期待以上に内容の濃いもので、とてもためになりました。

教鞭を取るのはPaul Christensen教授で、彼はShoreCap Internationalというマイクロ・ファイナンスに特化したプライベートエクイティファームの現役COOでもあります。(因みにShoreCapの親会社のShoreBankは、アメリカのコミュニティバンクの先駆で、ムハマド・ユヌスが彼のマイクロクレジットプログラムを銀行化してグラミン銀行を立ち上げる際に、バングラデシュまで招かれてアドバイスをしたことでも有名。)世界中のMFIに投資し育成してきた彼の実地経験と豊富な知識に基づいた講義は、今大きな転換期に差し掛かっているマイクロ・ファイナンスという業界の構造や、問題と可能性について体系的・効率的に理解するには最高でした。

2008年2月4日月曜日

偽善考 - その4

あるCSRの活動を、そこに利己的な打算が働いているからといって、偽善であると単純に切って捨てるのは、あまり意味がないと思います。そもそも狭義の自社利益と広義の自社利益(≒公共利益)をバランスさせるのがCSRであって、完全に利他的なCSRなど持続不可能です。しかし、企業のような巨大なリソース(ヒト、モノ、カネ、情報)を持つ主体の取る行動は、結果や手続きの観点から、より適切なやり方はないのかが吟味されなくてはなりません。

公共の利益を旗に掲げて大きなリソースを振り向けるからには、そのリソースが完全に私的な性格のものであったとしても、行動の結果や手続きの妥当性については公的な責任を伴います。これはCSRに限らず、NPO/NGOやゲイツ財団のような私的財団、さらには1997年に10億ドルを国連に寄付したテッド・ターナーのような個人についても当てはまる問題です。

ソーシャル・セクターでも最近は、効果・効率に関する結果の議論は盛んになっていますが、手続きに関しては「リソース提供者への説明責任」はより強調される一方で、その行動の対象となる「受益者への説明責任」の方はやや疎かにされているという印象を受けます。一昨年になりますが、The Economistのフィランソロピーの新しい潮流に関する特集記事を執筆したMatthew Bishop氏がインタビューで、"How do these (very wealthy) people dare to impose their view of what a better world is on the rest of us?"という正統性 (legitimacy)の問題を指摘していた事が思い出されます。

さて、これまで4回にわたり長々と偽善に関する考察を書き綴ってきましたが、私の目的は誰かの行動を「偽善である」と糾弾して止めさせることではありません。逆に、視野の狭い私利私欲の追求を礼賛するつもりもありません。

第1回のエントリーへのコメントでみやさんが書いていらっしゃったように、一つの行為やその結果に対しても人によって受け止め方が異なる以上、万人が同意するような普遍的な善など無いのではないかと思います。しかし例え「人が為す善は須く偽善」だとしても、公共善や公共の利益、あるいは社会貢献といった言葉を口にする者は、自分の行いがどのようにすれば一歩でもより善に近づけるのか、常に冷徹かつ謹厳に考え行動に移していかなければなりません。

  • 行動の意図は必要十分に広い視野に基づいているか
  • 行動が効果的かつ効率的に結果に結びついているか
  • 行動の過程には説明責任が担保されており、異なる視点や価値観に開かれたものになっているか

これらの点が全て完璧になることはありえないにしても、より高いレベルでのバランスを達成するために弛まぬ努力が必要なのです。

自分たちの行為が善であることを自明のことと考えてしまうと、中野好夫が『悪人礼賛』で「精神的奇形 (moron)」とこきおろした、脳天気で無軌道で無責任な「善意の善人」になってしまう危険性があります。

それを避けるためには、「善ならざるものとは何か」について掘り下げて考えてみる必要があると思い、愚見を今回このような形でまとめてみました。稚拙な長文にもかかわらず、最後までお付き合い頂きありがとうございます。

2008年2月3日日曜日

偽善考 - その3

これまで、行動の意図を以って善と偽善を分けるのが難しいことを見てきましたが、そもそも善と偽善を分けることには、どんな意味があるのでしょうか。「偽善」という概念の使い道を考えてみると、大きく二つあります。

  • 世間一般には善だと認識されている他者の行動を批判するためのレッテル
  • 自ら善だと信じて行っている行動を省察するための反面教師

善か悪かの判断は、立場や視点、イデオロギーの違いによりますが、白黒はっきりした対立的な性質のものです。それに対して、善か偽善かはグレーゾーンでの判断で、「この行動は本当に善と言ってよいのか、より白に近い善があるのではないか」と警鐘を鳴らす、建設的な可能性を持っています。

だとすると、「人が為す善は須く偽善」とだけ言ってすませ、善と偽善の差異を曖昧なままにしておいては、考察が不十分だということに気づきます。

従来の一般的な「偽善」の定義では、行動の意図が重視されているが、これは善と偽善を分ける軸としてあまり有効でないという私の意見はすでに述べました。それならば、「偽善」の概念が持つ建設的なポテンシャルを活かすために、他のどのような軸を持ってくる必要があるのかを考えなくてはなりません。

私は、より有効な偽善の定義のためには、以下の二つについて着目する必要があると考えます。

  1. 行動の結果: 「善意が敷き詰められた道は地獄に通じている (The road to Hell is paved with good intentions)」と言われるように、善意からの行動がかえって問題を悪化させるという事態は、実際によくあることです。悪化させるには至らなくても、行動が非効果的、非効率的で所期の結果に結びつかないと、善なる行動としての正当性を失い、これが偽善と呼ばれることもあります。例えば、物乞いに小銭を与える行為や、街頭で寄付箱に小銭を入れる行為を見て偽善であるとする人たちは、効果や効率のことを問題にしています。ここで「偽善」という言葉が指しているのは、行動と結果の間の断絶のことになります。
  2. 行動の過程: 目的(意図)は手段を正当化しません。同様に、結果が過程を正当化することもできません。ある行動が善であるためには、意図と結果だけでなく、その過程も重要であると私は考えます。特にここで私が重視するのは、説明責任(accountability)の問題です。ある行動を取る際には、どうしてその行動が適当と考えられるのか、他にどのような選択肢が検討されたのか、その決定には誰の意見が反映されているのか、実際に結果が善いものであるかどうかを判断するのは誰か、といった点を考える必要があります。善意から発して、善い結果を例え生み出していたとしても、手続き上の正当性が欠けている場合には、これもまた「偽善」と呼ばれて如かるべきです。

最もよく使われる、利己的な意図によるという意味での「偽善」と区別するとしたら、1の意味での偽善は「非善」、2の意味での偽善は「独善」または「虚善」とでも言い換えてもいいかもしれません。

2008年2月2日土曜日

偽善考 - その2

企業の場合にも、「我が社の利益」というものを考える時に、その視野をどこまで広げるかには、様々な幅がありえます。

  • タイムスパン: 短期 vs 中期 vs 長期 vs 超長期
  • ステークホルダー: 株主、経営者、従業員、顧客、取引先などのビジネスパートナー、業界、地域コミュニティ、自国、国際社会
  • 利益の種類: 直接的利益 and/or 間接的利益、経済的利益 and/or 社会的利益、機能的利益 and/or 感情的利益
これらの三つの変数について、どこまでを考慮に入れて自社の利益を図るかによって、取るべき行動は変わってきます。

ただ、どこまで行ってもその本来の意図は自己利益の増大であることには、何ら根本的な違いはありません。

例えば、超長期的に国際社会の社会的利益を増大することを意図した企業行動は善で、中期的に地域コミュニティの経済的利益と感情的利益に資することを意図した行動は偽善であるなどと言う事は、誰にもできないのです。

2008年2月1日金曜日

偽善考 - その1

偽善とは何だろうか。2週間ほど前のThe EconomistのCSRに関する特集記事を読んでいて、そんなことを考えました。

偽善とは読んで字の如く「偽りの善」ですから、通常の解釈ではつまるところ、うわべは善い行いをしていても、その底には利己的な意図が働いていることだということになるでしょう。

ここでは、利他的な意図は善と深く結び付けられる一方、表にあらわれる行動がどうあれ利己的な意図は善ならざるものという価値判断が、前提になっています。「善とは何か」という問いに対しては、太古から優れた思想家が色んなことを言っていますが、要するに何らかの道徳的・倫理的規範に沿った行いのことです。してみると、そうした規範を顧みることなく、自らの気の向くままやりたい放題のことをやっていては、当然「善」を実現することはできないということになるでしょう。

ただ、本当に利他的意図は、利己的意図とは相容れない全く反対の概念なのでしょうか。

The Economistの記事ではCSRについて、結局それは「enlightened self-interest」に基づいた企業行動のことだと結論しています。私も、利他的意図と利己的意図は対極の関係にあるのではなく、「自己」というものを理解する際にその包含する範囲を少しずつ広げていったグラデーションの差でしかないと考えています。「自己」の概念が、生物学的自己から始まって、家族、共同体、民族、国家、人種、人類、未来の人類、地球上の生物というように広がっていく時に、狭小な「自己利益 (self-interest)」は、空間や時間の壁を越えた「視野の広い自己利益 (enlightened self-interest)」へと移行していくのだと思います。

このように考えると、「真の善」と(利己的な意図によるという意味での)「偽りの善」も連続した関係にあり、必ずしも一方は賞賛されるべきで他方は非難されるべきということではない気がしてきます。

「為さぬ善より為す偽善」という言葉があります。よく見てみると、「偽」という漢字は「人」が「為す」と書くことに気づきます。極論すれば「人が為す善は須く偽善」とさえ言えそうです。

2008年1月28日月曜日

ビル・ゲイツがすごいと思うわけ

フィランソロピーや社会貢献の話をしていると、よく出会う人たちの類型があります。

  • 「愛は地球を救う」型: 草の根NPOなどに多いタイプで、思いやりの気持ち、行動の意図を重視するあまり、その効率や持続性にはあまり意識が向かない
  • テクノクラート型: 国際組織や大手NGOの一部に多いタイプで、現実の問題の複雑さをよく理解しているがために、一種のシニシズムに陥り、現状の枠組みで与えられた仕事を粛々と進めることのみに専念する
  • ビジネス万能主義型: 最近急増しつつあるタイプで、ビジネスの手法を活用し、市場原理を徹底させれば、世界の全ての問題が解決するかのような錯覚を持っている
若干誇張が入ってますが、いずれにせよどのタイプにもそれぞれ長所と短所があり、それぞれに補いあってダイナミズムが生まれています。

しかし、今日ビル・ゲイツの世界経済フォーラムでの講演のノーカット版を改めて見てみて、彼はこれらのどの類型にも属さない、真に成熟したビジョンを持つthought leaderだと認識を新たにしました。

  • 「より広範な分野で資本主義経済の力を利用してイノベーションを起こす」ことに留まらず、「資本主義経済と言う社会システム自体をイノベーションの対象にしてしまう」ことを提唱している
  • 企業は、お金だけでなく頭脳を提供し、イノベーションの手助けをすることによってこそ、より大きな貢献が可能だと主張している
  • 企業だけでなく、政府や非営利団体が果たすべき役割と、協働の必要性についてよく理解している
  • 社会変革を突き動かす動力として、「自己利益」と並んで、「思いやり」が持つポテンシャルを認識している
  • インセンティブの形態として、「金銭的利益」だけに限らず、「評判」の重要性にも着目している
  • 「創造的資本主義」を現実にするためのさしあたっての突破口は、「成果の測定」にあることを理解している
等々、彼の話を聞いていると、「我が意を得たり!」というポイントが目白押しです。

ゲイツ財団を立ち上げて試行錯誤をする中で、様々な失敗もし、彼のスタイルについて批判もあると聞いていましたが、さすがに学習能力と洞察力がずば抜けているのでしょう。他のどんな社会起業家や学者と比べても、見えている視野の広さ、問題の本質を考える深さ、そして人を動かせる楽観的積極性において、これほどの人は私が知る限りちょっと見当たりません。

2008年1月26日土曜日

ビル・ゲイツの「創造的資本主義」

ビル・ゲイツが、一昨日ダボスの世界経済フォーラムで行った講演で、「創造的資本主義」の必要を訴えて、大きな反響を呼んでいるようです。

資本主義経済が持つすばらしい特長は、インセンティブを有効に活用することで、人間一人一人が持つイノベーションを生み出す力を最大限に引き出して、価値創出の持続的拡大のサイクルを実現するという点にあります。ただ、資本主義が副産物として生み出す富の偏在は日々加速度的に進行しており、世界の人口の半分以上にあたる貧困にあえぐ人々は、そうしたメリットを享受できず取り残されています。

そうした資本主義の特長をより創造的に活用し、これまで資本主義経済の外部に置かれていた問題の解決に向けようという考え方が、ゲイツの「創造的資本主義」で、これはムハマド・ユヌスが提唱している社会性ビジネスの考え方にもまた密接に関連しています。

ゲイツはこの創造的資本主義のコンセプトについて、昨年ハーバード大学の卒業式での式辞でもすでに語っています。そこで彼は、「みんなが他の人を思いやる気持ちが足りないのが問題なのではない。複雑に入り組んだ現実に直面して、そうしたみんなの気持ちを活用することができずにいるのが問題なのだ」と言った後、「問題を認識し、解決策を見出し、そのインパクトを理解することができるようにして初めて、思いやりの気持ちが実際の行動へとつながる」と述べていますが、これには強く賛同します。

「問題の深刻さ・重要さを正しく認識できるようにする仕組み」、「解決策のイノベーションがより生まれやすくなる仕組み」、そしてその「インパクトがよりよく理解できるようにする仕組み」は、 どれも社会価値創出のためのエコシステムを構成する根幹の要素であり、これらが創造的資本主義への進化を促進するのだと考えています。私が現在友人たちと取り組んでいる「社会貢献価値」取引所のプロジェクトの意義もまさにここにあります。

2008年1月23日水曜日

ムハマド・ユヌスがやってきた ヤァ!ヤァ!ヤァ!


グラミンバンクの創始者で2006年のノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏がシカゴで講演をされるということで、極寒の中ダウンタウンまで出かけて聴いてきました。700~800人くらい収容できる会場はほぼ満席でした。

マイクロファイナンスや社会起業に特に関心のある層を対象としたものではなく、全く一般の人向けなので、ユヌス氏の話の内容も、出てくる質問のレベルも、正直言って大したことありませんでした。でもまぁミーハーな私としては生ユヌスを見て、直筆サイン入りの新著『Creating a World Without Poverty: Social Business and the Future of Capitalism』を購入できただけで、とりあえずは満足。

講演自体は40分程で、グラミンバンク設立当初の話が半分、残りは最近彼がフォーカスしている社会性ビジネスについてでした。新著でも述べている通り、彼の定義では「社会起業 (social entrepreneurship)」は営利も非営利も包含するのに対し、「社会性ビジネス (social business)」はその下位概念で、営利活動を通じて社会的価値を生み出す事業形態の方にスポットライトをあてます。

ノーベル平和賞受賞スピーチでも話していた"social stock market"についても二回言及がありました。個人的にはこのトピックについて彼の考え方をもうちょっと突っ込んで聞きたかったのですが、軽く触れた程度で、ちょっと残念でした。

質問時間は20分くらい。私もずっと手を挙げ続けていましたが、競争者が多くて、運悪く結局指されず終いでした。

2008年1月20日日曜日

カーボン・オフセット取引と「社会貢献価値」取引

先月、『「社会貢献価値」取引と排出権取引の違い』 というエントリーで、HIP InvestorのCEOのポール・ハーマンから聞いた話として、「排出権市場で「社会貢献価値」も取引できないかというプランを構想している人たちがいるそう」だと書きました。

排出権取引には大きく分けて、強制的アプローチ(Mandatory approach)と自主的アプローチ(Voluntary approach)の二種類があります。国際条約や国内法で、あらかじめ温室効果ガスの排出上限を設定した上で、その過不足を排出権の形で融通する、いわゆる「キャップ・アンド・トレード」と言われる仕組みは、強制的アプローチに入ります。先月のエントリーで書いたとおり、このアプローチにおいては、取引される「排出権」という実体のないものに価値を与えているのは、政府の強制力であり、私達の考えている「社会貢献価値」取引とは、全く性質が異なります。

2週間ほど前にサンフランシスコでポール・ハーマンと再会した際に、もう一度この話題が出たのですが、このプランを考えている人たちは、どうも自主的アプローチの方により関心を持っているようです。こちらは、最近日本でも聞くようになってきたカーボン・オフセットのように、誰かに強制されることなく、ひとえに本人の意志によって、二酸化炭素削減のための努力にお金を出すものです。

実はこの自主性に基づいた取引の仕組みは少しずつ広がっています。Ecosystem Marketplaceなどを見ると、「生態系の多様性保全」といった成果の定量化が難しいプロジェクトも取引の対象になっています。「生態系の多様性保全」という価値が取引できるならば、「貧困の削減」だとか「教育の改善」といった価値だって取引できるはずだ、と考えている人たちが出てきているのは当然の流れと言えるでしょう。

ただ実態をよく見てみると、自主的アプローチにより行われているこれらの取引は、いまだに多くの問題を抱えており、それは結局、現在ソーシャルセクターが直面している問題と五十歩百歩と言わざるを得ません。

  • 価値を測る基準がバラバラで、当事者は毎回の取引ごとにこれをよく吟味する必要がある (High transaction cost due to no valuation standard)
  • 取引によって買われた成果が実現されることを保障するための、制度的枠組みが脆弱 (Weak institutional framework to ensure/monitor the delivery of results)
  • 取引に参加するインセンティブを維持するための仕組みが存在しない (Lack of proper mechanisms to maintain participants' incentives)
  • 一度購入した価値は、他に売ることはできず、また何の使い道もない (No liquidity/convertibility)

このように、まだ本当の意味で市場の効率性を活用できているとは言えず、従来の寄付市場と大差ありません。GlobalGivingSocial MarketsSasix、それにKivaといった既存の仕組みは、すでにこの段階になら達していると言っていいと思います。

私がこの件について少々調べてみた結論としては、「社会貢献価値」取引所プロジェクトで我々が取り組んでいる問題の解決には今のところあまり有用な教訓が得られそうにない、と判断してよさそうです。

2008年1月18日金曜日

Fundamental limitations of the emerging "best practices" in social impact measurement

When I was in San Francisco early this month, I met Sara Olsen, Founding Partner of Social Venture Technology Group and one of our Social Value Exchange System project's advisors. (She is also one of the founders of the Global Social Venture Competition, the largest and oldest student-led social venture business plan competition.)

She is now working on the revision of "Double-Bottom Line Methods Catalog", Rockefeller Foundation paper she co-authored in 2004, and kindly suggested that we share with her the insights we gained through our Social Value Exchange System project so that she may incorporate them into her new paper with due credit.

I found the DBL Methods Catalog very neat and useful. This is exactly the kind of information that we were looking for in the beginning of our project.

I totally agree with the paper's authors that "The best use of capital will come when feasible and credible accounts of the short and long-term impacts of social organizations can be shared with confidence among a variety of constituents, including business and nonprofit leaders, governments and policymakers, and investors."

The social sector suffers from fragmentation and inefficiency due to lack of healthy competition that would help resources to be channeled to the most effective uses and beneficiaries to the most effective programs. There has been a significant increase recently in the level of interests across the social sector in the possibility of adopting market mechanisms, but the biggest unresolved question is how to assess the non-economic values created by social organizations in the absence of price mechanisms.

In the future, the emerging best practices catalogued in this and new paper may or may not evolve into the de-facto standards for social impact accounting that allow reasonable measurement and comparison of the impacts of programs that share similar well-defined objective. However, I have a serious doubt about the potential of the existing approaches, either quantitative or qualitative, to develop the workable valuation mechanisms that are conducive to development of social value exchange system, which can stimulate healthy competition among agencies and push the sector to its full potential.

This is because those approaches largely overlook the unique problems with social impact assessment, which have been long recognized by students of welfare economics, environmental economics and social choice theories:
  • Social values are plural, often incommensurate with each other, and may possess intransitive relation.
  • With social impact, one is affected by the consequences of other peoples' choices, whereas with private goods, the consequences of one's choice fall on oneself.
  • The sphere of social impact lacks the price signal that functions as an indicator of the intensity of consumer preferences in normal markets where private goods and services are traded.

As noted by economists such as Amartya Sen, 1998 Nobel Prize Laureate in Economics, collective choice in social and environmental values often could not possibly be simply the linear aggregation of individual choices. The conventional utilitarian model of quantitative impact assessment as well as qualitative approach are both fundamentally inadequate in the sphere of public goods such as social and environmental impact. What is required instead is an alternative method of social impact assessment that:

  • Can integrate plural, intransitive, incommensurate values
  • Can bridge individual valuation to collective valuation
  • Is cost-efficient, striking an optimum balance between feasibility and credibility
  • Is fair, ensuring stakeholders' representation and accountability to not only funders but also to beneficiaries
  • Provides transparent, sensible process for trading off one option against another

村上世彰氏が日本の寄付市場の拡大を図るためのプラットフォーム作りに20億円を寄付

東京の友人からのメールで、村上ファンドの村上世彰氏が、日本の寄付市場を拡大するためのプラットフォームとしてNPO法人「チャリティープラットフォーム」を設立したというニュースを知りました。

最近のAERAに記事が載っていたそうで、それによると、
  • 村上氏は同NPO基金に15億円を既に寄付済みで、今年も5億円予定。 累計の寄付は20億円にのぼる
  • 資金の使途としては、NPO/NGO支援のために5億円、大震災時の緊急支援の研究のために10億円

とのことらしいです。日本のノンプロフィット業界で20億円というと、相当インパクトがある金額です。

ゲイツやバフェットに触発されて、日本でも大きな動きを見せる人が現れてこないはずがないと思っていましたが、村上氏は正直ノーマークでした。 さすがに頭の良い人ですから、ただお金を出すだけではなく、その効果を最大化させるためには何に使えばよいかを考えた上で、寄付市場拡大のプラットフォームに目をつけたのでしょう。ただ、ホームページを見た限りでは、まだ具体的なアプローチや活動についてはフォーカスが絞りきれていない印象を受けました。実際にどうすれば寄付市場を拡大させることができるのか、そこで自分たちにできるユニークな貢献とは何か、「theory of change」を模索している段階ではないでしょうか。

ノンプロフィット業界では人々からの信頼が何といっても最大の資本ですから、世間の村上氏に対するネガティブな見方を考えると、既存の中堅以上の団体は、まずは「敬して之を遠ざく」というリスク・アバースなスタンスにならざるをえません。しかし、近年日本でも台頭しつつある社会起業家の中には、ビジネスライクに「白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕るのが良い猫である」と割り切り、リスクを取ってでも協働する人たちも出てくるはずだと思います。

私が目指す、「社会起業インフラの整備」とその先にある「社会価値創出エコシステムの共創」というビジョンに近いものを感じますので、是非注目していきたいと思います。

2008年1月13日日曜日

サンフランシスコでのネットワーキング - その2

サンフランシスコでの2日目は、ノンプロフィット・コンサルティング・ファームを3社訪問しました。

1. FSG Social Impact Advisors

米国のサンフランシスコ、ボストン、シアトルと、スイスのジュネーブの4ヵ所にオフィスを持ち、約50人のスタッフを擁するノンプロフィット・コンサルティングの雄。設立者の一人が、戦略論で有名なマイケル・ポーターで、彼は今もシニア・アドバイザーの一人として関わっています。

ノンプロフィット・コンサルティングの仕事が実際どんなものか少し体感できるようにと、簡単なケース・スタディまでさせてくれました。私が本業のビジネス・コンサルの仕事で使っているスキルが、そっくりそのまま活かせそう。

2. Business for Social Responsibilty (BSR)

CSRに特化したコンサルティング・ファームで、サンフランシスコ、ニューヨーク、パリ、ミュンヘン、広州、香港、北京にオフィスを持っています。

会員制度を採っていて、会員企業は年会費を払うことで各種のリサーチ情報提供やイベント参加といったサービスを受けられる上に、個別コンサルティングサービスの割引が適用されるという仕組みのようです。昨今のCSRへの関心の高まりから、会員企業数が増加しているのかと思いきや、実は以前は400-500社あった会員企業数が現在は約250社弱まで減っているのだそうです。これは、数年前にビジネスモデルを見直して、大企業向けのサービスにフォーカスをシフトしたからということらしいです。

マネージャーのRaj Sapruさんによると、米国の企業より欧州の企業の方が、CSRに関する認識の高さや理解の深さにおいて、10年くらい進んでいるのだそうです。そういえば、FSGでも、フィランソロピーの進化は米国が、CSRの進化は欧州がより先を行っているという話しがありました。

少々雑な議論になりますが、米国型資本主義では、企業は純粋に経済的価値を追求する存在という考え方が強いのに対し、ネオ・コーポラティズム的な協調体制の面影が残る欧州では、企業は社会的存在であり続けたがために、社会的価値の推進を担う存在として、米国では企業でなく財団により牽引する形でフィランソロピーが発達し、欧州ではCSRが発達したということなのだと考えられそうです。

あと興味深かったのは、CSRの変遷についての議論。

① CSRが傍流でしかなかった時代 (~80年代)
     ↓
② 受動的CSRの時代 (90年代)
     ↓
③ CSRと本業の戦略的融和の時代 (2000年頃)
     ↓
④ 社会的価値を積極的に創出するCSRの時代 (現在~)

考えるに、ポーターの言う「戦略的CSR」は、 ③の段階の話。乱暴に言ってしまえば、CSRをどうせやるんだったら、本業のボトムラインにも貢献することをしようよ、って考え方です。それを超えたCSRが本当に今後生まれてくるのか?昨日見たClif Barのようなダブル・ボトムラインを追求する会社が例外的存在でなくなるのか?私自身はちょっとそれはナイーブにすぎる希望ではないかと考えているのですが、一応その可能性についても注目したいと思います。

3. Bridgespan Group

Bain & Companyの系列。オフィスは、ボストン、サンフランシスコ、ニューヨークの3ヵ所で、スタッフは総勢約150人。

ノンプロフィット・コンサルティングの分野で多分最も有名なファームだと思いますが、FSGがジュネーブにオフィスを最近設立するなど、いち早く国際化に取り組んでいるのに対し、今のところは国内市場にフォーカスしています。

FSGは学部生の新卒採用はせず、ビジネススクール卒業生でもコンサル経験者などの即戦力のみを採用するのに対し、ベインなどの普通のコンサル・ファームと同じように学卒もとればMBAの学生もとります。ただ、FSGと違って、まだ米国市民権保持者以外には雇用の門戸が開かれていません。

4. 交流会

他にも、サンフランシスコ市内のカフェで交流会を開き、以下の企業・組織の方々に来ていただき、コーヒー片手に色々な話を聞かせてもらうことができました。

  • Blu Skye: 社会的および環境的価値を追求する企業のための戦略立案などのサービスを提供しています。
  • The Broad Foundation: 教育、科学、芸術の分野でイノベーションを促進することを目的とした財団。
  • Education Pioneers: MBAなどの専門的スキルを持つ大学院生が、小・中・高校に行き、マネジメント改善などを行うというプログラムを展開しています。
  • IDEO: 世界最高といわれるデザイン・ファーム。バリアフリーの公共施設とか環境負荷の低い商品開発など、社会インパクトや環境インパクトを考えたデザインを専門にするスタッフもいます。
  • InsideTrack: 学生向けのコーチング・サービスを提供する会社。
  • Gap: ご存知、アパレルの大手企業。CSRに力を入れています。
  • Good Capital: Social enterpriseのポートフォリオをつくり投資商品として販売するなど、社会起業家の資本調達を助けるための業務を展開。
  • HIP Investor: 経済的利益と社会的貢献のダブル・ボトムラインを追求する企業へのコンサルティングを行っています。CEOのPaul Hermanさんは、私たちの「社会貢献価値」取引所プロジェクトのアドバイザーになってくれています。(彼の前歴がまた華やかで、McKinseyAshokaOmidyar Networkと渡り歩いてきています。)
  • Net Impact: 社会貢献に関心のあるMBA学生およびビジネス・リーダーの組織。米国を中心に世界に広がりつつあります。
  • Room to Read: 創業者ジョン・ウッドの著書『マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった』が最近日本でも出版され話題になったので、ご存知の方も多いと思います。
  • Salesforce.com Foundation: 社会貢献をするというのはそんなに難しいことじゃないんだと企業に呼びかけています。 「自社株式の1%を寄付できませんか?自社製品の1%を寄付できませんか?従業員の時間の1%をボランティア活動に充てることはできませんか?」
  • Social Venture Technology Group: 私たちの「社会貢献価値」取引所プロジェクトのアドバイザーで、Global Social Venture Competitionの創始者の一人でもあるSara Olsenさんにより2001年設立。社会的価値の測定に関するメソドロジーの開発やアドバイスを行っています。

サンフランシスコでのネットワーキング - その1


今月初め、社会貢献分野の組織・企業とのネットワーキングのため、ビジネス・スクールの仲間たちと一緒にサンフランシスコに行く機会がありました。 運悪く、数年に一度という規模の暴風雨がちょうどサンフランシスコを襲っており、びしょ濡れになりながら、この分野で様々な活躍をしている人たちに会ってきました。

まず初日に訪れたのは、3ヵ所。

1. WestEd

教育の分野で米国有数のNGO。中立的な立場から、教育制度に関するリサーチや、教育プログラム/カリキュラムの開発だけでなく、実際にその運営をするところまで手がけています。

マネージャーやディレクターの方とお会いして話を聞いた中で面白かったのは、この業界にはいってくる人は教育改革に情熱を燃やしている人が多く、新しいプログラムの開発には熱心だが、それを実際に普及させる段になると興味を失ってしまう場合が多いとのこと。なにげにエゴの強い人が多いソーシャルセクターでは、ままありがちな話ですね。

それにしても、日本ではこれだけ大規模のNGOというのはあまり見かけません。WestEdが埋めているニッチは、日本では独立行政法人だとか社団法人とかの、多くは天下り官僚の受け皿でしかない組織によって占められてしまっているのでしょう。

2. REDF 

ファンドの世界では知らない人はいないKohlberg Kravis Roberts & Co. (KKR)というプライベート・イクイティ・ファームの創始者の一人、George Robertsにより設立されたベンチャー・フィランソロピー・ファンド。

ベンチャー・フィランソロピーは、簡単に言うとベンチャー・キャピタルの手法をソーシャル・セクターに持ち込んだもので、日本での主だった例としては、今のところソーシャルベンチャー・パートナーズ東京くらいだと思います。結果(社会的価値の創出)にこだわり、従来の慈善財団のように社会的なプログラムにお金を出すだけでなく、組織基盤強化のための資金や経営アドバイスも提供するというモデルで、REDFはその中で最も成功している例の一つとして知られています。

サンフランシスコ・ベイエリアの雇用促進による貧困削減にフォーカスを絞り、対症療法的なプログラムでなく、問題の根本原因の解決に取り組むというアプローチを明確にしています。社会的インパクトの計測にも力を入れており、特にSocial Return on Investment (SROI)の開発で有名。

3. Clif Bar

アメリカではそれなりに有名なシリアル・バーの会社。CSRに力を入れているということで訪れたのですが、これがちょっとした衝撃でした。

正直に言って、私はいまだにCSRというものに少し胡散臭さというか中途半端なあやふやさを感じています。企業はあくまで利潤を最大化するための組織形態であって、ブレンデッド・バリューとかダブル・ボトムラインとか言ったところで、利潤以外の価値はあくまで二の次、またはリップサービスでしかないと思っていました。(別にだから悪いとかいうことではなく、それが企業の本来のあるべき形であるということです。)

しかしClif Barを知って、少し認識が改まりました。利潤を出す企業かどうかというのは、それほど意味のある分類ではないのかもしれない。大事なのは組織のDNAであり、文化であり、インセンティブ・システムだと。

なにしろ、社員の福利厚生から、商品の企画・開発、それにマーケティングや配送まで、徹底して社会的価値を追求しており、まさしく経済的価値と社会的・環境的価値の両立が組織のDNAに組み込まれているんです。

CSRというのは、corporate social responsibility(企業の社会的責任)ですから、社会的要請にresponseすることであり、つまり受動的なんですね。しかしGary Ericksonが設立したClif Barは、積極的に社会的価値を創出することが最初からミッションに織り込まれていますから、CSRを超えてまさしくsocial enterpriseです。

とは言っても、Clif Barがこれをできるのは、未上場の企業だからかもしれません。上場企業の場合はどうしたって株主利益の最大化が義務になりますから。

2008年1月12日土曜日

Exciting opportunity at a "client-centered microfinance" organization in Kenya

My friend who founded the One Acre Fund, one of the best examples I know of "client-centered microfinance" organizations in Kenya, is now looking for a partner to prepare the ground for taking the organization to the next level of innovation and growth. He says, "here in Kenya, the unrest is largely finished and things are back to normal." Hope everything will be under control soon .

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Company: One Acre Fund

Job Title: Director of Program Innovation

Description: The Director of Program Innovation is the first “major” full-time hire for the organization, and will be essentially a partner to the founder, in laying the organization's foundation. One Acre Fund's day-to-day operations are currently run by 30+ (growing quickly) local field staff; the Director conversely, will be responsible for new program innovation and for laying infrastructure for long-term growth.

The Director will:

  • Manage teams to execute 4-8 “consulting-style” program innovations at any given time – including new model configurations in new districts, and model improvements in existing districts
  • Manage both country-staff and American management-level interns in the execution of these innovations
  • Mentor, develop, and hire new local personnel to staff any innovations that are successful

Example innovations include:

  • Model innovations: experimenting with new field programs, starting up new mini-companies to support our operations, new performance management procedures, new crop trials, etc.
  • New districts launches, under new program configurations (including selecting and mentoring staff, planning out work, and overall execution responsibility)
  • New partner development: networking and developing critical relationships

The Director of Program Innovation will be the primary person responsible for evolving and making step-change improvements in the organization’s structure as we grow to scale. Although One Acre Fund is only 20 months old today, we are laying the foundation for One Acre Fund to be a major international NGO within ten years.

Qualifications: We are looking for somebody truly extraordinary to be the founder’s partner in launching this new venture. This is an extremely competitive posting for a business/ management-level position; please do NOT respond unless you fit these criteria:

  1. 3-10 years of post-undergraduate work experience in an elite management and generalist setting. Top-tier management consulting firm or successful entrepreneurial experience preferred. Experience should include: Project management responsibilities including overall execution responsibility, work plan and milestone ownership, and staff management; Managing junior staff in day-to-day activities; Developing junior staff through career reviews; Advanced analytical toolkit (e.g., using Excel to build an operational dashboard); “Get it done”/ implementation experience greatly preferred over research-style experience
  2. Top-performing undergraduate degree (include GPA and test scores on your resume)
  3. A good “start-up” personality that fits Africa well: Entrepreneurial, ambitious, independent; Structured thinker; Good communicator; Flexible; No ego or drama. A combination of strong leadership skills and humble approach to service - One Acre Fund only has kind, patient, and awesome people!
  4. Prior field experience in a developing country
  5. Must commit to living in rural Africa for two years in quite livable conditions
  6. Kiswahili a plus, Kinyrwandan or French a plus – none required
  7. Ability to cook/ laugh/ extraordinary patience – all desirable

Email cover letter and resume to paul.youn@oneacrefund.org (Subject line: “Director of Program Innovation Search – small circulation”)

2008年1月10日木曜日

SBI北尾吉孝社長

先月、『ロールモデル』 というエントリーで、「会社の枠組みを超えて、一人の人間として、ゲイツのようなビジョンと実行力、波及力を備えたロールモデルになりうる可能性を持つビジネスリーダーというと、日本では誰がいるのでしょうか?」と書いた後、孫正義氏や、渡邉美樹氏の名前を挙げましたが、最近気になっているのが、SBIの北尾吉孝社長。

日経ビズプラスに1月10日付けでインタビューが載っていて、その中に、

(49歳のときに悟った自らのミッションの一つとして、インターネット金融で得た)収益を社会に還元する仕組みを作って行こうと思いました。直接的な社会貢献とも呼べるもので、SBI子ども希望財団がすでにあります。また4月から後進の人物を作るためのSBI大学院大学も開校し、私自身も講義をしていきます。個人資産でも埼玉県に虐待やいじめなどで心や身体に傷を負った子どもたちのための施設を作りました。

という件りがあります。

他のインタビューでも、

(孫さんは、)「自分のところだけで」という発想が強い。僕は、世の中を良くするために生まれて来たなら、いいものはすべて解放すべきだと考えている。みんなに喜んでもらえればそれでいいんじゃないのという発想なんです。

と語っているなど、発言のはしばしに、孫さんや三木谷さんより、「社会全体を良くしてやろう」という姿勢と強い気概がにじみ出ている気がします。さらに、提唱するファイナンス2.0の概念といい、東京0区といい、新しいことを仕掛けてくれそうな構想力や躍動感も感じさせてくれます。個人的にその人柄を知っているわけではないので、単なるナイーブな期待なのかもしれませんが、もしかすると私が今取り組んでいる「社会貢献価値」市場の創設などとも、意外と近い方向性を持っていらっしゃるのかもしれません。

数年前、日経ビジネスの記事に関連していろいろと取り沙汰されたようですが、果たして今後どんな動きを見せてくれるのか。ちょっと気をつけてフォローすることにします。

2008年1月7日月曜日

Got the blues? - 恨(ハン)とブルース

昨年に続いて、今年もまたシカゴのブルース・ハウスBuddy Guy's Legendsに行ってきました。毎年1月にはバディー・ガイがシカゴに戻ってきてBuddy Guy's Legendsでライブ公演をします。ショーマンシップ旺盛な彼のライブは最高にクールで、シカゴ・ブルースの真骨頂を楽しめます。1月にシカゴにいらっしゃる機会があったら、絶対オススメです。

ところで思ったんですけど、文化的概念としての「ブルース」って多分韓国の「恨(ハン)」によく似ている気がします。人生の苦しみ、悲しみ、辛さ、妬み、怒り、嘆き。よく日本での「恨」の説明として、そうしたネガティブな感情にだけ言及するものが見受けられますが、これはちょっと単純化しすぎだと思うんです。例えるなら、日本の「侘び」という概念を「粗末さ」と説明してしまったり、「をかし」の意味は「面白い」だと言ってしまうくらいに。

イム・グォンテク監督の『風の丘を越えて-西便制』という映画に「恨をつむことが生きることで、生きることが恨をつむこと」という台詞が出てきます。「恨」は、人が生きる中で経験するやらしさ、きたならしさ、不条理から目を背けるのではなく、そうしたものに抱く様々なネガティブな感情とか鬱憤ややるせない気持ちを見つめ、わだかまり、泣き笑い、思い通りにならない現実をどうにかしたいともがき、叫び、惑い、さらにはそうした希望と絶望とがないまぜになった人生の深い襞や綾をある意味愛しんでしまうという心情であり、精神文化です。

そういう意味で、日本の「業」や「憂き世」の概念にも一脈通じるところがあるかもしれませんが、「恨」は日本のものより、何というかもっと粘度が高くて動的なイメージで、やはり「ブルース」にとてもよく似ていると思います。

2008年1月4日金曜日

政治家が尊敬されない日本

"米「尊敬する人物」調査、女性はヒラリー氏が6年連続首位"という日経の記事に目が留まりました。下記が、米紙USAトゥデーとギャラップ社が最近発表した米国民の尊敬する人物に関する世論調査の結果。

女性
1位 ヒラリー・クリントン上院議員 (18%)
2位 オプラ・ウィンフリー (16%)
3位 コンドリーザ・ライス国務長官 (5%)

男性 
1位 ジョージ・ブッシュ大統領 (10%)
2位 ビル・クリントン前大統領 (8%)
3位 アル・ゴア前副大統領 (6%)

これは、"What woman/man that you have heard or read about, living today in any part of the world do you admire most?"というオープン・クエスチョンに対する回答を集計したものです。わざわざ"in any part of the world"と、世界中の人物を対象とする質問をしているのに、それでも国外の人物が上位に全く入らないのは、アメリカ人の内向きというか自国中心的な世界観がここにもあらわれていると言って良いのではないでしょうか。

それより私が感心したのは、女性の2位の人気トークショーの司会であるオプラ以外は、上位が見事に政治家で占められていること。これは、日本ではまずありえないんじゃないでしょうか。多分、アスリートや芸能人、文化人で占められ、政治家はほとんど名前が挙がらなそうな気がします。

この違いは果たしてどこから来るのでしょうか?単純に考えると、三つの可能性がありそうです。

A. 日本の政界には国民から尊敬されるような優れた人材が集まらない
B. 優れた人材が入ってきても、日本の政界では国民から尊敬されるに値するような活躍ができない
C. そもそも、政治家を尊敬するという文化・精神風土が日本にはない

「政治家の質は、国民の質である」とはよくいわれることです。それはその通りなのでしょうが、ただ日本の政治家とアメリカを含む諸外国の政治家を見ていると、「国民の質」だけでは説明できないほど大きな差がある気がします。例えば、今回の米大統領選に名乗りをあげている、民主党のクリントン、オバマ、エドワーズ、共和党のマケイン、ジュリアーニ、ハッカビー、ロムニーといった面々を見ていると、それぞれ考え方やスタイルは異なれど、優れた見識と魅力を持った人たちばかりだと思います。こう言っては何ですが、日本の政治家とは雲泥の差。この中から自分たちの国をリードする大統領を選べるアメリカ人が羨ましくなるほどです。

「国民の質」の議論から一歩踏み出して、状況を改善できる現実的な方策を取ろうとすると、上記の三つの問題の可能性についてそれぞれ考察してみることが有用だと思います。Aが根本原因となっているのであれば、問題は最も深刻で、リーダーシップ教育や、社会の人材配分とインセンティブ構造を見直さなければなりません。一方、Bの場合は、現在の政治システムや政策決定メカニズムの有効性を再検証しなくてはなりませんし、メディアの扱いについても考えなおしてみる必要があるのではないでしょうか。Cの問題は、(日本の政治家には少々気の毒ですけど)それほど心配することはないと思いますが、Aの問題を助長しますので、まず国民が政治家という職業にもっと敬意を払うことから始めるというのも一つの手かもしれません。

2008年1月2日水曜日

ドミニカ共和国&ハイチ旅行 - その7

12月28日 (金) 【ドミニカ共和国】

昨日と同じ朝7時のCaribe Toursのバスに乗り、昼過ぎにサント・ドミンゴに到着。初日と同じPlaza Toledoのゲストハウスに宿をとり、午後はゆっくりZona Colonialを散策する。

Plaza de la Hispanidad

Zona Colonialの街並み


12月29日 (土) 【ドミニカ共和国→アメリカ】

サント・ドミンゴから朝8時過ぎの飛行機で、10時前にはマイアミに到着。午後9時の飛行機でシカゴに戻ることにし、それまでマイアミ市内をぶらぶらする。

ストーン・クラブとシーフード・プラッター(オイスター、ロブスター、シュリンプ)

旬のフロリダ名物ストーン・クラブを食べてみようということになり、ベイサイドのレストランでちょっと奮発。「ストーン・クラブの漁は10月中旬から5月中旬までのみ解禁になり、爪だけを食用に取って、本体は海に戻してやると、また爪が生えてくるんだって」と、聞きかじったウンチクを妻に披露したところ、「爪をとられたカニはどうやって餌を捕って食べるの?」と聞かれ、答えに詰まる。帰宅してからネットでちょっと調べてみたところ、両手を取られてもどうにか食べていけないことはないらしいが、外敵からの攻撃に無防備になってしまうので、基本的には大きい方の爪だけを取るのが慣行になっているらしい。もともとトカゲの尻尾のように、敵に襲われると自分の意思で爪や足を切り離して逃げることができるのだそうだ。

ドミニカ共和国&ハイチ旅行 - その6

12月26日 (水) 【ドミニカ共和国】

Cabareteを離れ、Samanaへ。朝7時30分にホテルの前でマイクロバスが止まってくれたが、すでに超満員。妻は運転手さんの横の座席にどうにか隙間を確保できたが、私は開いたドアにしがみつくようにして走行。途中で人が少しずつ降りて、2時間くらい経ったころにはどうにかドアを閉められるようになった。

Samanaには午前11時過ぎ到着。とにかく暑い。Haitises国立公園のツアーがこの町から出るというLonely Planetの情報をたよりにやって来たが、結局色々聞きまわったところ、明日ツアーに行こうとすると、隣町のSanchezにあるAmilka Toursという業者しかないらしい。

Samanaの湾岸にて自転車でウイリー走行する少年


12月27日 (木) 【ドミニカ共和国】

朝7時のCaribe Toursのバスに乗り、Sanchezまで戻る。8時前にはAmilka Toursに到着するが、他の客が集まるまで、3時間近く待つ羽目になる。

その間に近所のお兄ちゃんが話しかけてくる。「お前Chino(スペイン語で中国人)か?」

今回の旅行中に何度もいきなりぶつけられたこの同じ質問にそろそろうんざりしていた私は、少々ぶっきらぼうに「No」とだけ答える。すると、「じゃー、Naranja(スペイン語でオレンジ)か?」

「??」 私が、何のことだか理解できないでいると、そのお兄ちゃんが、笑いながらジョークの意味を説明してくれた。ドミニカ共和国にはChinaという名前を持つオレンジに似た柑橘類のフルーツがあるのだそうだ。これからは街角で「Chino!」と言って来たら、「No soy chino! Soy naranja!」と答えることにしよう。
Sanchezの街角の風景

Haitises国立公園の名前の由来は、先住民族Tainoの言葉で「山の多い土地」のこと。洞窟やマングローブの林などの自然美と、軍艦鳥やペリカンといった鳥たちに加えて、何といってもこの国立公園の目玉はTaino族の洞窟壁画。中には1000年以上の古いものもある。コロンブスの上陸時に40万人程いたTaino族は、ヨーロッパからもたらされた新しい伝染病と過酷な奴隷労役により、それから30年後には1000人まで人口が激減し、ついには絶滅してしまった。

巨大な根っこが洞窟の中まで下りてきている

水面に映るマングローブ林

落書きみたいに見えるけど、れっきとした貴重な文化遺産

ペリカン~スペイン語ではアルカトラズ

赤い喉袋をふくらませて飛ぶ軍艦鳥

ドミニカ共和国&ハイチ旅行 - その5

12月23日 (日) 【ドミニカ共和国】

Cabareteは、カイト・ボーディングやウインド・サーフィン、それにサーフィンで有名なリゾート地。ここにあと3泊4日滞在する予定なので、それぞれ1日ずつ体験してみようかと考えた。サーフィンショップに問い合わせるが、カイト・ボーディングは実際に海に出るまで少なくとも3日はかかるし、今日はサーフィンができるほど波もないとのことだったので、ウインド・サーフィンを試すことにする。


思ったよりも難しい。。。

12月24日 (月) 【ドミニカ共和国】

今日の海はサーフィンにもウインド・サーフィンにも向かないので、のんびりビーチで読書。

妻が髪を三つ編みにしてもらった~パイナップルみたい

クリスマス・イブのディナーは、ビーチサイドのレストランで。とても良い雰囲気。

12月25日 (火) 【ドミニカ共和国】

午後は風も波も出てきたが、めんどーくさくなってしまい、今日もビーチでのんびり。

おびただしい数のカイトが空を舞う

ドミニカ共和国の音楽といえばメレンゲが有名だが、もう一つBachataというものもあるらしい。両方のジャンルの曲が入った、今ヒット中というAntony SantosのCDを購入。

2008年1月1日火曜日

ドミニカ共和国&ハイチ旅行 - その4

12月21日 (金) 【ハイチ】

朝から航空会社に電話して、昨日の荷物について問い合わせる。幸い朝9時半の飛行機でCap-Haitienに到着し、ホテルに配送するよう手配したらしいが、空港からホテルまで車で10分程度の距離なのになかなか届かない。その間にユネスコ世界遺産のCitadelleへ行く方法について情報収集。妻がホテル内で知り合った現地在住らしい老婦人から、知り合いを紹介してもらうことができ、ツアーに参加するより安く行けることになった。

写真家で慈善事業家のAlecia Settleさんも同じホテルで滞在中で、彼女の作品の"Visualize Haiti"を見せてもらった。彼女の養女がハイチ出身で、この写真集の収益はすべてハイチの支援プログラムに使われるとのこと。今回もCrocs社から寄付されたサンダルを届けるためにハイチを訪れているのだそうだ。

正午過ぎに老婦人に紹介してもらったArryさんと一緒に、Citadelleに向かう。彼のオートバイに三人乗りで、舗装されていない道をぶっとばす。途中で国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH) の装甲車とすれ違う。ここも思ったよりも物騒なようだ。

Citadelleのある山の麓でガイドを雇って、馬に乗り換えSans Souci宮殿を通り過ぎ、約1時間半でCiadelleにたどり着く。 1804年にハイチがフランスから独立し世界初の黒人共和国となった後、独立戦争の功労者だったJean-Jacques Dessalinesはナポレオンをまねて帝位に就いたが、その専制的な支配は反感を買い、1806年には暗殺されてしまう。その後1820年まで続いた内戦で、南部でmulatto勢力を率いたAlexandre Petionに対し、北部で黒人勢力を率いたHenri Christopheによって造られた宮殿がSans Souciで、Citadelleはフランスの再侵攻に備えて築かれた山城。

Sans Souci宮殿

馬で山頂を目指す

Citadelleが見えてきた

Citadelleの中庭

CitadelleとSans Souci宮殿の見学を終え、麓に下りて来るともう午後5時近くになっていた。待機していてくれたArryさんのオートバイに乗り、暗くなりかけた中を相当ヒヤヒヤしながらCap-Haitienに戻って来る。日本で吸う砂埃と排気ガスの5年分を一日で吸いこんだ気がする。

ホテルに戻る前に、Arryさんに頼んでCD屋に寄ってもらう。ハイチでは、ブードゥーは音楽のジャンルとしても確立しており、またブードゥー音楽がアメリカのジャズの影響を受けて生まれたRacinesというジャンルもある。CD屋の主人オススメのブードゥー音楽とRacinesのCDを一枚ずつ購入する。

ホテルに戻ると、部屋にスーツケースが届いていて一安心。

12月22日 (土) 【ハイチ→ドミニカ共和国】

朝6時半過ぎにマイクロバスに乗ってCap-Haitienを出発し、二時間ほどで国境の町Ouanamintheに到着。オートバイで国境まで行き、出国手続きの後徒歩で国境を越えると、そこはドミニカ共和国側の町、Dajabon。混沌としたハイチを出て、正直ほっとする。

ハイチとドミニカ共和国の国境(Ouanaminthe側)

Dajabonからは、Santiago経由でCabareteまで、サント・ドミンゴ-ポルトプランス間でも使ったCaribe Toursのバスを利用。至極快適。

それにしても、今回の旅行では妻の語学力に依存しっぱなしだ。フランス語もスペイン語も少しかじったことはあるので、カタコトで意思疎通くらいできなくはないが、パリやペルーで仕事をしたことがある妻の方が実力ははるかに上。ハイチではクレオール語だけを話す人も多かったが、それでも英語よりはフランス語を解する人の方がずっと多いので、一人旅だったら相当苦労しただろう。

ドミニカ共和国&ハイチ旅行 - その3

12月19日 (水) 【ハイチ】

Jacmelに来た最大の目的であるBassins Bleuに行く方法を探して、ホステルや街中で聞いてまわるが、法外な料金をふっかけてくるばかりで埒があかないので、観光案内所に行く。DirectorのYanick Martinさんのおかげで、どうにか$50で往復の車が手配できた。ライトブラウンの肌をもつ彼女は、mulattoと呼ばれる白人との混血で、アフリカ系が人口の95%を占めるハイチでは少数派。幼少時にアメリカに移民したが、ハイチという国の魅力や人々の創造性の豊かさを国外に知らせたいと考えて、ハイチに戻って来てこの仕事をしているのだそうだ。

水陸両用車さながらに、車で川を渡り、すさまじい悪路を越え、1時間弱でBassins Bleuに到着。話に聞いて想像していたような真っ青な滝つぼとは異なり、青みがかかった緑色で少しがっかり。でもまぁそれなりに冒険気分を味わえたので満足。

川では人々が沐浴や洗濯だけでなく洗車までしている

Bassins Bleuに飛び込み!

Jacmelに戻り、町中をしばし散策した後、ホステルで一休み。ホステルで知り合ったLisienさんという自称ガイドから、3ヶ月に一度とり行われるブードゥー教のセレモニーが今夜あると聞き、午後8時から一緒に出かける。観光客などいない完全に地元の人たちの集会。ブードゥー教というとのろいやまじないなどの迷信のかたまりのようなイメージが流布しているが、この国の精神文化の根幹ともいえる大事な民間信仰。西アフリカから奴隷として連れて来られた彼らの祖先が伝えたアニミズムが、この地の先住民族であるタイノの人々の儀式や後にはカトリックの影響と混淆して今に至るもので、基本的にハイチ人の80%を占めるカトリックはみなブードゥーの信者とのこと(残りの20%はプロテスタント)。

ブードゥーの祭壇

会場についてから約2時間待つ間に、取っ組み合いの喧嘩が起きるなど不穏な雰囲気が漂うが、午後10時頃にどうやら無事にセレモニーが始まる。ドラムに合わせて祭司が歌う中で、赤や緑の衣をまとった信者たちが踊るというもので、朝まで続くのだそうだ。

踊っている人たちの中心で灯火とマイクを持っているのが祭司

12月20日 (木) 【ハイチ】

マイクロバスにすし詰めになって3時間でポルトプランスに戻ってくる。ポルトプランスの街中を走っていると目に付くのが、宝くじの販売所と携帯電話のカード販売の看板の多さ。この国のentrepreneurにとって、この二つが今ホットなbusiness opportunitiesになっているのだろうか。

宝くじは、一攫千金を夢見る庶民の娯楽なのだろうが、胴元である政府にとっては手軽な財源になる。一般に宝くじの購買額は所得・教育水準が低いほど多いと言われているから、正味にすると富の再分配には逆効果になるだろう。

ポルトプランスの中心部にある店の20軒に1軒は宝くじの販売所?

一方、携帯電話の普及は雇用促進や所得増加に貢献する社会的・経済的波及効果が大きいと言われているが、この国ではその効果は現れてきているのだろうか。因みに、ハイチの携帯電話市場はシェア一位がDigicel、二位がVoilaで、どちらもプリペイドカード方式。大体100 gourdes(約3米ドル)で40-50分くらい通話できるとのことだから、年間平均所得が400米ドル程度のハイチの人々にとっては決して安いサービスではないはずだが、相当普及しているように見受けられた。

DigicelとVoilaのプリペイドカード販売店の看板

携帯電話を持たない人たちのために、街頭で普通の電話機を改造して公衆携帯電話サービスを提供している業者がたくさんいる

一昨日にLe Plaza Hotelで知り合ったハイチ障害者協会の代表のLouis E. Metayerさんと昼食時間に会い、彼らの活動内容について話を聞かせてもらった。PC教育による収入創出活動や、micro-insurance事業などの活動を展開しており、海外での支援者開拓に是非協力して欲しいとのこと。micro-insuranceは私も興味のある分野であり、今後の協力の可能性について連絡を取りあうことを約束して分かれる。

空港に行き、午後4時にCap-Haitien行きの飛行機に乗る。30分で無事到着するが、荷物が出てこない。多分明日到着するだろうとのこと。